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    ゆうや

    @asbiusagi

    ぶるろ垢
    馬狼、國神右派の総受けそう愛され大好き人間

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    ゆうや

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    第2回ngbr1DW

    お題(嫉妬、イヤホン)
    同棲済み
    未来捏造






    「ねぇ、見て王様」

    練習から帰って来て早々に慌ただしくリビングにやって来たかと思えば練習道具の入ったバックを雑に放り投げて、俺の目の前に少し大きめの頑丈そうな箱が掲げられる。
    お前ちゃんと手洗ったのかと喉まで上がって来ていた言葉が詰まるほど珍しい勢いに驚きながら、クサオの持っている箱に目を向ける。
    クリアフィルムの奥に見える商品を覗いてみればイヤホンセットのようで、それがどうしたとクサオに視線を移す。

    「イヤホンじねぇか、どうしたんだこれ」
    「ファンの子から貰った」
    「…そうかよ、良かったな」

    箱をくるくると回してから中身を取り出し始めたクサオの様子がいつもと変わらない表情の筈なのに、機嫌の悪そうな空色をした瞳がいつもより晴れているように感じて、もやもやと蟠りのようなものを感じる。
    お前、イヤホン一つでそんなに喜ぶのかよ…、なんて言葉を押し込めて止めていた掃除の手を再開させる。

    暫くして掃除が終わり、綺麗になった部屋を見渡して小さく息を吐く。
    満足いく出来にいつも通り紅茶とプリンで締めようとして冷蔵庫の扉を開け2つ並んだプリンに、ああそうだったと思い出す。

    「おい、クサオ、プリン食うか?特別にお前の分もあ…る…」

    冷蔵庫の中を見ながら投げ掛けるように口にした言葉の途中で、イヤホンをしてれば聞こえないなと思い至って言葉が途切れる。
    チラリと確認で向けた目線の先、ソファに陣取って熱心にゲームをしているクサオには予想通り俺の声は聞こえていないようで、反応が無く思わず舌打ちし誰に言うでもなく小さく悪態を吐く。
    結局1人分のプリンと紅茶を用意して、ダイニングテーブルに座って食べたその味気なさになんとも言えない苛立ちを感じる。

    いつもなら俺の言葉に気怠そうにでも言葉を返してくるクサオが今日はそれすら無くゲームに夢中になっている。
    ソファの背もたれ越しに時折揺れる後頭部を眺めながら、なんだかガキっぽい感情を感じて苛立ちと相まってもやもやと居座る感情を発散しようとスポーツウェアに着替える。
    声を掛けたところで気付かないだろうし態々言うまでもないと思いそのまま外に出れば、少し暑さの和らいだ気温と柔らかい風に気分が良くなる。



    首と肩、腰の痛みを感じて顔を上げれば帰宅してから結構な時間が経っていて、休憩でもしようと貰ったばかりのイヤホンを外しテーブルの上に置く。
    評判通りクリアな音質で画面と音のズレもなく思った以上にゲームに没頭してしまった。

    「ねぇーキング、喉乾いたー」

    グッと伸びをして固まった筋肉を解しながら紅茶でも淹れてもらおうと声を出せば、帰ってくる返事は自分で淹れろでも、仕方ねぇな、でも無くてただの無音で不思議に思って部屋の中を見渡しても馬狼の姿が見当たらない。
    また寝室で昼寝でもしてるのかなと寝室をそろっと覗いてみても探してる姿は無くて、掃除で汗をかいてシャワーでも浴びてるのかなと浴室を見ても姿はない。
    漠然とした焦りを感じながら玄関を確認すれば、普段履く靴は置いてあって代わりにランニングシューズが無くなっているのが分かりちょっとだけ安心する。

    部屋の中を探し回ったせいで紅茶を自分で入れる気力も無くて冷蔵庫をなんと無しに開けてみればプリンが一つだけ。
    キッチンに干してあった容器と同じ形をしていて、きっと馬狼の事だから俺の分も買ってきたんだろうな、なんだ1人で食べちゃったのか、なんてちょっと寂しく感じる。
    そういえば今日はあまり馬狼の声を聞いてない。
    さっきまで耳に響いていた銃声がない代わりに静まり返った空間にもの寂しさを感じて結局何も持たずまたソファに座り直す。
    いつ走りに行ったのかも分からなかったし、プリン食べるなら声かけて欲しかった。
    いつもならゲームのし過ぎだとか休憩しろだとかぐちぐちと、家事の音と一緒に聞こえてくる馬狼の声が無くて物足りない。
    座ったは良いけれどソワソワと落ち着かない気持ちで足を擦り合わせて大きく息を吐いてソファーに寄りかかり天井を見上げる。



