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    straight1011

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    straight1011

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    霊感主の没をあげておきます。

    霊感主連載⑩くらいの没 三井には悩み事があった。
     体育館襲撃事件を経て三井寿はバスケ部へ復帰した。しでかしたことは謝罪で許されるものではないが、それでも自分のバスケをしたいという思いを胸に、覚悟して復帰した。色々言われることも、練習にまともに混ぜてもらえないことも、パスが回ってこないような状況だって予想していた。だが実際はあっさりしていて、一番三井に思うところがあるであろう宮城すら、特に嫌悪するような態度は見せない。

     1年素人の桜木にはミッチーとナメたようなあだ名で呼ばれ、流川は見定めるような目で見てくる。赤木や木暮は練習内容を三井に説明し、当然のように練習をさせる。正直、安心した。彼らの態度に釣られるように他の後輩も三井を受け入れている。多少ぎこちなさは感じるが、それは学年の壁ゆえのものが大きいようだった。

     だがたった一人、未だに話をしていない部員がいる。それは三嶋一という女子だ。彼女との関わりはバスケ部襲撃事件以前からあるのだが、どれもろくなものでない。去年同じように宮城を襲撃しようとして彼女に返り討ちにあい、喧嘩で絡まれているところを助けてもらい・・・この間の襲撃でも、彼女は颯爽と現れて鉄男を倒した。

     あの喧嘩はすごかった。体格差をものともせず向かっていく辺りは無謀だと思ったが、その後の頭突きで鉄男をひるませ、持ち上げてぶん投げたときは正直やべえと思った。あれはゴリラだ、赤木と同レベルの。次俺があれとやんの・・・? ぜってえ勝てねえだろ・・・と堀田辺りを盾にする策を考えていた。実際は水戸に殴られたが。

     で、そのミシマと三井は復帰後一度も会話をしていない。会話どころか目も合わない。だから正直どう思っているのか気になっているところがあった。宮城と付き合っているのか何なのかは知らないが、宮城の態度を見るに奴は彩子を好いている。なら片思いか? その相手を傷つけた俺をあいつはまだ許していないのでは・・・? 
     あと、煽り文句に膝のことを言ってきたのも気になる。木暮も赤木も話してないというし、1個下で女子のあいつが何故知っていたのか、気になっているが聞けていない。

     そもそも彼女も三井と同じく最近マネージャーに復活したばかり。1年生との交流も少ない。というか、三井以上に恐れられている。桜木は気にしていないが、石井桑田佐々岡は明らかにビビっている態度だ。距離感が違う。ミシマと必ず2mくらいの距離をあけて話しかけているし。流川はわからない。


    「こ、怖いっていうか・・・近寄りがたいっていうか」

     ある日の部活終わり、部室から桑田の声が聞こえてきた。三井が部室に入ると、桜木流川以外の1,2年が揃って着替えていた。三井にはお疲れ様ですと挨拶があっただけで、特に気にしている様子はない。
     三井は何ともないふりをして自分のロッカーを開けながら聞き耳を立てる。次に口を開いたのは安田だった。

    「えー、ミシマは優しい子だよ。ねえ?」

     どうやら話題はミシマのことらしい。安田は2年連中に共感を求め、潮崎と角田は頷く。その表情に言わされたような感じはない。宮城は何も言わずに淡々とシャツを脱いでいた。

    「お、怒ったりしないですか」
    「ミシマがすごい怒ってるところは見たことないなあ。1年のとき、ちょっと嫌な先輩に色々言われてたけど、涼しい顔で流してた」

     あー、あったなそんなこと、と角田と潮崎が懐かしがった。宮城は無言。そんな感じなので1年はそうか、大丈夫かとほっとした顔をする。安田は何も言わない宮城を見て、ねえと話を振った。

    「リョータもそう思うよね?」
    「何が」
    「ミシマは怖くないって話」
    「あー、そうだな」

     興味ない、といった態度に1年はそわそわと顔を見合わせた。それから、石井が意を決したように安田に話しかける。

    「ミシマ先輩って・・・宮城さんと付き合ってたんですか」

     それはしっかり宮城にも聞こえたらしく、シャツを畳む手を止めて、それから面倒そうな顔をする。そんな宮城を見て安田は苦笑し、首を横に振った。

    「いや、違うよ」
    「あ、そうなんですか・・・」
    「・・・あれ、違うよね、リョータ」

     急に自信を無くした安田がそう尋ねると、宮城は合ってるよと答える。それからロッカーの中から鞄を取り出すと、バタンと閉めた。少し力が入っていたのか、大きな音が立つ。びくっと1年の肩が揺れた。

