ずっと側に「仕方ありませんね」
そう言う巳波の声は悠が想像していたよりも平坦だった。もっと嫌そうな声を出すかと思っていたのに。部屋にはセミダブルのベッド。男二人で寝るにはやや窮屈だろうと想像できた。
この日は二人だけで遠方での仕事だった。新幹線で今日中に帰る予定だったのに、悪天候により新幹線が止まってしまったのだ。スタッフが急遽宿を取ってくれたけれどセミダブルの部屋しか取れなかったのだと謝られた。
巳波はイヤーピースを着けて寝るんだと悠は知った。こんなことがなければ気が付かなかったかもしれない。今までも移動中などで仮眠を取るタイミングで見ていたかもしれないのに。気まずさを感じる。自分たちは同衾するような関係性じゃない。
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