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    りかです

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    りかです

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    烏天狗×コンビニ店員のパロ。記念日にあげたい!とか言ってたけど余裕で終わらなかったのでとりあえずかけてるとこまでの進捗。これはユキ→モモ←バンのユモバモになる予定だけどまだ万理のバの字も出てない。完成するのかもわからない。オチも決めてない。推敲もしてない。

    「いってきます!」

    誰もいない部屋からは返事をするようにバンバンッと食器棚の戸が1人でに開閉する音が聞こえた。それを聞いてから鍵を閉める。これがオレの最近のルーティンだ。

    徒歩3分のコンビニにスマートフォンだけを持って行く。財布はいらない。別に何かを買うわけじゃないから。むしろ売る方だ。外はもう真っ暗だった。昼間は暖かかったけどそのままの服だと少し肌寒い。でもまあ3分だし。やっぱり近いって最高。色々あったけどこの家に決めてよかったな。

    オレ、春原百瀬は大学に進学するのを機に一人暮らしを始めた。家を探す上でなにを重要視するかは人それぞれだろう。大学からの近さと治安の良さ、家賃、間取り。それらを考えながらいくつもの物件を見ていたら1つの部屋が目に留まった。駅近で破格の家賃。どれだけ狭い部屋なのかと間取りを見たら居間が6畳。独立洗面台もあって窓も東。小さなアパートの2階の角部屋だった。え、良い部屋じゃん。オレはすぐにその部屋の内見を申し込んだ。

    写真の通り少し古そうな外観だったが部屋の中はリフォームをしたようで結構綺麗だった。コンロが二口あって便利ですよと言われたがオレは料理をしないのでへえーと適当に相槌を打った。結論から言うといい部屋だった。よく晴れた日だったから大きめの窓からは太陽の光が入ってきていて明るい印象を受けた。だからこそ不思議でたまらなかった。なんでこんなに家賃が安いのか。“前の入居者の方ってどのくらいここに住んでたんですか?”オレの質問に不動産屋は言いづらそうに3ヶ月くらいですね、と言った。3ヶ月。どう考えてもおかしい。折角引っ越したのに3ヶ月でまた引っ越しをするなんて余程のことがないとしないだろう。

    たぶん、おそらく、ここは事故物件だ。さすがに少し躊躇った。本当にここでいいのか?実はやばい部屋だったりする?悩んでいるうちにもう1つの目星をつけていた物件が埋まってしまい、他に好条件なところも見当たらなかった。まあ、今まで幽霊なんて見たことないし大丈夫でしょ。そう思ってこの家に住むことにした。家族は心配してたけど正直家なんて寝れればどこでもいいし。家賃半分出すからもっと良いところ探しなって言われたけどオレも姉ちゃんも大学生で学費やらなんやらがかかるわけで。せめて姉ちゃんが卒業して就職するまでの間は節約したい。ひとり暮らしがしたいっていうのもオレの我儘だし。大学はちょっと遠いけど実家からも通える距離ではある。でも、足を怪我してからみんながオレに気を遣ってるのが嫌でもわかる。いつまでもうじうじしてられないなとは思う。でも何か大きなきっかけがあって立ち直る!なんて漫画みたいなことは現実では起こらない。少しずつ、時間がかかってしまうかもしれないけど前を向けたらいいなって、そう思ってる。家族のためにもオレのためにも今は少し距離を置くタイミングなのかなってオレは勝手に考えている。だからこそのひとり暮らしだ。

    まあ事故物件?といっても霊感ゼロですし、なにもないでしょ!というマインドで挑んだ引っ越し初日。ダンボールが山積みの部屋でそれは起こった。寝ようと布団に入ったらカーテンが揺れていることに気がついた。もちろん窓なんて開けてないしエアコンや扇風機だって使ってない。まあ隙間風とかかなって。カーテンか揺れるくらい隙間風が入ってくるのもある意味やばいけどそれでも幽霊よりは隙間風の方が現実的だった。明日どこから風が入ってきてるのか調べて塞いだりしないといけないなと思いながら瞼を閉じた。引っ越しの疲れもありウトウトの半分夢の中にいたオレの意識は物音で現実に引き戻された。キッチンのほうからパタンッ……パタンッ……と音が聞こえてくる。気がつくと気になって眠れなくなる。音の正体を確かめるためにキッチンにいくとキッチンの下の包丁やフライパンを収納できるようになっているところの戸が開いていた。こんなところ開けた覚えないけどな、閉めとくか。そう思って手を伸ばそうとした瞬間、その戸が閉まった。もちろんオレは指一本触れてない。もしかしてこれ、ポルターガイストってやつ?ここ本当に事故物件だったんだ。目の前で起こってしまった以上認めざるをえない。ここに、今、幽霊がいる。それを肯定するようにまた戸が開いた。

    「お、お邪魔してます……?というか、これからここに住む春原百瀬です。よろしくお願いします」

    もともとここには幽霊さん?が住んでたわけで。オレがお邪魔させてもらうんだから挨拶しとくべきだよね。いやでも家賃はオレが払うわけだしこの幽霊は居候なのか?なんだ幽霊の居候って?

    その日はもうなにも起こらなくて、布団に戻って普通に寝た。しかし次の日からもポルターガイストは起こり続けた。突然電気が消えたり物が落ちたり。全く困らないと言えば嘘になるけど大きな害が出るようなことはなかった。それどころかオレが鼻歌を歌ったら合いの手のようにラップ音を鳴らしたりパスタを茹でるために火にかけていたお湯が沸騰したらジャーと水道から水を出して知らせてくれたりする。しばらく一緒に過ごして毎週木曜日の深夜にテレビが勝手につくとこに気がついた。テレビの中ではいつもデビューしたばかりのアイドルが様々なことに挑戦していた。幽霊は彼らが好きなんだろうか。テレビが勝手につくからなんとなく見ていただけだったが毎週見ていると愛着がわくものだ。アイドルには詳しくないけど彼らは応援したくなる。同居人が好きだからなんか詳しくなっちゃうみたいな現象が起きていた。オレはこの事故物件の部屋に完全にルームシェアの感覚で住んでいる。大変なこともあるが実はちょっと楽しかったりする。

    コンビニの夜勤のバイトをこなして“なにか”が待つ家に帰る。

    「ただいま〜」

    小さくパキッとラップ音が鳴った。今日の返事は控えめだな。もっと盛大にお出迎えしてくれる日もあるのに。まあ幽霊にも疲れてる時とか気分が上がらない時とかあるよね。オレもバイトで疲れてるし。シャワー浴びて寝よう。大学は3限からだから少しは寝れるはず。布団に潜り目を瞑るとすぐに睡魔が襲ってきた。






    「……モ。……モモ……」
    「ん……?」

    誰かに肩を揺らされている感覚で目が覚めた。重い瞼を開くと見たことないくらい美しい人がこちらを見つめている。瞬時にこれは夢なんだろうなと悟った。それくらいこの人は現実離れしていた。整いすぎている顔と現代ではあまり見ない和装。そして背中から生えた大きな黒い翼はまさに非日常の象徴だった。

    「ようやく目覚めたか」

    目の前の人物から発された声の低さに驚いた。男だ。別に女性だと思っていたわけではないが長い髪と綺麗な顔から中性的な印象を受けていた。声はしっかりと男性だったし手や骨格も確かに男性のそれだった。

    「あなたは……?」
    「人に名を聞く前に自分が名乗るのが礼儀ってものじゃねぇか?」
    「あ、そうですよね。オレは春原百瀬です」
    「ああ、よく知ってるよ。すぐに真名を教えちまう阿呆だっていうことも今知った」