    「おめーらハジメにビビってるけどさ」
    「えっ、いや・・・」
    「やめてやれよ。あいつはいつも喧嘩する訳じゃねーし」

     もっと普通に接してやれ、そう言い残して宮城は部室を出ていった。
     シン、と静まり返った空気は気まずいもので。先生に注意されたような後の空気に、聞いていた三井まで身体が強張った。
     2、3年はミシマと交流があったからいいが、三井を含めたそれ以外は彼女をよく知らない。いきなり不良たちをなぎ倒して、一番強そうなやつをぶん投げるような女子と普通に接しろとは、中々難しいんじゃないかと三井は思った。実際自分もちょっと怖いと思っているし。
     だがしかし、彼らの話ではミシマは優しい人間だという。だったらそれを信じて、三井も話しかけてみるかと決意して、鞄のチャックを閉めたのだった。


     決意するのはいいものの、その機会は中々訪れなかった。バスケに直接関連する雑用(桜木の基礎とか練習内容の記載)は彩子がやり、間接的なもの(モップ掛けやアップのときの合図)をミシマがやっているようだった。そのため何か用があるときは基本みんなが彩子に最初に話しかける。ミシマは基本動き回っていて定位置にいないからだ。

     それにミシマを掴まえるほどの体力が三井には残っていなかった。久しぶりの練習はハードで、休憩中は呆然としているし、部活後は頭が回っていない。帰って寝ることだけを考える。もっと慣れたら残って自主練をしたいのだが、今そうするとオーバーワークだろう。

     三井が戻ってきて1週間ほど経った。その日の練習中、三井は微妙な身体の違和感を覚えていた。気だるさというか、頭が熱に浮かされたような、胃から何かがせり上がりそうで、とどまっているような、そんな不調。かといって休むほどでもないと思い、三井はそのまま練習していた。

     時間が経つにつれ、身体の感覚が鈍くなっていく。気を抜くとぐらっと身体が傾くような気がした。しかし体力が切れて死にそうな顔をしているのはいつものことなので、周囲も気にした様子はない。だが三井は何となく、いつもの疲労とは違うと感じていた。

     ボールを持って、ドリブルして、パスをする。多くの雑音の中で、ひときわ大きい赤木の声がしっかり聞こえる。バスケのもう意識せずともできるくらい身についた動きが鈍くなって、どうにも身体が言うことをきかない。鉛でもくっついているみたいに重く、視界は水中のように歪む。あれ、今、俺は何をしてるんだっけ・・・? ああ、宮城からパス・・・あれ、流川にパスして・・・ん・・・?

    「三井サン!!」

     気が付けばボールがこちらに迫ってきていて、しかし三井は反応が遅れた。宮城の声が聞こえたときにはもう眼前にあって、これぶつかるなと思ったが、咄嗟に手が出ない。
     ぎゅっと目を瞑ると同時に足がふらついて、身体の重心が後ろに傾く。倒れるなと、ぼんやり思っていたが、その時誰かが三井の腰を支えた。

     三井は倒れずに済み、またバスケットボールが三井の足元でダムダム・・・と落ちる音もした。誰かが当たらないように弾いてくれたのだろう。

    「大丈夫ですか」

     その声は女子の声だった。だが彩子のとは違う。つまり、彩子じゃない、体育館にいる女子の声。
     三井はえっ、と思い目を開ける。すると、三井を支えるように立っているミシマがいた。ばっちり、目が合う。復帰してから初めてのことだった。
     宮城や流川の動きは完全に止まっていて、体育館中の視線が三井に集まっていた。木暮が大丈夫かと声を出しているのが遠くから聞こえた。

    「貧血か熱中症ですかね」

     冷静なミシマの声がした。三井の汗がポタ、とミシマの腕に落ちた。それをぼんやり見るしか出来ないくらい、三井は身体を動かすのがだるかった。

    「休みましょうか」

     そう言って、ミシマは三井を支えながら体育館の入り口、風の当たる位置に移動させた。背中に部員の視線を感じるが、何か言う余裕など三井にはなく、そのままミシマに座らされた。
     ひんやりとした風が三井の頬を掠める。沸騰していたような思考が冷めていき、徐々に体の重りが取れていくような感覚がした。そう思っていると、ミシマは三井のドリンクを持ってきて手渡し、タオルも傍に置かれた。

     パタパタと、ミシマがクリアファイルで三井を扇ぐ。風が心地よく、三井はドリンクを飲みながら目を細めた。

    「今日はずっと具合が悪そうでしたね」

     少し落ち着いてきた頃、ミシマがそう言った。三井はおー・・・と適当に返事をしてから、ん? と首を傾げる。ずっと具合が悪そう、とは言うが最初は普段とそう変わらなかった。確かに少しいつもと違うとは感じていたが、木暮達ならともかく、関わりが最も薄いであろうミシマがそれに気が付くのは変な気がした。

     ミシマを見ると、彼女は三井を扇ぎながらも視線は体育館の外に向けられていた。別段そこには何もなく、誰もいない。何を見ているのか全く見当はつかないが、ミシマの視線は確実に何かを追いかけていた。

