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    くるしま

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    くるしま

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    前回のキャプションでリクエスト募集した所、リクエスト頂けたので書きました!ありがとうございます!

    リク内容「きり丸くんが作ってくれたおにぎり🍙(イナゴ&バッタ入り)を食べる土井先生を目撃した組頭」を雑土で書きました。
    条件はクリアしたつもりですが、想定と違っていたら申し訳ない…!
    スピード勝負で書いたので、色々荒いですが楽しんで頂ければ幸いですー。

    あと、土先生が虫食べてるのでご注意下さい。

    短い雑土の練習02 土井半助は、一人で山道を歩いていた。軽い身のこなしで動く彼は、見慣れた忍び装束ではなく私服だ。肩に大きめの籠を引っ掛けて、あちこち立ち止まりながら、ゆっくりと進んでいく。
     時折しゃがんでキノコを取り、籠に放り込む。何度かそうした後、土井は口を開いた。
    「さて。そろそろ飯にするか」
     独り言にしては大きい声で言ってから、土井は適当な木陰に腰を下ろす。そして、正面の木に向かって呼びかけた。
    「よければ、一緒にどうですか?」
     応えたのは、笑いを含んだ低い声だった。
    「気付いていたなら、もっと早く声を掛けてくれてもいいでしょうに」
    「そのままお返ししますよ、雑渡さん。黙って着いてくるから、何事かと思いました」
     大木の陰から現れた雑渡は、こちらも忍び装束ではなかった。大柄な身体をうまいこと隠して、土井の後を付けていたのだ。
    「急に休みになってね。土井殿も休みのはずだと思い出して、会いに来てみたんですよ」
     忍術学園教師の休みなど、あってないようなものだ。であるから、期待はせずに来てみれば、土井は空の籠を肩に引っ掛けて、山に向かって歩いていた。
     休日なのか仕事中なのか。判断がつかず、雑渡はしばらく土井の後をつけていた。仕事なら邪魔しないでおこう、と思っていたのだが、どうやらそうではなさそうだ。
     と思ったので声を掛けようとしたら、土井に先を越された。
    「それにしても、黙って着いてくる事はないでしょうよ」
     苦笑いを浮かべつつも、土井は怒っていない様子だ。
    「そこは申し訳ない。そちらに座ってもいいですか?」
    「どうぞ」
     促され、雑渡は土井の横に腰を下ろす。
    「土井殿は、何をしていたんです?」
    「キノコ取りのアルバイトです」
    「きり丸くんの代わりに?」
    「よくお分かりで」
     ははは、と渇いた笑い声と共に、土井が話し出す。
    「まあいつもの流れなんですが、きり丸がアルバイトを入れすぎましてね。私に回って来たのが、キノコ狩りでした」
    「きり丸くんは何をしているんですか?」
    「今頃は赤ん坊を背負いながら、洗濯をしているはずですよ。乱太郎としんべヱは内職をしています」
    「総出で取り掛かっている訳ですね」
    「いえいえ。本当に総出なら、は組が全員巻き込まれています」
     言いながら、土井は弁当の包みを取り出す。中には小ぶりな握り飯が、いくつか入っていた。
     雑渡も、懐から雑炊の入った竹筒を取り出した。想定とは違ったが、並んで食事というのは悪くない。
    「これはきり丸が用意してくれたんですよ」
     握り飯を手にしながら、土井が言う。
    「良いですね」
    「いやいや……これを食べて、もっとアルバイトの手伝いを頑張れって事ですよ。下心が見え見えです」
     文句のような言葉だが、土井の目尻は下がっているし、声も心なしか弾んでいる。可愛らしい事だ。きり丸も、土井も。
     心地よい木陰で、穏やかに過ごす。そのうち土井はアルバイトを手伝いに戻ってしまうのだろうが、この時間もなかなか悪くはない。話題がキノコの見分け方に偏っていても。
     話しながら土井の口元に目をやった雑渡は、「おや?」と目を細めた。半分ほど食べられた握り飯の中に、違和感のある物が見える。
    「土井殿。そのおにぎりから、足のような物が見えるのですが」
    「ああ。イナゴの足ですね」
    「変わった具だ」
    「ええ、まあ……」
     土井が何とも言えない顔をするから、雑渡は続けて尋ねた。
    「お好きなんですか?」
    「ええ。きり丸が」
    「ふむ……。タダだから?」
    「そういう事です」
     土井は頷いて、残りの握り飯を指差す。
    「これもイナゴで、こっちはバッタ入りです」
     雑渡とて、虫食に引く柔な神経はしていない。しかし中から虫が出てくる握り飯が、食欲をそそるとは思えなかった。
    「どうして中に入れたんです」
    「こうすれば、働きながらでも一緒に食べられるでしょう……だそうで」
    「なるほど」
     実にきり丸らしい。
    「よろしければ、お一つどうですか?」
    「遠慮します」
     雑炊を啜りながら、雑渡は即答する。
     土井も「でしょうね」という顔をした。
    「きり丸と暮らし始めてから、虫が食事の定番になりました」
    「それはまた、大変だ」
    「そうですねぇ。とはいえ、もう少し成長すれば、もっと効率良く稼げるようになるでしょう。そうしたらこの癖も改善されて……」
    「そういう癖は変わりませんよ」
    「……やっぱりそう思います?」
     土井は、がっくりと肩を落とす。
     だが、きり丸に振り回される生活を、土井は受け入れている。困ったと口では言いながらも、どこか楽しそうに。
     そこは、雑渡が入る事のできない領域だ。
     土井は話をしながら、ぱくぱくと握り飯を胃に収めていく。職業柄か、彼は食べるのが早い。
    「早食いは胃に良くないと、伊作くんに言われていませんでしたか?」
    「う……伊作には内職にしておいて下さい」
     雑渡は土井のお願いには答えず、呆れた顔で雑炊を啜る。可愛い恋人のお願いは聞いてやりたいが、どう考えても伊作に怒られた方が良いと思える。
    「習慣なんですよ。どうしても忍者はそうなるでしょう」
     言い訳の様に言いながら、土井は握り飯を食べ尽くした。
    「さて。私はそろそろ行きますが、雑渡さんはどうします?」
     食べ終えた土井が、早速尋ねてくる。食後に、のんびり過ごす気はなさそうだ。
    「私は戻りますよ。土井殿には付き合ってもらえない様だから」
    「申し訳ない。でも今日は、それで正解でしょうね」
     どうして、という雑渡の目線に、土井は笑った。
    「虫の足が歯に詰まった男と、デートしたくはないでしょう?」
     揶揄うような笑みを浮かべて、雑渡を見上げる。
     雑渡は黙って、土井の顎を掴んだ。
     土井が驚いている隙に唇を合わせて、舌を捩じ込む。抵抗しようとする土井の頭を、強い力で固定する。
     雑渡の舌が、土井の口腔内を動いた。何かを探す様に、ゆっくりと、順番に歯列をなぞる。
     土井が抵抗を諦めた頃に、ようやく雑渡は土井を離した。
    「何もないようですよ」
    「あ、あんたねぇ……!」
    「あれで引くような箱入りだと思われたら困ります」
     雑渡が唇を釣り上げる。土井は赤い顔を隠す様に、雑渡から目線を外した。そのまま土井は乱暴に立ち上がる。雑渡も続いた。
    「……私だって、雑渡さんといたいとは、思っていますよ」
     土井は雑渡に目を向けないまま、ぼそりと呟いた。
    「土井殿が忙しいのはわかっているよ」
    「組頭ほどではありませんけどね」
    「それに土井先生は人気者だから、予約も大変だ」
    「前もって言って下されば、空けますよ。特別に」
    「では次は、ちゃんと予約を入れるとしよう」
     土井はようやく雑渡を見る。顔色はもう元に戻っている。残念だ。
    「そうして下さい」
     土井は籠を手に持った。まだ籠には余裕があるから、もう少し回るのだろう。
    「ではまた、土井殿。私はこれで」
     背を向けて歩き出そうとした雑渡を、
    「雑渡さん」
     土井の声が引き止める。振り返ると、土井は顔だけをこちらに向けていた。
    「来てくれて……会えて、嬉しかったですよ。続きは、また今度」
     言い終えると、土井はさっさと歩き出す。急いでいるのか、照れているのか。
     素早い動きに、返答をしそびれた。
     追いかけてやろうか。瞬間的に湧いた衝動を、すぐに抑える。捕まえるのは簡単だが、捕まえたらきっと、さっきの続きをしたくなる。そうしたら、今度こそ土井は怒るし、次の約束も取り付けられないかもしれない。
    「また今度、か」
     未練を乗せた呟きを残して、雑渡は踵を返した。
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    くるしま

    DONE前回のキャプションでリクエスト募集した所、リクエスト頂けたので書きました!ありがとうございます!

