Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    Layla_utsusemi

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 38

    Layla_utsusemi

    ☆quiet follow

    一次創作【空蝉日記】のショートストーリー。紅花ちゃんを喋らせようと思ったんだけど、予想以上に古い少女漫画みたいになった。

    【空蝉日記 短編】風紀の乱れは心の乱れ「っしゃあギリセーフ!!」

    「いえ、アウトよ。」

    颯爽と校門を駆けていく金髪に冷たく言い放ったのは、風紀委員の「白鳥 紅花」。朝の見回りの為、他の生徒よりも早く学校で待つ彼女は、今日も風紀チェックの仕事を全うしていた。

    「はぁ!?んだよ、登校時間は過ぎてねぇだろうが。」

    「うん、遅刻ではない……けど、目に見えて分かりやすい違反が多すぎるのよ。」

    彼──「望月 英真」と向かい合い、両耳に飾られたピアス、緩んだネクタイ、開けたシャツから覗かせるネックレス……それら数多の違反箇所に視線をやると、当の英真は『げっ……。』といったような苦い顔を浮かべた。

    「明日こそはちゃんとピアス外しなさいって言ったのにーっ!」

    「いいだろ別に、先輩だってやってんじゃん。」

    先輩……というのは、とある二年の不良生徒のことである。彼もまた日頃、紅花による風紀チェックのターゲットの一人だった。

    「学年は関係無いし、先輩にだってちゃんと注意してるわよ!それなのにあんたといい、何回言っても制服の乱れ一つ治してこないんだから……!」

    「あーもうハイハイ分かった、そういうお説教はせめて教室入ってからにしてくれよな。てか俺にばっか構ってっけど、他の奴らほったらかしでいいの?」

    「誰のせいであんたに時間取られてると思ってるのよ!」


    一切反省している節のない軽い態度に、鋭いツッコミを入れた紅花。だが、"俺にばっか構ってる"という発言には内心ドキッとした。

    自分ではそのつもりは無かったが、確かに、良くも悪くも……いや大方悪い意味でだが、こうして事細かに注意の言葉を浴びせる日頃の相手は圧倒的に英真だった。

    だが、それも仕様がない。だって実際、注意されるべき点が多すぎるのだから。

    彼の素行が悪いだけ。だから必然的に私の仕事が増えているだけ。別に、わざと彼に突っ張っている訳では無い。他意は無い。断じて無い。

    「じゃあせめて、授業中はピアス外して、ネクタイもちゃんと締めて!」

    「は?やだよめんどくせー。」

    「んもー!別に数分もかからないでしょうが!」


    「またやってるの?紅花ちゃんも飽きないね〜。」


    ──突如、二人の間に新たな声が割り込んだ。暗い赤髪を後ろで軽く結んだ男子生徒……「静 千尋」だった。

    彼は校則違反こそ無いものの、口達者で常に英真の肩を持っている。大人しそうな見た目の割に、食えない相手だ……まぁ、そうでなければクラス一番のチャラ男と仲良くなんて出来ないだろう。

    「飽きないのは英真の方よ。も〜、千尋からも何か言ってよ。」

    「ん〜、そうだな……そのネックレス似合ってるね?新しく買ったの?」

    「お!よく気付いたな!そうそう、前の誕生日に彼女から貰ってさぁ。」

    「そこじゃないってば!」

    わざとらしく口に手を当てて英真の姿を凝視したかと思いきや、出てきたのは相変わらず肯定の言葉だった。

    そんな千尋と、彼に甘やかされている英真に声を上げた……が、その声の大きさとは裏腹に、心は一瞬チクリとした痛みを覚えた。

    彼女……あぁそうか、最近また新しい女の子と付き合いだしたと言っていた。恋愛自体は構わないが、コロコロと相手を変え、時には涼しげな顔で浮気にも及ぶ彼には辟易としていた。


    ……そんな彼を、心の底から嫌悪出来ない自分にも、呆れるばかりだ。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator