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    くるしま

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    くるしま

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    短め雑土。半子さんネタ。
    ショートショートを目指したけど2000文字突破してしまい、敗北感。
    短い話を練習したいので、何かリクエストあったら下さい…!書ける範囲が狭い書き手ですが、R18以外なら頑張ってみます…!

    自分的には攻め女装を書きたいです。今回も女装雑への助走のつもりで書いたんですが、書けるかなー。

    短い雑土の練習 夕方というには少々遅く、夜というには少し早い。そんな時刻だった。
     山田伝蔵こと伝子が、土井半助こと半子に紅を差そうと筆を取った。目を閉じた半子の唇に、筆が乗る直前。その手が止まる。
    「女人の化粧を覗くなんて、感心できませんわね」
     それは、「伝子」の声としては鋭すぎるものだった。目を閉じていた土井が、何事かと山田を見る。すると、
    「申し訳ない。声をお掛けするタイミングを逃してしまいました」
     低い声と共に、暗闇から人影が降って来た。
    「ざ、雑渡さん!?」
     土井が驚き、山田はため息をついた。
    「まったくもう。天井裏から何のご用?」
    「学園長が、山田殿に来てもらいたいと。言伝を頼まれました」
    「ちゃんとした用件なら、ちゃんと廊下から来て下さいな」
     山田は土井に筆を渡して、立ち上がる。
    「では私は行ってきますわ、半子さん。曲者さんには、早めにお引き取り頂くように」
    「はい」
     土井が素直に頷く。目の前でそんなやりとりを見せておきながら、山田は雑渡に軽く一礼して出て行った。
    「という訳ですので、お引き取り下さい」
     座ったままの土井が、雑渡を見上げる。
    「つれない人たちだ」
     残念そうに言いながらも、雑渡は立ち去る気配がない。
    「それで、お二人が揃って女人になって、どちらへ行かれるのです?」
    「雑渡さんには関わりのない話ですよ」
    「冷たい事を言う。昼日中ならともかく、夜に着飾った女装でどこへ行くのか、気になるのが普通でしょう」
     忍務ならば土井は口を割らないだろう。が、恐らくそこまでの話ではない。雑渡にここへ行くよう頼んだのは、学園長なのだから。
    「聞いたら、帰って頂けます?」
    「ええ」
     では、と土井は話し出した。
     学園長の知己がやっている料理屋で、酒宴が開かれるという。それ自体は良い。参加者も、特に問題がない者ばかりだ。
     酒が入らなければ、という条件付きで。
    「酒乱の集まりですか」
    「結果的に、そうなってしまっているようです。で、酒が深まると周りに……特に若い女人に絡むので、皆さん困り果てているそうで。店主が学園長に泣きついてきたようです」
    「……土井殿たちが、その酒宴で接待をする、という事ですか?」
    「少し違いますね。酒が深くなった頃に、女性たちと私たちが入れ替わるのです」
     似たようなものだ。
    「山田殿と土井殿が、その役目を?」
    「ええ」
    「他には誰が?」
    「……まあ、女性を除いた教師陣の何人か、と言っておきましょうか」
     男性教師陣が女装して、若い娘たちと入れ替わるという訳だ。
    「客人たちの酔いが覚めるのでは」
    「それはそれで良いでしょう。余興ですよ」
     酔いどれたちにお灸を据えるという事か。想像すると強烈すぎて、逆に見てみたい気持ちが湧いてくる。
    「覗きに行ってもいい?」
    「いい訳ないでしょう。まったく、他人事だと思って」
     軽く睨む土井の側に、雑渡はしゃがみ込んだ。そして、彼の手にある紅がついたままの筆を取る。
    「雑渡さん?」
     怪訝な顔の土井に、雑渡は笑いかけた。
    「私に紅を引かせてもらえない?」
    「は?」
     土井はあからさまに嫌な顔をした。
    「そんなに嫌ですか」
    「嫌ですよ」
    「こう見えても器用ですよ」
    「でしょうね。でも、お断りします」
    「どうして」
     土井はじろりと、雑渡を睨む。どこか、拗ねたような顔で。
    「あなた好みの化粧をした私を、他の男の元へ送るのですか?」
    「うん……それは嫌だね」
     雑渡は筆をくるりと回して、土井へ渡す。
     筆を受け取った土井は、そのまま大雑把に紅を引いた。
    「もっと丁寧にやらないと、伝子さんに怒られるのでは?」
    「どうせ怒られますから、いいんです」
    「女装は不得手ですか」
     土井は変装が得意だ。姿形を変える方向ではなく、その場に馴染むのが上手い。であるのに、女装だけは例外と見える。
    「……まあ、そうですね」
     含みのある言い方だ。しかし、今はそこを追求する時間はなさそうだ。
    「半子さん、もう行きますよ」
    「はーい」
     返事をしながら、土井が立ち上がる。
    「雑渡さんも、もうお帰りですよね」
    「ええ。送りましょうか?」
    「やめておいた方がいいかと。下手をしたら、雑渡さんも女装に巻き込まれますよ」 
    「それはそれで、楽しい事になりそうだ」
     全員の酔いを覚ませる自信がある、と言えば、土井は呆れた顔をする。
    「物好きな。そもそも、雑渡さんは女装の経験はあるんですか?」
    「前に一度、殿に命じられて。しかし、それきりですな。残念ながら、お気に召さなかったらしい。今度、お見せしましょうか」
    「結構です」
     土井はきっぱりと断る。残念だなと軽口で返そうとしたが、土井が言葉を続ける。
    「私は今の、普段のあなたが好きなので」
     紅で赤く染まった唇が、柔らかく、艶めかしく弧を描く。その微笑みが意図してできれば、女装が下手などと言われないだろうに。そう思ったが、もちろん、口には出さなかった。
    「ちょっと、半子さーん?」
     なかなか出てこない土井に焦れたのか、山田の声が飛んで来る。
    「すみません、曲者の方がなかなかお帰りになってくれないんです!」
     土井の言葉に、雑渡は「やれやれ」と立ち上がる。
    「では曲者は退散致します」
    「ええ。それでは」
     立ち去る土井の姿は、どうにか女に見えなくもない、というものだ。あれはあれで興味深い。
     しかし雑渡としては、土井と同じ気持ちだ。
     機会があれば、伝えるとしよう。
     連れ立って歩く二人の背中を見送りながら、雑渡は小さく微笑んだ。
     私も普段のあなたが好きだよ。
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    くるしま