    リク内容「きり丸くんが作ってくれたおにぎり🍙(イナゴ&バッタ入り)を食べる土井先生を目撃した組頭」を雑土で書きました。
    条件はクリアしたつもりですが、想定と違っていたら申し訳ない…!
    スピード勝負で書いたので、色々荒いですが楽しんで頂ければ幸いですー。

    あと、土先生が虫食べてるのでご注意下さい。
    短い雑土の練習02 土井半助は、一人で山道を歩いていた。軽い身のこなしで動く彼は、見慣れた忍び装束ではなく私服だ。肩に大きめの籠を引っ掛けて、あちこち立ち止まりながら、ゆっくりと進んでいく。
     時折しゃがんでキノコを取り、籠に放り込む。何度かそうした後、土井は口を開いた。
    「さて。そろそろ飯にするか」
     独り言にしては大きい声で言ってから、土井は適当な木陰に腰を下ろす。そして、正面の木に向かって呼びかけた。
    「よければ、一緒にどうですか?」
     応えたのは、笑いを含んだ低い声だった。
    「気付いていたなら、もっと早く声を掛けてくれてもいいでしょうに」
    「そのままお返ししますよ、雑渡さん。黙って着いてくるから、何事かと思いました」
     大木の陰から現れた雑渡は、こちらも忍び装束ではなかった。大柄な身体をうまいこと隠して、土井の後を付けていたのだ。
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    くるしま

    PROGRESS原作雑土13回目!最終回!終わりましたーーー!!!
    長々と2ヶ月も続いた連載もどきを読んで頂き、本当にありがとうございました!!
    途中全部消してなかった事にしようとした時も、スタンプ等で反応下さった方々のおかげで続けられました!

    今回も長めですが、半分くらいはエピローグみたいなものです。
    感想等頂けると喜びます。
    加筆訂正修正構成組み直しをした完全版は…夏辺りには何とかなるといいな…!
    原作雑土で連載してみる13 あまりにも意外な光景だった。
    「は?」
     思わず口から漏れた呟きに、土井が不審そうな顔をする。彼は尊奈門にしっかりと腕を掴まれており、無理に連れて来られたのは明らかだ。頭が痛くなってきた。
     尊奈門は雑渡と土井の反応を気にもせず、
    「それでは、私は任務に戻ります。夕方前には戻りますので!」
     ぱっと土井から腕を離し、入って来たのと同じくらいの勢いで行ってしまう。
     賑やかな気配が消えると、後には状況をよく飲み込めていない男が二人残された。
    「土井殿、何故ここに?」
    「……それを聞きたいのは、私なのですが」
     尊奈門に無理矢理連れて来られた不機嫌を隠しもせず、それでも土井は事情を話し始めた。
     彼は雑渡たちと同じく、この辺りでドクタケの事情を調べに来ていた。単身で。
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    炎と息吹―200X年 8月XX日 
    とても暑い日だった。オレはたまたま行きあった患者を治療し、病院から帰るところだった。

    ***

    「では、また後日伺いますので」

    一人は一礼して病室を出る。踏みしめるリノリウムの床はひんやりとした空気を抱えており、外のじりじりとした熱射もここまでは届かない。夏の長い日がようやく傾きだし、まだ暑さが残っているだろうビル街を歩くと思うと憂鬱であったが、目の前で倒れた急病人を助けられたことで一人の心は風が通り抜けるようにすっきりとしていた。

    N県からふたつほど県境を越えたところにあるこの都市に来たのは、以前手当をした患者の経過を見るためであった。その用事を終えたときはまだ昼前であったが、帰路に着こうと大通りに出たところで急病人に行きあったのだった。
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