髭面リーゼントのキューピッド「オレ、男が好きなんだよ」
煙草の煙と共にベランダで吐き出されたのは、口調とは裏腹に重たい告白だった。
友人の横顔をまじまじと見つめてしまったのは、今思っても失策だった。
リーゼントを下ろして完全にオフスタイルの水戸が、後悔するように顔を背けたからだ。
「あー、悪ぃ、忘れて。酔ってるっぽい、オレ」
「嘘つけ、酒強いくせに」
背後のガラス扉を隔てた室内では、いい具合に酔っ払った桜木軍団の残りの面々が高鼾をかいている。
酔っ払っていたのは野間も同じだった。ベランダに出れば酔い醒ましに煙草を吸っている水戸がいたので、からかってやろうとした。アルコールの勢いに任せて、お前花道がバスケットにうつつ抜かしてる間にまた告白されやがって、あの子とはどうだったんだよ、と小突いたしっぺ返しがコレだった。
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