    DONE前回のキャプションでリクエスト募集した所、リクエスト頂けたので書きました!ありがとうございます!

    リク内容「きり丸くんが作ってくれたおにぎり🍙(イナゴ&バッタ入り)を食べる土井先生を目撃した組頭」を雑土で書きました。
    条件はクリアしたつもりですが、想定と違っていたら申し訳ない…!
    スピード勝負で書いたので、色々荒いですが楽しんで頂ければ幸いですー。

    あと、土先生が虫食べてるのでご注意下さい。
    短い雑土の練習02 土井半助は、一人で山道を歩いていた。軽い身のこなしで動く彼は、見慣れた忍び装束ではなく私服だ。肩に大きめの籠を引っ掛けて、あちこち立ち止まりながら、ゆっくりと進んでいく。
     時折しゃがんでキノコを取り、籠に放り込む。何度かそうした後、土井は口を開いた。
    「さて。そろそろ飯にするか」
     独り言にしては大きい声で言ってから、土井は適当な木陰に腰を下ろす。そして、正面の木に向かって呼びかけた。
    「よければ、一緒にどうですか?」
     応えたのは、笑いを含んだ低い声だった。
    「気付いていたなら、もっと早く声を掛けてくれてもいいでしょうに」
    「そのままお返ししますよ、雑渡さん。黙って着いてくるから、何事かと思いました」
     大木の陰から現れた雑渡は、こちらも忍び装束ではなかった。大柄な身体をうまいこと隠して、土井の後を付けていたのだ。
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