夜明け 目を覚ました時、視界に入ったのは記憶の最後にある埠頭の空でも、見慣れた自分の部屋の天井でもなく知らない場所の知らない天井だったけれど消毒液のような独特の匂いで気づいた。
「びょう、いん…か」
思ったほど声が出ず呟く程度になったが、言葉を発した直後、左手を一瞬だけキュッと弱く握る感覚がしてそちらを見るとベットに頭を預けて眠りそうだったのか崩れた前髪に、今にも涙が溢れ出しそうな潤んだ瞳で俺を見つめるエマと、その隣で丸椅子に腰を掛け少し驚いた顔でこちらを見るマイキーが居た。
「にぃ…」
掠れた弱々しい声で呼ばれ、大きな瞳の容量を超えた涙がついにエマの頬を濡らす。
「ニィ!!!」
次は先程よりハッキリ大きな声をあげ、ガバッと両手を広げて俺の腰の辺りに飛びついてきた。
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