    名乗れと言った癖に名乗ったらアホ呼ばわり。彼は綺麗な顔に反して意地が悪い。2、3言話しただけでそれがわかった。

    「それで、あなたは?」
    「俺のことはユキと呼べ」
    「ユキ、さん……」

    ユキというのはあだ名だろうか、それとも名前か?フルネームすらも名乗らないこの男の考えていることは全くわからなかった。それにこの美しい男に気を取られて気付かなかったがこの空間自体が怪しい。なにもない真っ白な空間。終わりなどなく永遠に続く白い空間は明らかにおかしい。夢、だと思っていいのか?夢とも違うなにかな気もしてくる。

    「モモ。お前はどういうつもりだ?あんな部屋に住んで」
    「あんな部屋?……事故物件のことですか?」
    「そうだ。早く引っ越せ。なにを仲良くテレビなんか見てるんだ」

    ユキさんはなぜかオレが事故物件に住んでいることを知っていた。そして引っ越せって。これは虫の知らせみたいなものなんだろうか。今は害もなく共存してるけどやっぱりそれって良くないことなのかな?

    「やっぱり危険ってことですか……?」
    「危険?あの程度の妖には人間に影響を及ぼすほどの力など無い」
    「じゃあ別に引っ越さなくても……」
    「駄目だ」
    「えぇ……?別にユキさんには迷惑かけてないですよね?ていうかユキさんはなんなんですか?オレたち知り合いじゃないですよね?」

    こんなに綺麗な人、会ったことがあれば絶対覚えている。

    「知り合いじゃないなんて薄情なことを言うな。どれだけ俺がお前に寄りつく雑魚を払ってやったことか」

    正直ユキさんの言っていることはほぼ理解できなかった。オレたちは知り合いってことなのか……?

    「お前は魂が清らかで優しすぎる。俺がいなかったらとっくに妖に魅入られてどうにかなってたぞ」

    妖。知識としては知っている。人ならざる者のこと、くらいの浅い知識だけれど。それらが生きているのは御伽話とか漫画の中でオレの生きる世界とは別だ。これは夢なんだろう。最近友達に勧められて読んだ漫画に影響されたのかも。

    「ユキさんありがとうございます、でいいのかな?」
    「心がこもってない、やり直し」
    「えぇ……横暴だなあ……」

    よくわからないけれどここは夢で妖怪とかが存在してる世界なんだろう。それならユキさんの背中から生えている大きな黒い翼にも納得がいく。黒い羽があるものってなんだ?悪魔、とか?うーん、でもそういう感じには見えないんだよな。だって悪魔は和装じゃないよね。じゃあ悪魔はどんな服着てるんですか?って聞かれても答えられないけど。

    ピピ……ピ……ピ……

    ん?遠くでなにか音が鳴っている。電子音みたいな……それになんだか視界が白く霞んでくる。意識もふわふわして保っていられない。

    「おい、まだ話は終わってないぞ!聞いてるのかモモ」
    「ユキ、さん……」

    駄目だ。ユキさんがなにか言っているけどもう意味のある言葉として脳に入ってこない。オレは意識を手放した。

    と思った瞬間にまた目覚めた。そこは紛れもなく自分の家だった。見慣れた天井だ。顔に見えて少し不気味なシミも健在だ。目覚ましを止めるために音の発信源をまさぐると固い物が指先に触れた。画面をタップして目覚ましを止める。そして画面に大きく表示された12:43の文字を見た。いち、にー、よん、さん。12時43分。

    「12時43分!?」

    やばいやばい。遅刻だ。3限は午後からだといってもこれは遅刻だ。洗面台でさっと身だしなみを整えて急いで家を出る。

    「いってきますっ!!」

    今日は家の中からバンバンッと返事が来るのを待つ余裕もなかった。鍵を閉めてからすぐに駆け出した。走りながら友人に遅れるから席とレジュメ取っといてほしいというラビチャを送っておく。すぐに『飯1回分』とだけ返ってきた。今日の教授はいつも講義の最後に出席確認をする。それには余裕で間に合う。

    急いできたせいで少し乱れた呼吸を整えてから講義室に入る。友人のところに行くと彼は場所取りのために置いていたであろう鞄を退けてくれた。小声でありがとうと言ってその席に座る。

