生活能力皆無のあの人 ある日の武装探偵社。昼休みに、敦が国木田に訊いた。
「国木田さん、ずっと謎に思ってることがあるんですけど」
「どうした、敦」
「太宰さんって僕と暮らすようになるまで、日常生活送れてました……?」
そこで国木田は眼鏡を押さえる。レンズが光を反射して表情が読み取れなくなる。
「――何かあったのか?」
「いえ……あの人ってば料理はできないし、ポケットに物を入れたまま洗濯に出すし、お風呂上がりは髪の毛もろくに乾かさないし……」
そこで国木田は深いため息をついた。単なる惚気だと思われたのだろう。
「知らん。どうせ女の世話にでもなってたんじゃないか?」
「……ですかねえ……」
あの太宰のことだ。女性をたらし込んで面倒を見てもらうくらい、わけはないだろう。
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