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    べにいも

    うちよそ小説置き場

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    べにいも

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    友人とのうちよそです。細かな設定は別の投稿で載せます。多分。
    イチがうちの子。ノアくんは相手の子。
    タイトル①ってなってるけど時系列じゃなくて書いた順です。

    ノアイチ① 引き攣ったその表情も、悪態をつく姿も、全て全て全て全て、誰の目にも映らなくていい。


    ——


     久々のデートに胸を躍らせるノア。いつ連絡しても、謎の理由を付けて断られるうえに、ここ数日は返信が返って来ないなんてことも増えた。連絡がマメじゃないのは重々承知していたが、朝から夕方の間にかけては極端に連絡が減る。イチのことだから、浮気なんてするわけがないと確信をしていても、ノアは少し寂しかったようで。
     その分、今日は早朝から気合いを入れてお気に入りの服装に身を纏う。少しやり残した家事を捨てるように家を出て、待ち合わせ場所へと駆けていく。
     周りは閑散とした場所。待ち合わせというのは賑わっているような分かりやすい場所が定番だとは思うが、イチがそんな場所を好むわけもなく、ノアが提案したのだ。
     奥の方に目を向けると、大通りが見え、ここが裏路地なんだと理解する。足元はあまり綺麗とは言えず、誰かの捨てたゴミが少しだけ転がっていて。それを見つめながら、イチの姿を目に逃さないようにキョロキョロと周りを見回す。待ち合わせ時間までは少しある。イチが遅れることはなくても、自分が遅れることが嫌なノアは、いつも少し早く着く。
    「早く、イチ来ないかなぁ」
     鼻歌を歌いながら、満面の笑みで恋人を待つノア。待たされるのは、イチだから許せるようだ。

     カコン。

     自販機横の空き缶用ゴミ箱。その中に空き缶が入る音が遠くで聞こえる。その音の方向へ目を向ける。
    「か、わい……」
     目に飛び込んだのは、地面に落ちた空き缶を、律儀に拾ってゴミ箱へ捨てるイチの姿。ポイ捨てなんて、蹴飛ばして行きそうな身なりをしているのに、投げ入れるのではなくて、そっと捨てていて。空き缶一つが、羨ましいと胸を痛めるノア。
    「……ふふ。イチー!イチー!」
    「あ?もう来てんのかよ」
     ひらりと手を振ると、自らイチの側に寄っていくノア。先程の行動は、絶対に見たとは言わず、心の中に留めておく。仮に話したところで、悪態つかれて逃げられるなら、この可愛いという感情は一人だけで堪能したい。そう思うノアだから。
    「今日どこいこっか!」
     そうノアが聞くと、返事はなく。早足に奥の通りへと向かうイチ。それについていくようにノアはペースを合わせる。

     沈黙の後、グッと突然イチに腕を引かれてしまい、ノアは少しだけ焦る。
    「わっ」
     その焦りは、突如として変化し、胸が大きく高鳴る。

     ……後ろから、自転車がかなりの速度で来ていたのだ。ノアの歩幅が一瞬変わり、自転車に擦れそうになったのをイチは腕を引いて進路変更してくれたのだ。
    「危ねぇな」
     その台詞は、ノアへの言葉に聞こえるが、そうではなくて。自転車への怒り。そんなことも理解できてしまうノアは、目を蕩けさせてイチを見つめる。
    「はぁ……好き」
    「っ、るせぇ」
    「イチ、ほんとに好き」
     高鳴る胸が止まりそうになるくらいの喜び。こんな一人で先走るような人が、周りをしっかり見ているのだから、悶えるなという方が難しい。それだけに留まらず、イチは何も言わずに道路側を歩き始める。歩く速度は全く変わらないのに、ノアを気遣う行動に、高鳴る胸は本当に止まりそうだ。
    「イチは俺の事好きだね」
    「……」
    「照れてるの?」
    「勝手に言ってろ」
     頬を少しだけ赤らめてる姿に、ノアはグッと身体を寄せて、イチの腕にしがみつくように腕を回す。



     周りがもうすでに人混みになりつつあるのに、腕を絡めるものだから、イチは少しだけ嫌そうな表情へと変わる。
    「ほら、見て、俺らを見てる人がいる」
    「じゃあ離れろよ」
    「なんで?むしろ見せてあげるんだから」
    「???」
     何を言ってんだコイツ。と、顔面に書いたような顔をして、再び返事を返さなくなるイチ。それを他所に、ノアは余計に笑みを浮かべる。


    ——見て、ほら、羨ましいでしょ


     目線は他人の方へ向けながら、満足気に笑い、頬を赤らめるノア。
    「そういえば、イチ、何で最近連絡くれないの?」
     頬を少しだけ膨らませて、信号待ちの時に質問をする。絡ませていた身体をググっと押されて剥がされながら、膨れた顔はキープするノア。
    「……別に何でもいいだろ」
    「ダメ、教えて?」
    「ったく」
     潤んだ顔を作って信号の赤を利用する。歩かれるとまた話題を流される。それを分かって今質問したのだから、ノアも上手い性格だ。
    「外」
    「ん?そ、外?」


    「外、好きじゃねぇから。これ」


     ポケットの中から、銀色の物体を出して、ノアの手の中に押し付けるように渡すイチ。
    「え、まってこれ、って」
    「俺の家の、鍵。あ、合鍵作ったから、外の頻度減らせ」
     合鍵には、ノアの髪の色と同じ赤い革のストラップまで付いていて、無くさないようにしっかりと固定されていた。その愛しいサプライズに、目を点にして口を開けて閉じれないノア。
    「合鍵のこと、調べてたら、通信制限かかった。それだけだ、もういいだろ」
     その言葉と一緒に、信号は青に変わり、また歩き始めるイチ。固まりかけた身体を動かしてイチについていくノアの口はまだ塞がらない。

     通信制限がかかっていたから、自宅にいない間は連絡が途絶えていた?夜はこれを調べる為に連絡を返し忘れていた?アクセサリーを買うのもきっと、外に出て店を調べたりしたから、外での通信量が増えてしまった?
     疑問と答えが簡単に結びつく。単純なイチだからこそ、簡単に理解できるが、理解すればするほど、狂いそうになるくらいに胸が痛くなる。
    「やばいって、もう……」

     このまま家に帰って、食べてしまおうか。
     そんな怪しい笑いをして、ノアはイチに着いていく。


     ほら、見せつけて。
     俺の恋人は、可愛すぎるんだよ。


    end
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