    そこでようやく一息つくことができた。寝坊なんて久しぶりにした。オレは結構朝に強い方だという自負がある。コンビニの夜勤からの学校だって今まで遅刻したことなかったし。やっぱりあの夢のせい、なのかな。不思議な夢だったな。ユキさん、すごい綺麗な人だった。人、と言っていいのかわからないけど。あれが夢だとするとオレの深層心理とかが反映されてるのかな。事故物件にも慣れてきて1人暮らしなのに誰かの気配を感じることに少し楽しさを感じている。これは本心だと思っているけれど本当はどこかで幽霊を怖がっているのかもしれない。

    オレが考え事をしているとあっという間に講義は終わってしまった。ただの夢にこんなに翻弄されるなんて馬鹿馬鹿しい。まあどうせ途中から真面目に聞いても講義の内容は頭に入らなかっただろうからよしとするか。

    「おはよう、百が寝坊なんて珍しくね?」
    「おはよ〜……オレもびっくりしたよ……席とレジュメありがとね」
    「飯1回分、と言いたいところだけど今回は別に奢んなくていいよ」
    「え!?なんで?奢るよ」
    「いいって!その代わりさ、今度の飲み百も来てよ」
    「飲み?」
    「そう!〇〇大の女子と飲み行こうって話になっててさ。その子の友達が百に来て欲しいって言ってるらしくて!お願い!」

    大学で最初に仲良くなった友達。明るくて面白いやつだけど女の子に目がないところがちょっと残念ではある。彼のいう飲み会はまあ合コンみたいなものだ。あまり気乗りはしないけど今日こいつに助けられたのは事実だ。もしかしたらこの男はオレがNOと言えないタイミングをずっと見計らっていたのかもしれない。

    「おっけ、行くよ」
    「マジ!?助かる!詳細決まったら連絡するわ」

    合コンはあまり得意じゃない。いや得意じゃないというと語弊がある。得意不得意の話をするなら多分得意な方だ。話を回すのも好きだし人を褒めるのも好きだ。そういう飲みで女の子の連絡先をそれなりにゲットしたこともある。でも得意と好きは同じじゃない。上手く立ち回ることはできるけど普通に疲れるし。女の子に興味がないわけじゃない。オレだって可愛くて胸の大きい彼女ができたらな〜とは思う。でもそれに全力になれるかと言われればなんか違うんだよな。サッカーみたいな、オレの人生を賭けたいと思えるようなものを探したい。彼女はそれとは違うような気がする。

    「百昨日バイトだったの?」
    「あー、そうだよ」
    「夜勤は仕方ないよな。俺だったら絶対無理だわ」
    「いや別に夜勤だったから寝坊したというわけでは……ちょっとなんか変わった夢みてさ」
    「変わった夢?はは〜ん、さてはエロいやつだ?」
    「違うよ!なんか妖怪?からオレのこと守ってくれてる守護霊?みたいなのが出てきて……」
    「なんだそれ、漫画の見過ぎだろ」
    「だよね〜……」
    「まあ百がどうしても気になるならあそこ行ってみたら?」
    「あそこ?」
    「オカルトサークル。幽霊とか妖怪とかなんかいかにもオカルトサークルのやつらが好きそうな話じゃん」

    オカルトサークルか。なにか怪しいことをしている集団だということは知っているけれど実際どんな活動をしているのかはさっぱりわからない。あの夢も家にいる“なにか”も別に実害が出ているわけではない。素性のわからないサークルに行く方が怖いまである。

    「うーん別にそこまで困ってるわけではないかな」
    「だよな。だって百事故物件住んでるくらいだし。変わった夢くらいどうってことないよな」
    「住めば都ってやつだよ。案外悪くないよ。家賃安いし」
    「俺は絶対無理だわ」

    こいつはオレの家に遊びにきたときにポルターガイストにビビりまくっていた。早く引っ越せ、なんならしばらく俺ん家に泊めてやるから!ってすごい心配してくれたんだよな。なんだかんだいい奴なんだ。

