【フィガレノ】おれがねむるまで「俺、もう長生きできないんだよね」
とはいえ、それがいつまでかは分からないんだけど。
レイタ山の麓にある、何十年も前からレノックスが拠点としていたいくらか手狭な小屋の中。窓越しに見える星空の開放感に誘われるように口にした、装われたスープに入った少しだけ苦手な食材の話。それくらいの気楽さで、しかしあまりに重大な事柄を告げられた気がする。
全身が石にでもなったかのように硬直し、どうにか隙間を掻い潜った空気が外に漏れると、「はあ」と気の抜けた返事のような音に成った。そのレノックスの反応をどう受け取ったのか、フィガロは肩を竦ませて。「何日とは言わないけれども、せめて何ヶ月だとか何年だとかが分かればさ。準備のしようがあるのに」、と。普段通りの笑顔を浮かべながら、軽快に言葉を続けていく。
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