神に捕らえられた蜘蛛「なあ巻ちゃん、『神』は人を平等に愛していると信じて疑わない人間は、とても傲慢だと思わんかね」
最初、巻島裕介は東堂尽八が何を言っているのか分からなかった。
とあるマンションの高層階の一室、それが二人の家だった。お互いプロとして、はたまた実業家として世界を飛び回っているのでここに帰る日は少ない。今日はそんな二人が揃って家に居る数少ない日のひとつだった。
「……なんショ、突然」
突拍子もない東堂の問いに、読んでいた本から目を離した巻島は、質の良いソファの隣に座る男に恐る恐る言葉を返す。真面目そうに聞こえたその言葉は、なにかの比喩だろうか。そう思い思考をめぐらすが巻島にはさっぱり検討がつかなかった。そんな巻島に東堂はにこりと笑うと話を続けた。
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