    友人に礼を言って家に帰る。大学から近いってやっぱり最高だ。すぐに家に着く。

    「ただいまー」

    ジャー

    オレに返事をするようにカーテンが閉まった。

    「暗っ!電気電気」

    手探りで電気をスイッチを押す。どうせ外も暗かったし電気は付けなければいけなかった。電気をつけたらカーテンだって閉めなきゃ外から見えてしまう。つまり幽霊のおかげでカーテンを閉める手間が省けたわけだ。ほら、悪いことばかりじゃないでしょ。

    テーブルの上でパソコンを開く。課題のレポートを書いて、それが終わったらゲームでもしよう。オレはパソコンに向き合ってキーボードに指を滑らせる。オレが集中しているのを察しているのかはたまた気分じゃないだけなのか幽霊は静かにしていた。カタカタと単調なキーボードの音だけが鳴っている。その音はゆっくりとオレの睡魔を誘っているようだった。








    「モモ」
    「ユキ、さん……?」

    あれ?ここは、また夢?オレいつの間に寝ちゃってたんだろう。

    「昨日はよくも俺の話を無視してくれたな」
    「いや別に無視したわけじゃ……」

    なんで怒られてるんだオレは?

    「言い訳を聞きたいんじゃない。お前はYESとだけ言えばいい。引っ越せ。いいな?」
    「いや待ってくださいよ!まずユキさんは誰なんですか?オレがどこに住もうがオレの勝手ですよね!?」
    「この俺に口答えをするつもりか?どうなっても知らんぞ」
    「どうなってもって……?いやいや落ち着けオレ。これは夢で、こんな脅しにビビる必要ないでしょ」
    「夢?お前はこれを夢だと思っているのか。面白い冗談を言うなあ」
    「冗談なんか言ってない!」
    「仕方がないな。これが夢なんかじゃなくて俺がお前の生活に介入できることを証明してやろう。俺はなんて親切な烏天狗なんだ」

    こっちに来いと手招きしているユキさんの方へ近づく。さっきから態度がでかいくて気に食わないけどなんと言っても顔が良い。あのイケメンフェイスでこっち来いなんて言われたら従ってしまうだろう。

    「なんですか……、っ!?」

    デタラメみたいに整った顔が近づいてきて、そのままくっついて……。これってもしかしてキスされてる……!?

    「んっ、ふぅ……んんっ……!!」

    なにしてくれてんだ!と抗議しようと開いた口にぬるっとなにかが入ってくる。舌だ。嘘だろ。なんでいきなりこんなことに……。離せって叫びたいのにユキさんに舌を絡め取られてしまい、送られてくる唾液をコクコクと飲み込むことしかできない。上手く飲み込めなかった唾液が口の端から垂れる。そんなことを気にする余裕はなかった。ぐちゅぐちゅと口内を犯される音が頭の中に響いてクラクラする。冷静になって考えると酸欠だったのかもしれない。頭が回っていないオレはこの初めて与えられた快感にどうすることもできなくてなにかに縋るように空いた両腕をユキさんの首の後ろに回した。もっとって強請ってるみたいで恥ずかしいけれどなにかに掴まっていないとどうにかなりそうだった。

    「はぁ……はぁ……」

    長いキスの終わりを告げるようにユキさんの顔がゆっくりと離れていく。慌ててユキさんに抱きついていた両腕を離すと気づかぬ内に腰が抜けていたようでその場にへにゃりと座り込んでしまった。キスだけでこんな風にされてしまうなんて情けない。オレだってそれなりに経験はある。でも基本女の子って受け身だしオレが攻められることってないから……こんなに気持ちいいキスは初めてだった。

    「これだけで腰を抜かすなんて……先が思いやられるな。まあ今日はこのくらいにしといてやる」

    先ってなんだよと問い詰める前にユキさんは手に持っていた葉団扇を揺らした。緩やかに上下に振っただけで台風でも来たかのように風に包まれる。反射的にギュッと目を瞑って、開くとそこは見慣れた家の天井だった。
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    りかです