    「なんかいんのか・・・?」

     声を出すのはだるかったが、気になってそう聞いてみるとミシマはハッとしたように三井を見た。その顔には焦りが滲んでいて、鬼気迫るものがあった。

    「・・・」
    「・・・うぷっ、吐く」

     無言で見つめ合っていたが、急にこみ上げる吐き気に口元を押さえると、ミシマはすぐさまビニール袋を取り出した。多分吐く用のものではないので、半透明の中身が見えるタイプの袋だった。この後何かに使う予定だったのかもしれない。

     一応袋口に口を持って行った三井だったが、吐き気ばかりがせり上がって、肝心の中身は出てこない。いや後輩の・・・しかも女子マネージャーの前で吐きたくないという、三井の意地がそうさせたのかもしれない。
     数分そうしていると、背後から彩子の声がした。大丈夫? 保健室行く? そう聞いてきたが、ミシマは三井の返事を待たずに、動けないと思う、と返した。実際、三井は立ち上がることは出来ても歩けばふらふらするだろうし、わざわざ保健室に行くよりここで休んだ方が回復しそうだった。

     だんだんと思考できるくらいの体力は取り戻してきて、今の状況を認識できるようになり、急に情けなくなった。何やってんだろ、俺。練習で具合悪くなるなんて中学の頃はなかったのになと、顔をしかめる。

    「三井先輩」
    「・・・」

     名前を呼ばれ、三井はミシマに視線を向ける。ミシマは大変悩ましいという風に眉間に皺をよせていたが、三井としっかり目が合うと、意を決したように唾を飲み込んだ。

    「・・・失礼」
    「あ?」
     
     ぬっとミシマの手が三井の眼前に伸びてきた。そしてそのまま、丁度三井の眉間がミシマの指先で叩かれる。がっと、痛みはないが衝撃が走った。
     びっくりして、三井はそのまま後ろにひっくり返る。どん、と背中が床にぶつかる音がした。

    「何すんだよ!」

     びっくりしたまま身体を勢いよく起こし、そう大声を出す。ミシマは誤魔化すような笑いを浮かべていた。
     クソ、何なんだこいつ病人に対して、そう怒りそうになってふと気が付く。あれ、体調戻ってるな、と。先ほどまでの身体の怠さ、吐き気はすべて消え去っていて、万全の状態だった。
     意味が分からなくて、とりあえず三井は立ち上がった。やはりどこにも不調はない。それどころかよく眠った朝のように清々しい気分である。

    「あれ・・・なんか治ったわ」
    「良かったですね」

     ミシマは引きつった笑いを浮かべていた。どうしてそんな顔をしているのかはわからないが、とりあえず治ったら練習をしなければ。予選まであと少し、こんなところでもたもたしている暇はない。
     三井はよし、と呟いて練習へ戻っていく。もういいのかと聞いてくる木暮に、なんか知らんけど元気になったぜと笑顔を見せた。

     あ、しまった、ミシマにお礼言うの忘れた。いや、帰りに言えばいいか、そう思いなおし三井は練習に集中した。少し疲れた顔をして三井を見ているミシマには気が付かなかった。


     マネージャーに戻ってからというもの、ミシマの日々は疲れることばかりだった。その原因のひとつはまず、流川とかいう霊ホイホイ男。毎日やばいのを引っ付けている。ミシマはいつもさりげなくを装って背後に回り込みそれを祓っているのだが、正直怠い。

     今まであれで生活できていたなら放っておいてもいいとすら思う。もちろん憑かれると体には影響が出て、それを彼は睡眠で上手く消化しているようだ。でも影響なんてそれだけ。ミシマが祓ったところで、流川のその日1日の眠気が消えるくらい。だがそうだとしても放っておけないのがミシマだった。

     そして今日は三井が子どもの悪霊を引っ付けて部活にやって来た。具合が悪いのはすぐにわかった。多分流川よりも優先して対処しなければならない案件だったが、中々近づけない。
     様子を窺っていると、案の定三井に限界が来た。倒れそうになった三井を支え、ぶつかりそうになったボールをはじく。素早く対処できたのはずっと三井のことを見ていたからだ。

     困ったことにその子どもの霊は三井の顔を抱きしめている。よっぽど近づかなければ祓うのは難しい。さてどうしようかと三井を扇ぎながら体育館の外を眺めていると、また別の霊がうろうろと歩いているのを見つけた。
     そうして視線を動かしているのを三井に見つかり、ミシマは焦った。そう、彼は意外と人を見ているタイプで、変だと思ったらあやふやにせず聞いてくる。きっとバスケにおいては重要なのだろう、人の動きを見ておくことが。だがそういうタイプには気を遣わなければ、ミシマの可笑しな行動を見つけられてしまう。

