バレンタインSS拡大版—-140字SSは以下—-
店先の華やかな一画が視界に入る。今までの人生では縁のなかった場所だが、足を止めて見入っていた。我ながら浮かれていると呆れるが、誤魔化しようなく浮き足立っているのも事実で――店員に呼び止められ、今時は男性から贈ることも珍しくないと告げられ、包みを一つ。鯉登さんの笑顔が脳裏を過った。
———ここまで———
通勤鞄とスマートフォンに交互に目をやりながら、月島は深々と吐息を漏らしていた。
二月十四日。なんの変哲もない平日、しかも週初めだ。社会は年始の慌ただしさから抜けきれぬまま年度末に向かい突き進んでいる。月島とて暇な時期ではない、学生である鯉登もまたレポートや試験で忙しくなってくる頃合いだろう。
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