沈黙沈黙
ふたりよがりで、支離滅裂なこの感情を、ひとは愛と呼ぶのだろう。
とうに歪んだこの世界、わたしの見た幻影。
だからわたしは、何度でも伝える。
――愛している、と。
それは、ある日突然この世界に降りてきた。歪に塗れた廃墟に、たったひとりで。彼女は虚構と深淵を司り、種々の世界を渡り歩いた。彼女はこの世界で、律と名乗った。
腐敗した世界。確かにこの世界はとうに腐り果てていた。嘗ての故郷を滅ぼした神への復讐を誓う最高司祭は、生涯を捧げ歪を創り出した。歪は現人神として祀り上げられ、鎖に繋がれながらも主の望みに応え続けた。歪でできた少女の心は終ぞ満たされることなく、救いを求め伸ばした手は尽く振り払われた。少女はいつしか虚ろに堕ち、ただ享楽のためだけに生きた。
2209