     辛そうな様子の三井にいい加減可哀想だと感じ、少々強引に悪霊を祓う。流石に三井は怒っていたが、治ったとわかるとあっさり練習に戻っていった。単純な奴である。多分深く物事を考えるのが苦手なタイプだ。

     これで大丈夫だ。一件落着。今日は疲れたからあの外をうろついている奴は後回しだと、ミシマは仕事に戻っていった。

     その日の帰りのことだった。ボールを片付けていたミシマの元に三井がやって来た。近づいてくる気配には気づいていたが、面倒そうな予感がして逃げるように歩く。だが、おいミシマ、と名前を呼ばれてしまえば無視するわけにもいかない。

     振り返ると緊張した面持ちで三井が立っている。気まずそうなオーラが漂っている。三井と1年生の一部に
    距離を置かれているのはミシマも気づいているが、特にどうこうするつもりはなかった。こういうのは時間と共に受け入れられていくものだから。駄目だったら諦めるしかない。

    「さっきはありがとな」
    「ああ・・・大丈夫でしたか」

     思いきり額を叩いてしまったのだが。いやそんな強くは叩いていない。デコピンより優しいくらいの衝撃だったはずだ。

    「おう、もう平気だ」
    「良かったです」
    「でも何で叩いたんだ?」

     聞いてくるのかそれ。ミシマは面倒な人だと思いながら、視線を斜め下に逸らす。
     三井の純粋に気になるといった目がミシマに刺さっている。叩きたかったから、なんて下手なごまかしは今後の2人の関係に響くかもしれない。虫でもいたことにするか。
     そう考えて黙り込んでいると、三井はおい? と身をかがめてこちらの顔を覗き込んでくる。困った、何か答えなければと口を開こうとしたとき、ミシマと三井の間に誰かが立った。

    「何話してんすか」

     宮城は三井の方を見て、雑談に混じるくらいの軽い調子でそう言った。三井はいやさっきこいつに叩かれてよ、なんて誤解の生まれそうな言い方で説明する。

    「三井サン嫌われてんじゃないんすか」
    「はあ? んなこと・・・ねえよな」

     ミシマは三井の目を見て、嫌ってないですよと答えた。というか気にもしていない無関心に近いのだが。それよりも・・・宮城の雰囲気がいつもと違ったことの方にミシマは気をとられた。
     宮城は三井をからかうように笑って、部室へ行く。三井もその後を追いかけていった。その様子を眺めて、ミシマは眉をしかめる。

     嫉妬、とは違うような。既視感がどこかである感情を抱えていた。ソータがいなくなってからというもの、ミシマは特に宮城に注目することはなくなった。時々ソータの面影を思い出しては胸が痛くなるし、宮城に何かあった時は率先して手を貸すように癖がついてしまっているが。
     宮城は宮城で、ミシマに積極的に構ってきたり・・・ということがあるわけでもない。ただの部活仲間の雰囲気。しかし、例えばミシマが流川の背中を叩いたり(除霊)、桜木に話しかけたり、今みたいに三井と話していると、少しだけ・・・そう、寂しそうな感情を滲ませている。

     どこかで、見たことあるような・・・あ、あれか・・・小学校のときの。
     ミシマが一年生のときだ。隣の席の子が、3つ上の姉と一緒に帰る約束をしていたが、置いていかれたということがあった。その時職員室まで届くくらいに大泣きした子にミシマはドン引きして、担任に任せて
    自分はさっさと下校したという思い出がある。
     あんな感じだ。置いていかれたと理解した瞬間、えっと驚きが先に来て、次にどうしてと怒りが来て、だんだん悲しくなっていく気分の変化。それに近いような気がする。

    「ハジメ、帰るわよ」
    「あ、うん」

     まあ、今まで馬鹿みたいに構ってくれた人間が徐々に興味を無くしたような態度を取れば、寂しくなるのも無理ないか。ごめんリョータ君、これからは多分君を守るかっこいい兄貴みたいな態度はとれなくなる。だってあれはほとんどソータがやってたようなものだし。

     少し申し訳なく思いながら、彩子と一緒に帰る。大会まであと少しね、今年は行けるといいわね全国、そんな会話をしながら、夕暮れの道を歩いた。


    「だから、出たんだって!」

     その次の日、ミシマが体育館に行くと何やら騒がしい声がした。中では桜木が宮城や三井、赤木に対して何かを喚いているのが見えた。
     桜木が元気がいいのはいつものことだからと思い、ミシマはスルーしようとしたが、その内容が耳に入ってきて思わず足を止めた。

    「自主練あとの部室にいたんだよ・・・」
    「・・・何がだよ」
    「・・・ゆ・・・幽霊」

     三井がごくりと唾を飲み込んだ。まじかよ、と顔をこわばらせ、同じような顔をした桜木と顔を見合わせている。対して宮城と赤木は呆れたように2人を見ていて、信じていない様子だ。

