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    𝕤 / 𝕔

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    ⇢ひよジュン
    ⚠ オメガバ(α☀×Ω🌊)
    ⚠ 本編は別にありますが、まだ完成していないのでこの番外編しかありません

    ミスタ・アンチロマンチストの眷愛 ✦ ✦ ✦

     おひいさんのスキンシップが激しい。
     そんなのいまに始まったことじゃねえといわれればそのとおりなんだけど、最近輪を掛けてひどいと思う。
     きれいに付けられた、とおひいさんご自慢のオレのうなじの噛み痕を指の背で撫でて、キスして、頬ずりまでして。そうされると背筋がゾワゾワして身体がゾクゾクするオレなんかお構いなしで、おひいさんはずっとオレのうなじにご執心だから困る。
     身体の発達というか内臓の発達というか、とりあえずオメガとしてうまく成長できていなかったオレは最近になって自分がオメガだと知った。ずっとベータだと言われてきたから、突然その事実を突き付けられたときはもう目の前が真っ暗になったし、実際にかなり混乱した。子宮を腹から取り出したらオメガじゃなくなりませんかなんて茨に言って、困らせたのも記憶に新しい。
     なんでオレがそこまで取り乱したかというと、おひいさんがオメガ嫌いだと宣言していたからだ。せっかく拾ってもらったのに、相方だと認めてもらえているのに。オレがオメガだったばっかりに、おひいさんに嫌われて捨てられるのがどうしても嫌だった。
     けどおひいさんの言うオメガ嫌いはどうやら、ロマンチストが嫌いなあのひとらしく『夢見てばかりのオメガが嫌い』ということだったらしい。おひいさんはあれでリアリストな面がある。きっとあのひとにも色々あったんだろう。おひいさんは性格がアレだけど、アルファとしてはピカイチなんで。
     ──とまあ、そんなこんなで色々とすったもんだがあったけど、オレはおひいさんに捨てられることなくいまに至っている。なんなら番にまでなっているのだから世の中分からない。
     ……いや、うん、まあ。オレがオメガだって分かって、おひいさんがオメガ嫌いだって知ってたのにも関わらず、真っ先におひいさんの子ども産めるんだ、おひいさんの子どもを産むのはオレがいいな、なんて思っちまった時点でこの関係から逃げられるわけはなかったんだけど。
     閑話休題。
     そんなわけで今日も今日とておひいさんはオレのうなじに頬ずりして、メアリにするみたいにちゅっちゅしている。このひとの番の認識ってもしかしてペットと同レベルなんすかねぇ?
     もう番になったんだからチョーカーだって本当は必要ないのに、オレが外に出掛けるときは必ずおひいさんが手ずからチョーカーを着ける。うなじの痕見せびらかしてやればいいのに、きれいに痕付いてんでしょ、といえばそれでもダメ! と怒るのだから分からない。
     このひとの考えていることはオレにはいつまで経っても理解できなくて、それが悔しかったりする。ナギ先輩くらいまでとはいかなくても、もう少し分かるようになりてえなぁ。
     ソファに座ったおひいさんの足の間に身体を入れて、ぬいぐるみよろしく後ろからぎゅっと抱きしめられながらソファに浅く腰掛ける。それが最近のオレたちのよくあるくつろいでいるときの体勢。ちょっと前まではソファで横並びだったけど、こうしているとおひいさんの目の前にオレのうなじがくるから、おひいさんは最近ずっとこうやってオレに身体を擦り付けている。
     おかげで毎日オレからおひいさんの匂いがして、茨からものすごい渋い顔で見られているからそろそろちょっと本気でやめてほしい。おひいさんは面の皮がぶ厚いから気にならないみたいだけど、オレは普通に恥ずかしいんで。
     
    「おひいさぁ〜ん……くすぐってぇんで、そろそろやめてくれません?」
    「ん〜? 嫌だね! ぼくがこんなにもかわいがってあげているんだから、むしろジュンくんは泣いて喜ぶべきだよね?」
    「んなこたぁないでしょうよ……そのジュンくん本人がやめてほしいって言ってんだし……」

     オメガ性を自覚して初めて知ったことだけど、オメガはうなじがとことん弱い。人体の急所だからという点を差し引いても、そこに自分の番が触れているだけで身体が熱くなる、気がする。おひいさんは知らないんでしょうけど。
     外では頑なに外したがらないチョーカーも、家に帰ってきてしまえばお払い箱とばかりにぽいっと取られて、おひいさんのくちびるが代わりに触れる。首筋は開放されて楽になったのに、じわじわと高ぶる熱がオレの腹に溜まってくるから、たいそう身体によろしくない。うん。よろしくないんすよ、おひいさん。
     スマホでゲームをするのにも飽きてきて、そろそろ本当に離してほしいなあ、と思っていればうなじの噛み痕をおひいさんの指がなぞった。ぽこぽこ。肉の凹凸になめらかな指先が這って、思わず悲鳴を噛み殺す。びくりと揺れたオレの肩に、おひいさんの笑い声が降った。

    「ジュンくんって敏感だよね」
    「はぁ ンなとこ撫でられればオメガは誰だってこうなっちまいますよ!」
    「そんなもんかね? ……ふふ、かわいいね」

     ぼくが見つけたんだから、当然だけれど。
     そう言うおひいさんの声は、どろどろのハチミツみたいにとろけて喉を焼くようなあまったるさだった。普段のよく通るハイトーンボイスが嘘みてえに、絡み付いて離れないどろっどろのウィスパーボイス。ああ、クソ。オレがこの声に弱いって知ってて耳に吹き込んでくるんだから、性質タチが悪い!
     オレを捕まえて離さない、腹に回った腕を引き剥がすために握りしめる。純粋な力ならオレの方が上。でもおひいさんは身体の使い方が上手いから、力の往なし方も上手い。逃げ切れるかは五分と五分。
     なんとかなれと力を込めた瞬間に、「だぁめ」と背後からあまったるい声で諌められて、ついでにかぷりとうなじを甘噛みされて。オレは秒で敗北を喫した。
     ずるい。卑怯にも程がある。バカ、アホ。貴族。最後に至っちゃ悪口でもなんでもない。GODDAMN、オレの語彙力が足りてねぇ。
     ううぅ〜。前のめりになって呻くしかできないオレを、勝ちを確信したおひいさんがご満悦に抱きしめる。

    「ぼくから逃げようなんて百年早いね!」
    「ぐうぅ、いつかぎゃふんと言わせてやりますからねぇ〜……」
    「あはっ、いつになるだろうね」
    「すぐですよ、すぐ!」
    「楽しみに待ってるね!」

     かわいいぼくのジュンくん。
     うなじへのキスも、ついでに降ってきたその言葉もどっちもこれまたご満悦だった。
     おひいさんはオレと番になってから、ふたりきりになるとものすごい甘えてきて、ものすごい甘やかしてくる。こんなにベタベタするようなタイプでした? ってぐらいに。元からスキンシップの多いひとだったけど、ここまでとは思ってもみなかった。
     オメガは番を持つと、自分からは解消できない。それはオレがおひいさんからこの先ずっと離れられないことを示している。おひいさんは寂しがりだから、オレがどこにも行かないことに満足しているのかもしれない。っていうとものすげぇ自意識過剰かもしんねぇけど。
     おひいさんがまたオレのうなじにキスをして、それから楽しそうな口調でオレに問う。

    「ジュンくんジュンくん、新しいチョーカーはどんなデザインにしようか。ジュンくんは黒くてシンプルなものがすきだっていうけど、ジュンくんの好みに合わせてたら同じようなものばっかりでつまらないね。ぼくのものだって一目で分かるようなものにしようかね」
    「いや、もういっぱい持ってますしいらないっすよぉ。おひいさん際限なく買ってくんだもんなぁ」
    「だってジュンくん全然頓着しないからね。ぼくが着飾ってあげないとかわいそうだよね。せっかくこんなにかわいいのにね?」
    「オレのことをかわいいと思ってんのはおひいさんくらいっすよぉ〜」

     オレはおひいさんの目が悪いのか趣味が悪いのか、正直どっちかだと思っている。このチンピラみてえな顔のどこを見てかわいいって言ってんだ、このひと。
     おひいさんはオレが苦言を呈したのにも関わらず、延々とこういうデザインがいいねだの、ジュンくんお気に入りのあれはちょっとくったりしてきたからそろそろ新調しようねだの、ひとの背後でくっちゃべっている。
     楽しそうでなによりですけどねぇ、うなじに息がかかってくすぐってぇしゾクゾクするし、ついでに腹に回した手の片方でオレの腹さするのやめてくれません? おひいさんにそんな気はねえこたぁオレだって分かってんですけど、仮にも番、っつーか、まあ、普通にすきなひとにそういう触り方されると変な気分になりそうになるんすけど。
     本当にこのひと、番をペットかなんかだと思ってんのか? だとしたらオレもさすがに文句を言ったって許されると思う。
     ……ていうか。

    「そろそろうなじばっかじゃなくて、こっちにしてくれません?」

     くるんと振り向いて、面白くねぇですよっていうみたいな顔をして。ん、とくちびるを差し出せばおひいさんは一度きょとんとデケェ目を瞠って。それから、あはっと声を立てて笑った。

    「うんうん、口寂しかったんだねごめんねジュンくん!」

     いちいち腹の立つ言い方しかできねぇのかなこのひと。そう思ったけど、にっこりと弧を描いたくちびるがやっとオレのくちびるに触れたから、今回だけは許してやることにした。
     あまく絡まり合う視線に、ふすん、と息を吐き出す。ああ、やっと顔が見れた。ったくもお。
     心の広いオレに感謝してくださいねぇ、おひいさん?
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