AIが書いた福乱小説乱歩はいつもより上機嫌で探偵社に出社してきた。
「おはよう、敦くん。今日もいい天気だね」
と、挨拶もしっかりとしている。
「あ……はい、そうですね」
と、戸惑いながら返事をした敦だったが、乱歩の様子がおかしいことにすぐに気がついた。
普段なら机上に山積みになっている駄菓子の一つも手に取っているはずなのに今日は手にも持っていない。いつもなら常にくわえている棒付き飴すらもないらしい。
「ええと……何か嬉しいことでもあったんですか?それとも、体調でも悪いのですか?」
「ふふふ……知りたい?」
と、乱歩がもったいぶった様子で聞いてくるので、敦は戸惑いながら頷いた。すると乱歩はとんでもないことを言い出した。
「実はね……昨日の晩から今朝にかけて、僕は福沢さんと一晩中一緒にいたのさ!」
と、乱歩が言った瞬間。探偵社の時間が一瞬止まった。いや、実際には数秒程度だったのだろうが、体感的には数分にも感じられた沈黙の後、
「「「えぇーーー!!」」」
と、探偵社に絶叫が響き渡った。
「え、乱歩さんと福沢さんって……そんな仲だったの!?」
と、思わず身を乗り出すように言ったのは谷崎潤一郎だ。
「いやいや、そんなはずないでしょう!」
と、慌てて否定したのは敦だった。谷崎兄妹は顔を見合わせると不思議そうに首を傾げた。そして二人同時に口を開いた。
「だって今朝社長からもらったこの手紙……」
と、乱歩が懐から手紙を取り出した。
「『乱歩さんと一晩を過ごしました』って、書いてあるけど……?」
と、谷崎が続けた。
「はぁあ?」
敦は思わず変な声を上げてしまった。そんなはずはない……と思いつつも、乱歩の持っている手紙を覗きこんだ。そこには確かに乱歩の言う通りの文言がしたためられていた。なるほど……これは確かに社長の字だ。何故こんなことになったのか……と敦が混乱していると、事情を知っているらしい与謝野晶子がため息をつきながら言った。
「まぁ……つまりそういうことだよ」
と、意味深な表情で言う与謝野に、谷崎兄妹は一層困惑した様子で言った。
「一体……どういうことなんですか?」
「妾もよくわからないけどねぇ……昨日乱歩さんが福沢さんに、『一緒に一晩過ごそうね』って声をかけたら福沢さんが了承したらしいんだよ」
「え?一体何故そんな誘いを?乱歩さんは社長のことが好きなんですか?」
と、敦が尋ねると与謝野は呆れた様子で答えた。
「そんな訳ないだろう?乱歩さんが福沢さんを好きなんじゃなくて、福沢さんが乱歩さんのことを好きだからだろう?」
「えぇ!?」と敦は素っ頓狂な声を上げた。谷崎兄妹も目を見開いている。しかし与謝野は平然と続けた。
「昨日の夜、二人してどこかに出かけて行ったらしいからね。何もなかったと考える方が不自然だろう」
と、言ったところで事務所の扉が開いた。入ってきたのは話題の中心人物・福沢諭吉その人だった。
「おはようございます」
と、乱歩が挨拶をした。そして乱歩はそのまま福沢の方に駆け寄って行った。
「おはよう!福沢さん!昨晩は楽しかったね!」
と、弾んだ声で言うと、乱歩はそのまま福沢に抱きついた。そこに谷崎潤一郎が駆け寄ると尋ねた。
「あの……社長?昨日の夜は一体何があったんですか?」
と、少し緊張した様子で尋ねると、福沢は少し考えた後で谷崎兄妹に答えた。
「いや……昨晩、乱歩さんから一緒に夜を過ごそうと誘われたのだが」
「あぁ、それで……」
と谷崎が言うと、福沢は頷いて続けた。
「少し疲れている様子だったのでな。乱歩さんの体調を気遣ったつもりだったのだが……まさかそういう意味だったとは」
と、少し困惑した様子で言う福沢に対して敦が言った。
「つまり……社長は手紙に『体調を気遣って』って書いたつもりだったんですね」
「そうだったのか……」
と、福沢が納得した様子で頷いた。与謝野は呆れたように言った。
「そんな回りくどいことしなくても『体調を気遣え』って書けばよかったのに」
「いや……しかし乱歩さんに余計な気遣いをさせたくなかったのだ」
そんな社長に対して乱歩が言った。
