隣の市からおよそ10分 鳩には満腹中枢がない。際限なくあげれば際限なく食べてしまう。餌を放るそぶりを見せれば習慣で寄ってくる。だから餌をやる方が気をつけていなければいけない。
神社の入り口で小銭を缶に入れ、豆の袋を取り出した。寄ってくる鳩に撒こうと思ったが、先に観光客が豆を放り出したのを見て、そんなことを思い出した。顔を上げれば濡れ羽色した小さな城。少し考え、脚を向ける。
あちらの鳩の方が、さらに沢山餌づけされている気もするけれど。
地元に戻って一か月ほど。雪祈はリハビリも兼ねてここ何日か街の散策をしていた。最初のうちは山の方へ行っていたのだが、どこまでも行ってしまうので、今は駅側へ向かうようにしている。
神社と城の間は大通りで繋がっている。寒い時期とはいえ、標高が高い分晴れの日は、なかなかしんどい目に合う。そのため帽子は必須だ。キャップを被り直し、道の中ほどに沸いている湧き水をペットボトルに汲んだ。
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