    「ほ、ほんとだぞゴリ!」
    「見間違いだろうが」
    「ちげえんだ・・・俺がロッカーを開けたらな・・・入ってたんだよ、誰かが。足があった」
    「花道、疲れてんじゃねえの」
    「・・・確かに、一回閉めてルカワの奴に開けさせたら、いなくなってたけどよ」

     でもぜってえいた! あれは幽霊だ! そう騒ぐ桜木の話を本気にしているのは1人しかいない。ミシマだ。

    「くだらん」

     そう赤木が言ってその話は終わる。桜木はまだ、嘘じゃねえ・・・天才にしか見えないのか・・・? などとぶつぶつ言っている。
     ミシマには思い当たる節があった。昨日後回しにしようといった幽霊、あれを今日見ていない。部室の方に逃げ込んで桜木をからかって遊んでいるとしたら、さっさと祓っておきたい。でないと、あまりに桜木がいい反応をするものだから被害が悪化するかもしれない。こんなに騒いでもらえたら、幽霊だって気合が入ってしまうだろう。 

    「む・・・ミシマさんは信じてくれますよね? この天才の目に狂いはないと!」

     不意に話がこちらに振られ、ミシマはあっと反応が遅れる。苦笑しながら頷き何か桜木を擁護しようとすれば、すぐに宮城が口をはさんでくる。

    「やめろよ花道。ハジメはそういう話、苦手なんだよ」

     ああ、そういえばそんな設定になってたな、と他人事のように思う。ま、そっちの方が都合がいいかと訂正もせずに、ミシマは素直に肯定した。それから桜木の方に顔を向ける。

    「桜木の・・・ロッカーに入ってたの?」
    「そっす」
    「・・・」
    「信じるなよハジメ、どうせ花道の気のせいだ」

     宮城は怖がらせないようにそう言ってくれたのだろう。だが桜木はいや本当だと言って譲らないので、宮城はとうとう桜木に拳骨をいれた。
     桜木のね、覚えたぞとミシマは頷き、自分の仕事に戻っていく。今もそこに入っているのかはわからないが、また桜木を待っている可能性が高いし、行ってみる価値はあるだろう。練習が終わって、みんなが帰った後くらいに。



     今日は用事があるからと彩子と別れ、ミシマは教室に向かった。現在は18時50分。おそらく20時頃までは3年生や桜木流川が自主練習をしている。鉢合わせないように時間をつぶして、部室に忍び込もう。鍵は持っているし、マネージャー権限で。
     1時間ほど暇になるので、自分の席に座って校庭を眺めた。もう夕日は沈み、紺色の空に月が浮かんでいる。真っ暗になればさぞ不気味だろう。教室には誰もいないし、廊下は静まり返っている。だがミシマはそれほど恐怖を感じない。なぜならその廊下には何もいないとわかっているからだ。

     ぼんやりと1時間、考え事をしながら過ごした。途中で誰かが廊下を歩く音がしたが、生きている人の音だったので放っておく。結局それはミシマの教室に近づくことはなく遠ざかっていった。
     時刻は19時45分、そろそろ行かなければこの棟が施錠されて学校から出れなくなってしまう。少し早足で部室のある方へと向かうと、遠くから赤木と桜木の話し声が聞こえた。
     咄嗟に身を隠し、やり過ごす。彼らで最後か、それともまだ流川がいるのか、そう考えていると、また足音。今度は流川だった。
     よし、これで全員帰ったな。そう思い、ミシマは堂々と廊下を歩いた。真っ暗で静まりかえった廊下を、転ばないように慎重に歩く。足音が廊下に反響した。

     部室の前までやってきてから、ミシマはまずい、と顔をしかめた。誰か中にいる。物音がしたのだ。
     慌てて隠れようとするが、この近くに都合よく隠れられる場所はなく。ガチャ、とドアノブが回されミシマの顔は強張った。

    「あれ、何してんの」

     部室から出てきたのは宮城だった。ミシマはやばいと身体を固め、必死に言い訳を考えた。何故今日に限って遅くまで練習しているんだ。いつもは赤木達よりかは先に帰っているはずなのに。
     何も言わないミシマを不思議そうに見て、宮城は首を傾げた。

    「わ、すれものしたから、取りに来たの。今、帰るところ・・・」
    「あー、なるほど。よくお前この廊下歩いてこれたな。怖くなかったのかよ?」

     宮城は特に疑いもせず、そう言った。そのままミシマの横に並び、一人歩きだした。しかしミシマが一向に進まないのを気にしてか、立ち止まって振り返る。

    「え、帰らねえの?」
    「・・・帰るけど」

     彼の目の前で部室に堂々と入るわけにもいかないので、ミシマは諦めて宮城の隣についた。
     廊下に二人の足音が響く。特に会話もなく、静かに。今更二人の間に気まずさは存在しないが、ミシマは1時間くらいを無駄に過ごしてしまったことにひっそりショックをうけていた。

    「まじでこえーよな、夜の学校って」
    「・・・うん」
    「よく入って来れたな。嫌いなんだろ、幽霊とか」

     そんな会話にミシマは適当な相槌をうった。そういえば久しぶりに、宮城と二人きりで会話したような気がする。2年になってからは1年のときのように2人で話すことはなくなった。だからか少し懐かしい気持ちになりながら、ミシマは宮城の声に耳を傾けていた。
     以前はあったソータの声は聞こえないが、しかしソータが何を言うか想像がつくくらい、たくさん彼の声を聴いた。もう聞こえることはないのだろう。そう思うほど、ミシマは胸が締め付けられるように痛くなり、息苦しいような感覚を覚える。
     ねえリョータ、そう声をかけようと前を向く。だが、何故か宮城はどこにもいない。ぽつんと、ミシマ一人が廊下に立っていた。

    「ありゃ・・・」




    「花道の奴、自分のロッカー開けんの怖がってさ、今日は旦那に開けさせてたんだぜ。ビビりすぎだよな」
    「・・・」
    「・・・ハジメ?」

     宮城が振り返る。すると、そこには誰もいない。真っ暗な廊下が続いているだけ。え、と声が漏れた。確かにさっきまで足音がしていたはずである。

    「おい・・・?」

     宮城は少し鼓動を速めて、元来た方へ引き返す。消えた、なんてありえない。必ずどこかにいるはずだと思った。自分を驚かそうと・・・いや、そんな悪趣味な奴ではない。だからこそ余計に混乱した。
     ゆっくり、暗闇の廊下を歩く。宮城の足音と、息以外の音はしない。1人になると途端に不気味さが増したような気がして、背中に嫌な汗をかいた。
     結局、部室まで戻ってきてもミシマは見つからず。もしかしたらもう帰ったのかと、そう思って再び帰ろうと踵を返す。

     ガタン、と何処かの扉が開く音がした。宮城はびくっと肩を震わせて、音の方を見た。部室のドアが、キィと音を立てて開く。

    「ハジメ・・・?」

     宮城は部室の方へ足を向ける。嫌な汗が額に滲む。桜木の話なんて全く信じていなかったのに、どうして今になって頭に過るのか。

     部室を、ゆっくり覗き込んだ。誰かの足が見える。暗闇だというのに、くっきりと。何故か見たことがある気がした。そこから足、赤い短パン、黒いタンクトップが続く。既視感が、宮城を動揺させて手が震えた。
     顎、口、鼻と顔のパーツが見えてくる。だがどうしてか、それより上に目をやることが出来ない。でもそこまで輪郭が捉えられたら、十分だった。

    「ソー・・・」

     震えた声が喉から絞り出される。ありえないと脳が訴えているが、視覚の情報と一致しない。だってそこにいるのだ。今だって見えている。
     その誰かの手が、宮城の手首に伸ばされる。ひんやりした感覚に、ひきつった声が漏れた。刺すような冷たさで、ぎゅうっと手に力が入れられる。ぎし、と骨が軋んで痛みが出てきた。

    「いっ・・・」
    「・・・」

     咄嗟に手を引くが、逃れることが出来ない。呼吸を浅くしながら、まとまらない思考をかきあつめた。逃げねぇと、離れないと・・・誰から? 目の前にいるのは・・・

    「リョータ」
    「!」

     その声を聞いた瞬間、海のにおいと、風が頬を掠めた気がした。本当にしたわけではない。ただ記憶が、鮮明によみがえっただけ。船に揺られて、こちらを見ているあの困ったような笑顔が、涙に滲んだ視界が、よみがえる。

    「は・・・いや・・・」
    「リョータ、俺だよ」

     ありえねぇと、声に出せなかった。夢だと思った。






     つい1年ほど前の記憶。アンナがミシマと映画に行ってきた日。アンナが珍しく部屋に来たと思ったら、ズカズカ歩いてきてリョータの布団の上に座り込んだ。

    「今日の映画ね」

     唐突にそう切り出した。リョータは、あ? と雑誌から目を離さないままで返事をする。

    「死んだ人がさ、夢に出てきて」
    「んー」
    「"私のこと忘れて、幸せになって"、って言ってさ」

     要領を得ない妹の話を、リョータはきちんと聞く気もなかった。声色だって、そんな深刻ではなくて、軽い雑談の口調だ。

    「それってさ、ぜっっったい、あの男の妄想だと思うんだけど!!」
    「うわっ」

     急に怒ったアンナに、リョータは思わず顔をしかめた。振り返ると、リョータ以上に顔をしかめた、苦虫を噛み潰したような顔をしたアンナがいる。
     雑誌を閉じて、しっかりアンナの方へ身体を向ける。アンナは体育座りで、視線を斜め上にそらし、唇を尖らせていた。