    気分が乗り少し遠くまで走ったクールダウンがてら家までの道のりをゆっくりと歩く。
    右手に持つ袋が歩くたびにカサカサと音を立てるせいで嫌でも袋の中にあるものを意識してしまう。
    なんだってこんなものを買ったのか…。
    原因は分かっているけれど認めたくも無くて、折角走って発散したもやもやとしたものがまた舞い戻ってくる気がする。
    家に帰ってもまだゲームをしていたら引っ叩いて止めさせよう。そう思いながら家のドアを開ければ、走りに出た時と同じように静かで、靴を脱ぎながらただいまと習慣付いている言葉を口にする。

    「おかえり…、遅いよ、王様」

    いつものように口から出た俺の言葉に、少し不貞腐れたような声で言葉が返って来て慌てて顔を上げれば、廊下に足を投げ出して座り壁に背中を預けたクサオと目が合う。

    「あ?何してんだお前」
    「お前が帰ってくるの待ってた」
    「はあ?」
    「だってお前、急に居なくなるんだもん」

    ムッと口を尖らせて文句を言ってくるクサオに眉を寄せながら、言いたい事をグッと堪えて靴を揃え家に上がり、手を洗う。
    その間にのそっと立ち上がったクサオが近寄ってきて何を言うでも無く俺の動きについてくる。

    「っだぁ、鬱陶しいな!?座ってゲームでもしてろ」
    「やだ」
    「はあ?」

    あっさりと断られた提案に、いよいよ何がしたいのか分からず、手を拭き終わって近寄ってこようとするクサオをなんとかいなしながらキッチンに寄り、グラスに水を注ぐ。
    そのついでに持っていた袋をシンクに置けばクサオが興味津々に袋の中を覗き込み始める。

    「なにこれ?レモンティー?」
    「…フレーバーティー」

    ガサガサと音を立てて入っていた箱を手に取ってパッケージを眺めたクサオの反応を横目に見て、何気なさを装いながらクサオの言葉に訂正して言えば少しだけ和らぐ目元が見えてつっかえていた気分が多少良くなった気がする。

    「ふーん、美味しそう、馬狼が淹れてくれるの?」
    「飲みたいなら自分でいれろ」
    「お前が淹れたやつがいい」

    ジッと見つめて来る瞳に断ることも出来ず、もともとそのつもりで買ってきた事もあって溜息を吐いてみせ、分かった分かったと返せばクサオはぱっと嬉しそうな表情を浮かべる。
    クサオの分かりにくい表情筋の変化は同棲のせいで何だかんだ読み取りやすくなっていてなんだかむず痒くなる。



    帰ってこないかも、なんてほんの少しだけ頭をよぎった心配がやることもない静かな空間で思考を占めてくる。そんなことは無いとは思いながらも、ソファでそわそわしている身体を何処かに落ち着けようと、玄関に繋がる廊下に座って馬狼が帰って来るのを待っていた。
    怪訝そうに向けられた馬狼の瞳を他所に馬狼が買ってきたお土産は俺の好きなレモンティーのパッケージに似ていて、違うと言う馬狼に首を傾げる。
    それでも美味しいに違いないそれを、馬狼が淹れてくれると言うんだから大人しく待つに限る。

    シャワーから上がった馬狼がお湯を沸かしてポットを準備する音がする。
    ダイニングの椅子に座りながらテーブルに頭を預けてキッチンを眺めていれば手際良く動く馬狼の髪の毛がさらさらと流れる。
    食器が小さく立てる音とか、馬狼の足音とか、聞こえてくる音が心地良くてずっと聴いていたい。

    「おい、こっち見てニヤニヤすんな」
    「えー…良いじゃん」
    「気が散るだろーが…ゲームでもしてろ、折角イヤホン貰ったんだろ」

    テーブルに手を伸ばして脱力したまま、音に耳を傾けていれば馬狼にしては珍しい物言いに目を向けて、言うつもり無かったんだろうなと分かる程に、しまったと顔に書いてあるような反応を見せる馬狼に思わず口許がだらしなく緩んでくる。

    馬狼が帰ってきて存在も忘れていたファンからのプレゼントを馬狼はずっと気にしてたのか。
    キッチンから舌打ちが聞こえてきて、照れ隠しのようなそれに嬉しさが込み上げて来る。
    うずうずと擽ったいような感覚に堪えられず椅子から立ち上がれば、馬狼が慌てたように身構える。

    「っ、おい、こっち来んじゃねぇ、っ、おい!聞いてんのか!クサオ!」
    「うん、ちゃんと聞こえてるよ、お前の声」

    大股でキッチンに侵入すれば威嚇するように睨みつけて来る馬狼の直ぐに出てくる手を握って押さえ付けキスをする。嬉しくて勢いに任せてキスしたせいでガチっと歯をぶつけ痛みに2人して蹲った。

    end.
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