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    誰もいない部屋からは返事をするようにバンバンッと食器棚の戸が1人でに開閉する音が聞こえた。それを聞いてから鍵を閉める。これがオレの最近のルーティンだ。

    徒歩3分のコンビニにスマートフォンだけを持って行く。財布はいらない。別に何かを買うわけじゃないから。むしろ売る方だ。外はもう真っ暗だった。昼間は暖かかったけどそのままの服だと少し肌寒い。でもまあ3分だし。やっぱり近いって最高。色々あったけどこの家に決めてよかったな。

    オレ、春原百瀬は大学に進学するのを機に一人暮らしを始めた。家を探す上でなにを重要視するかは人それぞれだろう。大学からの近さと治安の良さ、家賃、間取り。それらを考えながらいくつもの物件を見ていたら1つの部屋が目に留まった。駅近で破格の家賃。どれだけ狭い部屋なのかと間取りを見たら居間が6畳。独立洗面台もあって窓も東。小さなアパートの2階の角部屋だった。え、良い部屋じゃん。オレはすぐにその部屋の内見を申し込んだ。
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    りかです

    DOODLEモモは少女漫画とかに憧れはするけどこれはフィクションで現実はこうはいかないよなって案外リアリストであって欲しい。ナチュラルにロマンチストなのはたぶんユキの方だろうなと思いながら深夜に書いたユキモモポエムです。
    もしもの話ユキって実は案外ロマンチストだったりする。少女漫画に出てくる王子様みたいな見た目なのにデリカシーがなくて愛想笑いもしない人なのに。でもロマンチストじゃないと創作なんて出来ないのかもしれないって、最近作詞をするようになってから思った。作詞ってまるで銀河みたい。宇宙に放り出されたオレはユキの曲に似合う1番星を果てしない数の星の中から探すんだ。これキラキラしてるかもって選んだ星を地球に帰って見てみると全く光が見えなくて、また選びなおし。でも単純に明るい星を探すだけではダメで、明るくはないけど淡く優しい星がピッタリはまるときもあるから難しい。そうやって銀河の旅人をしているとセンチメンタルになりやすいし。話が逸れちゃったけどユキも創作をする人で、夢想家なんだ。いつだったかな。楽屋の待ち時間かユキの家でテレビを見ながらの雑談だったか、覚えてないけどもしもオレたちがアイドルじゃなかったらって話をしたんだよね。オレはサッカー選手か、それが無理でも働きながら地元のサッカークラブでコーチとか、なんなら教員免許取ってサッカー部の顧問とかしてたかも。作業療法士とかも憧れるけどアレって頭良くないと多分資格とか取れないんだよね?オレには難しいかな、とか。ユキはなんでも似合うよね。普通に作曲家もいいし料理人だって向いてる。楽器屋の店主もいいしバンドマンのヒモでもいい。どの世界線のユキもいいな〜って、オレは大妄想大会を開催してたわけ。それでいろんな世界線を考えたんだけどびっくりするくらいオレとユキが交わる世界線ってなくて。例えばオレとユキが同じ学校の生徒だとするじゃん。オレはサッカー部で毎日練習が忙しくて、ユキは軽音部だったけど部員と揉めて退部してる。バンドメンバーは校内以外のとこから探すんだろう。オレは1つ上の折笠先輩がカッコいいって噂を聞いて、廊下で見かけてほんとだかっこいい、でもチャラそうって思ってそれで終わり。たぶん話すこともなく卒業する。これが三月とかだったら部活の休憩中に甘い匂いに誘われたオレに家庭科部の三月がお菓子をくれてそこから仲良くなる、みたいな想像ができるけどオレとユキって本当に交わらないよなって。だから、やっぱりオレはアイドルがいいなって。オレがユキの隣にいられるのってたぶんこの世界だけだから。オレが少しおどけてやっぱりユキと一緒にいたいからアイドルが1番かな〜って。あくまで
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