Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    べにいも

    うちよそ小説置き場

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 😍 😊 💘 💒
    POIPOI 7

    べにいも

    ☆quiet follow

    うちよそ小説。
    細かな設定は後程。

    ノアイチ② 誰かに染められるのは慣れていない。純粋な言葉ほど、心は深く堕ちる。



    ——



     急激に寒くなる世界。外へと目を向けると、マフラーや手袋、帽子を身につけて暖を得る人々。寄り添いあっている者もいる。そんな人に冷たい視線を流しながら、自宅へと向かういつものルート。
     特に予定もなく、寄り道をすることなく帰宅するのが日常。非日常は、疲れるものだ。日常でいい。
    「はぁ」
     片手に息を吹きかける。白く濁る空気。もう片方の手はポケットに収納されて出てくることはない。普段の服装の上から、少し厚手の上着を被ったイチは、靴を擦らせて歩く。この時間になると、もうすぐポケットに振動が来るはずだ。

    「ん、ほらきた」
     予想が出来すぎて、思わず口に出して画面を出す。

    『今、イチの家の前にいるんだけど、会えない?』

     予想をしていなかった突然の内容の連絡に、口を開けて眉間にシワを寄せる。ノアは、イチにとっていつも非日常だ。それに、慣れようとするのも難しい事。イチにとって非日常は不得意。経験が浅いのが仇になる。
    「ったく……」
     連絡を返す事なく、少しだけ先程より早歩きになってイチは自宅に向かう。悪態付いていても、仮にも好きな人。こんな寒い日に一人で数分待たすのが心配だという表れ。
     早歩きになると、冷たい風が顔に当たる。それを目を細めて耐えながら、徐々に頬を赤く染めていく。冷えと、もうすぐ会える恋人の効果だろう、か。


    ——


    「はぁっ」
     自宅の前にいるのは、手を擦り合わせて自身の空気で暖を取るノアの姿。心なしか鼻先も赤くなっている。それを見たイチは、より一層早歩きになり、ノアに近づく。
    「おい、バカ。こんな寒い中、いつからいたんだよ」
     ポケットの中に入っていた温かい方の手で、グッとノアの手を引く。そのまま、鍵を開けて、自宅に招き入れるイチ。
    「さっき来たばかりだよ!会いたくて来ちゃった!」
     嘘つけ、という目線を送り、自分の着ていたコートをノアの頭から雑に被せる。
    「とりあえずそれ着てろ、飲み物用意するから」
     そう言って、台所の方へ消えるイチ。

     温もりを帯びたコート。イチの匂い。部屋の匂いも同じ。先程まで寒くて耐えていた体の力が抜け、興奮という熱で身体は震える。ノアは、潤み、蕩けた瞳でイチを見つめる。
    「っ、たまんない……」
     目を細めて笑いながら、口角から見える歯。
     イチの匂いが付いたコートを抱きしめて、台所へ近づいていくと、ふわりと鼻に付く温かい匂い。
    「ココア?」
    「……いいから座ってろ」
    「うんっ」
     咄嗟に温かい飲み物を用意するその器用さに熱望する。台所に立っているだけなのに、美しく見えて、ノアは座る事なくイチをずっと眺めて離れない。それに気がついたイチは、小さいため息を吐きながら、叱る事なく飲み物を完成させる。
    「ねぇ、イチ」
    「あ?」
    「飲み物、の前に、抱きしめて?」
    「……あ?」
     思考を止めてしまうイチの顔をみて、クスリと笑う。そのまま、手を大きく開いて、抱き留めて欲しいという顔をしながら待機するノア。
    「お願いっ、ダメ?」
    「っ」
     甘い甘いその顔に負けたイチは、コップ二つを置いて、ノアに近づく。そのまま、飛び込むのではなく、ノアの手を引いて自分の胸に引き寄せる。
    「きゃっ」
    「変なリアクションすんな」
     抱き寄せられたノアは、力強くイチを抱きしめて、そのまま唇に接近する。
    「、ば」
     制止しようとする身体を乗り越えて、ノアはイチにキスを落とす。触れるだけの、ただ一度のキス。
    「可愛いね、イチ」
     甘い顔で、翻弄すると、唇を人差し指で触れて固まってしまうイチ。
    「ん?どしたの?」
    「っ、」
     目を逸らして頬を染めていることを隠すように顔も逸らそうとするイチ。それを察したようにまた口角を上げるノアは、高揚した頬と目と唇で、イチの耳に近づく。


    「ねぇ、もしかして、今ので勃った?」

    「っざけ、っ!」
    「ねぇイチ?教えて?」

     耳元で囁くせいで、びくりと震える身体。それに良しとしたノアは、更に耳元で舌を口内でくちゅりと鳴らして鼓膜を刺激する。そんな攻撃に、イチの顔は蕩けていき。

    「お。お前のせいだから、責任取れよ、くそ」



     その台詞で、歯止めを効かせれる人間がいるなら、教えて連れてきてほしい。もう耐えられないに決まってる。


    ——責任は永遠に取るよ


    end
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    😭👏🌋💕💒💒
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works