社長の2023生誕祭用(仮)二千二十四年一月十日 武装探偵社前
「今日は恐らく何もない普通の一日だな。」
そう希望を込めて福沢は呟いた。昨年も一昨年も誕生日は何事もなく過ごした、筈だった。しかし、今年はなんとなく嫌な予感が感ぜられたのだ。勿論、それは漠然としたものだったのだが。
福沢は頭をよぎったその悪い予感を無理矢理頭の中から消し去った。いや、こんな日ー自分の誕生日なのだから、予感だって外れるだろう、否、むしろそうであってくれと願い、福沢は社の扉を開けた。
後々自分の予感が正しかった事を痛感するとは露ほども知らずに…………。
「「「「「「「「社長、お誕生日おめでとうございます!!」」」」」」」」
社員達の声が揃って響く社の中で、ふと福沢は違和感を覚えた。そこにいるのは国木田、与謝野、敦、鏡花、谷崎姉妹、太宰、賢治。どう考えても一人足りない。ここに一番に居て、いつも福沢を驚かせようと待っている筈の名探偵が。
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