ビターな思い出を塗り替えて「KK、いつもありがとう」
お皿の上にちょこんと乗せられたそれは、どうやらチョコレートケーキのようだ。
「あ?……昨日作っていたのは、それだったのか」
昨日の夕方頃、帰宅すると部屋中チョコレートの甘い香りで包まれていて、その残り香が甘ったるくてつい顔を顰めてしまった。その香りの正体が、これだというわけだ。
「甘さ控えめにしたからさ、KKでも食べられると思うよ」
食べてみて苦手なら残してもいいからさ、と暁人は皿をずずいっとオレの前に差し出してくる。残してもいいと言うが、せっかく作ってくれたものを食べないわけにもいかない。とりあえず一口、と控えめにスプーンですくって口へと運ぶ。
「…………美味いな、これ」
1959