「ふふ……優しいね、福沢さんは」
という乱歩の顔は嬉しそうに輝いていた。その様子を見ていた国木田独歩が呟いた。
「そうか……そういうことだったのか……」
「どうかしたのかい、国木田?」
と、与謝野が尋ねると国木田は深く頷きながら言った。
「いや、実は今さっき依頼人が来た時に『昨晩はお楽しみだったのでしょうね』と言われたのですよ」
「え……?」
と敦が言うと、谷崎潤一郎も頷いた。
「妾も同じです。『昨晩はおたのしみでしたね』って言われました」
「それって……もしかして僕らの誤解が、依頼人にまで伝わったってことですか?」
と、敦が言うと与謝野は苦笑しながら言った。
「そうみたいだね……」
すると乱歩は福沢に尋ねた。
「ちなみにさ、福沢さん。僕の手紙の意味分かってた?」
「……いや」
と少し困った風に福沢は答えた。そこで国木田は確信をもったように言った。
「やはりね……社長は『体調を気遣え』という意味で手紙を書いたのに、乱歩さんは『福沢さんは僕のことが好きだから』という意味で受け取ったんだな」
「えぇ!?でも、社長は手紙に『体調を気遣え』って書いたんですよね?それに乱歩さんだって別に風邪とかひいてる様子もないですし……」
と、敦が言うと与謝野が答えた。
「きっと二人とも恋愛に関しては素人なんだろうねぇ……きちんと言葉を選ばずに曖昧にしか伝えなかったもんだから思いが上手く通じてなかったんだろうさ」
それから探偵社の面々は乱歩の誤解をとくべく奮闘した。敦が事情を説明すると乱歩は納得した様子で、
「なんだ……そういうことだったのか」
と、言った。そして福沢の方に向き直ると笑顔で尋ねた。
「福沢さん、僕のこと好き?」
「……好きだ」
と、少し照れながら答える福沢に対して敦達は冷やかすように言った。
「社長って乱歩さんのどこが好きなんですか?」
「是非聞かせて欲しいです!」
などと楽しそうに言った。すると福沢は少し困ったようにしながらも、
「そうだな……。最初は子供だと思っていたのだが、いつの間にか大人になっていて……それでもどこか子供の部分を残していて」
と、少し照れながら答えた。敦も谷崎も与謝野も楽しそうに笑っていたが乱歩は不満そうに呟いた。
「福沢さん、ちゃんと答えてよ!」
「む……?」
と不思議そうな顔をする福沢に対して敦が言った。「あのですね社長、『どこが好きか』じゃなくて『どこが気に入っているか』という風に言い換えてみてはどうですか?」
「そうだねぇ……その方が答えやすいんじゃないかい?」
と与謝野も付け加えた。福沢は少し考えた後で敦達に向かって言った。
「そうだな……。では、改めて聞かせてもらうが乱歩さんは私のどこが気に入っているんだ?ちなみに私は乱歩さんの頭脳を高く評価している」
すると乱歩は即答した。
「そんなの決まっているじゃないか!僕が福沢さんを気に入ってる理由はね、僕にちゃんと『僕の頭脳は素晴らしいんだ』って教えてくれるところだよ!」
と、自信満々に言った。福沢は少し面食らった様子だったが、やがて笑いながら言った。
「そうか……それはよかった」
「うん!」
そんな二人の様子を見て敦達は満足そうに頷いた。そして最後に与謝野が言った。
「まぁ、とりあえず収まるところに収まったってことかねぇ」
すると探偵社のドアが再び開き、与謝野の言葉を裏付けるかのように福沢と乱歩の二人が揃って入ってきた。その様子を見て敦達は笑いながら言った。
「そうですね」
探偵社での平和な一日が今日も始まるのだった。
■終わり■
=====あとがき=====
というわけで、『武装探偵社の社長と名探偵』を読んでいただきありがとうございます。今回は「乱歩さんの言動に振り回される福沢さん」と「それを微笑ましく見守る(?)社員の皆さん」というリクエストでした!いかがでしたでしょうか?楽しんでいただけたなら嬉しいです!そしてまだ読んでいない方は是非『武装探偵社の社長と名探偵』を読んでみてください。それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました!