「あ~暑い」
「・・・」
蝉の鳴き声がうるさい。汗を拭いながら、俺はいつものように暁人の手を繋いで歩いている。麦わら帽子を被っている暁人の手は、少しだけ湿っていた。顔は相変わらずの無表情だが暑さのせいか、どこかぼうっとしているようにも見える。
「おーい」
「・・・何?」
ワンテンポ遅れて反応する。これは完全に上の空だな。
「今日はもう帰るか」
「ん」
そう言って俺達は家へと向かって歩き出す。おもむろに暁人が鞄から何かを取り出した。
「日傘か?」
「うん、持ってたけど忘れてた」
それは白いレースのついた可愛いデザインの日傘だった。女性向きのデザインだが、それを差して歩くと余計目立つ気がするが、まぁいいだろう。今の暁人の服装にもぴったりだしな。
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