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    シエリィ

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    シエリィ

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    ゆり オリジナル

    #百合
    Lesbian

    欠片 その白く透き通った首筋に指を這わせると、〈私〉は少し熱を帯びた声で囁く。
    「誘ってるの?」
     そんな訳ないでしょ、仮にも自分の身体なんだから。
     ため息を漏らすと、〈私〉が咲(わら)う。
     鈴を転がしたような声だ。生憎、わたしではそんな真似などできない。

    「あなたがこの身体の主だったら、きっとわたしに見向きもしなかったでしょうね。」
     無意識に棘のある言葉を紡いでしまう。
     〈私〉に伝えたいのは、こんな言葉じゃない。
     もっと濃厚で、だけど純粋な言葉。想いを伝えるにはありきたりかもしれないけれど、わたしにとってはどこまでも特別な言葉。
     たったひとことが、ずっと言えずにいる。
     いつも一緒にいるのに、伝える機会はいくらでもあるのに。

     いつものように鏡の前に立ち、首筋に指を這わせる。
     この行為はある種の儀式となって、わたしの身体に馴染んでしまった。
     鏡に映る〈私〉の顔(かんばせ)が薔薇色に染まると、わたしの心は罪悪感に苛まれる。
     その苦しみの中に、ほんの少しの嗜虐心が合わさり、溶け合って、甘美で崇高な儀式が完成するのだ。
     わたしと〈私〉が繋がれる、大切な儀式。
     〈私〉がどう思っているかはわからないけれど、少なくとも、わたしにとっては幸せな時間。
     こんなものに依存してはならないとわかっている。
     わかっていても、〈私〉が咲うから。
     わたしは〈私〉に、騙されている。
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