    「んだよ、面白くなかったって話か。ミシマに言えよ」
    「ちがくて……」

     何で伝わらないんだと苛立つ妹にどうしたらいいかわからない。リョータは困った顔をして妹の顔を眺める。兄妹よく似ていると、沖縄では言われた。今もそうだろうか。どちらかといえば、アンナは自分ではなくて・・・

    「リョーちゃん、もしさ」
    「おう」
    「もし私が死んだらさ」

     その言葉に、反射的に息を呑んだ。過ったのは父の遺影と、船に乗ってこちらを見ている兄の顔。

    「忘れて欲しくないからね」
    「……」
    「ずっと憶えててよ」
    「……何言って」
    「でもウジウジはしてほしくない!!」

     また大声を出すアンナは、身体を前のめりにする。リョータはのけぞって、妹の肩を掴んだ。

    「違うのよリョーちゃん」
    「さっきから何だよ」
    「例えばね、明日私がいなくなったとして」
    「……」
    「何年か経って、リョーちゃんがお嫁さんを連れてきてね」

     何の話かと困惑しながらも、リョータは真剣にそれを聞いた。真剣でなければいけないと思ったから。

    「これが自慢の美人の妹です! って、当たり前に紹介して欲しいの」
    「…………はぁ?」
    「だから、わかる? わかんない? なんで?」

     駄々っ子のようになった妹は、もう手がつけられない。気持ちの切り替えは早い妹だが、不機嫌な時はとことん不機嫌になる。だからリョータは黙っているしかなかった。

    「やっぱり、リョーちゃんもあの映画見てきた方がいいよ」
    「……」
    「きっと感動するよ」

     言葉に反して、アンナの声色は吐き捨てるみたいに雑だった。絶対感動しなかったんだろお前は、そう言いたくなったが、それで不機嫌を加速させたくはない。

    「ハジメさんならわかってくれるのにな」
    「そーかい。結局、何が言いたかったんだよお前は」

     立ち上がって部屋を出ていこうとするアンナに、リョータはそう聞く。アンナは戸に手を掛け、振り返らないまま、溜め息をついた。

    「見た? 冷蔵庫にシュークリームが4個、入ってた」
    「・・・」
    「食べられちゃうんだよ、シュークリームはすぐに」
    「・・・」
    「それだけだよ。もっとあるでしょ、写真とかさ。そっちの方が絶対・・・」

     その続きを言うことなく、アンナは部屋を出ていく。リョータは1人、静まり返った部屋で遠退く足音を聞いていた。最後にやっと言いたいことが半分伝わって、リョータは目を伏せた。片付けられたシャツも、トロフィーもユニフォームも、きっとこの家のどこかにあるのだけれど、その場所を知っているのは母だけで。
     ゴロンと布団に寝転がり、天井を見上げる。目を閉じると、まだ鮮明に兄の顔は思い出せる。きっとバスケをしているうちはずっと心の中にいる。もし自分がバスケから逃げていたら、どうなっていたんだろう。いやそんなもしもはありえないが。

    「ねえソーちゃん」

     久しぶりに口に出すと、情けないほど弱弱しかった。

    「なんでいねぇの」





     パチッと、音がしたかと思うと辺りが明るくなった。眩しさに目を瞑ると、誰かが自分の隣に立つ気配がした。一瞬、ソータかと思った。走馬灯のように、ソータの記憶が浮かんだから。

    「ふざけないで」

     ピンと張りつめた、地を這うような低音だった。それがミシマの声だと判断するのに少し遅れた。目が慣れてきて、やっとミシマの姿が見られるようになってから、気が付いた。
     自分の手を掴んでいた何かはもういない。目の前にいた何かはいない。だというのに、ミシマは何かを見ている。まっすぐ前を、見ている。髪の毛でその表情は見えないが、先ほどの声で大体察せる。

    「・・・ハジメ?」
    「そういうのが一番腹立つ」

     はぁ、とため息。いつもより荒い口調。
     怒ってる。宮城は怯んだ。小さい頃、父と母が夜中に喧嘩していた時の雰囲気を思い出した。あの、普段は怒らない誰かが怒ってる時の、独特な雰囲気があった。
     一歩、宮城は何とかミシマに歩み寄った。その瞬間パチッと電気がまた消える。真っ暗になって、近くにいるはずのミシマの姿さえ見えなくなる。

    「おいハジメ、何だよ、これ」

     少し震えたが、平静を取り繕う。でも返事はない。代わりに誰かが肩を引き寄せた。
     宮城の前方から舌打ちが聞こえた。それから数秒、電気がつく。ミシマは平然とした顔で、宮城の肩を抱き寄せて立っていた。
     まるで夢から現実に引き戻されたような感覚だった。思考回路は完全に停止している。あるものをひたすらに受け止めるしかない状態だ。密着しているせいか、ミシマの匂いが鼻を掠める。女子の匂い、でも落ち着かないよりかは、安心する。

     ミシマは前方を見たまま、震える宮城の拳にそっと指先で触れて、宥めるようにポンポンと叩いた。ふっ、と身体の強ばりがなくなると同時に、ミシマは宮城から離れていく。

    「じゃあ、帰ろうか」

     ミシマは当然と言った顔で電気を消して、それから一緒に部室を出た。無言で、廊下を歩いた。外に出て、お疲れ様といって、別れた。
     何か聞かなければと思った。どこに消えていたのか、部室で何を見たのか、何に怒ったのか。でもミシマが話してくれるのを待ってしまった。結局何も話してはくれなかったが。

     夜風が頬を掠めていく。いつもより遅い帰宅だ。ミシマを送ってやればよかったな、そう思ってから、いやいやあいつなら大丈夫だろ、俺より強いしと思い直す。
     ミシマもあれを見たのだろうか。同じものを見たなら、あれは、自分の兄だって言いたい。話してしまいたい。多分俺は呪われてるんだって。兄に酷いこと言ったから。そしたらミシマはなんて言うんだろう。笑って冗談だろうと受け止めるか。
     結局その日、宮城はよく眠れず、翌朝は珍しく妹に叩き起こされるはめになった。

     

     次の日の部活、ミシマは休むための言い訳を10個考えた。考えたが、どれも没にした。
     昨日の出来事を話そう。宮城が質の悪い霊にいたずらされた。わざわざ兄の姿に化けて動揺を誘うような小賢しい悪霊だった。それはもう、ミシマの癪に障った。それで怒りのままにぶちのめした。汚い断末魔を上げて散っていった霊を満足げに眺めて、ミシマは勢いのまま宮城と下校した。
     何も聞いてこない宮城だが、今日は多分、聞いてくるだろう。そしたらなんて言い訳する? 思いつくか? 答えはノー、まったく思い浮かばない。そうなればやることはひとつ。完全黙秘だ。言わなけりゃいい。中学だったら仙道が煙にまいてくれたが。

     体育館に行くと、真っ先にミシマは流川の元へ行って背中をバンと叩いた。多分いつもより力が入っていた。

    「おつかれ」
    「・・・」

     ダブルミーニングだ。流川には伝わらないだろうが。
     いつもなら、っす、と返事があるが、今日は強く叩いたせいか無言で睨まれた。がそれを謝ることはしない。一気に3人くらい祓ってやったんだ。むしろ感謝してほしい。君がこれから眠気や怠さを感じずにプレー出来て、夜も快眠できるのは私の体力を対価に支払ってるおかげだぞと。まあ、知ったこっちゃないだろうけれど。

    「んだよ流川、ミシマに気に入られてんの?」

     それを見ていたらしい三井がそう話しかけてきた。流川は無反応。ミシマは肩を竦め、三井の方を見た。

    「どうして人は懐かない猫に惹かれるんでしょうかね」
    「あ? 猫は懐くやつもいるぞ。お前動物に嫌われる質か?」
    「・・・」
    「ちなみに俺は好かれるぞ。野良猫にも」

     聞いてないよそんなこと、と仮にも先輩に言うことは出来ず。というかむしろイラっとして、ジトっと三井を見る。そんな様子に流川はふー・・・と息を吐きだして、馬鹿にしたように三井を見た。

    「先輩こえーから多分好かれない」
    「あ? どっちの先輩だよ?」
    「あっち」

     そう言って流川が指したのはミシマの方だった。まさか指されるとは思わず、ミシマはええ? と素っ頓狂な声を上げる。てっきり三井の方だと思っていたのだ。

    「だよな。流川に同意する」
    「え・・・」
    「俺が言うのはあれだが・・・お前は赤木と同じくらいゴリラだぜ」

     多分体育館襲撃事件を見てそう言っているのだろう。流川は頷きはしないが、ちょっとワカル・・・と表情に出ている。やはり初対面があの登場では悪印象しかなかったようだ。
     ショックを受けつつも、仕方ないかと諦めていると、流川がでも・・・とぽそっと呟く。

    「先輩が来てから肩こりがなくなった・・・っす」
    「は? それミシマ関係なくね」

     真っ当なツッコみをした三井だが、ミシマは感動した。流川はちゃんと気づいていた。別に気づかなくてもよかったが、嬉しい。

    「マッサージでもしてもらってんのか」
    「いや、背中叩かれる」
    「・・・ツボ押しか?」
    「・・・?」

     あほ面して首を傾げる2人を放っておいて、ミシマは仕事に取り掛かった。
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