Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    SakuraK_0414

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 19

    SakuraK_0414

    ☆quiet follow

    譲テツアンソロの冒頭部分だけどちょっとテツセンセがおセンチだしKセンセがめっちゃくちゃお節介で何!????!?!?って感じだけど譲介君のことに関してバチバチに怒ってるの見たら逆に一級の医者であるテツセンセの話がこれから譲介君の役に立つかもと思って連絡先渡すくらいはするかもしれん……とか勝手に思ってる。タイトル通りのかの有名な曲をイメージしつつ書いてます。

    #譲テツ

    シングル・アゲイン ナビを兼ねるスマートフォンを無人の助手席に放ったところでふと口をついて歌が出た。
     和久井譲介がアメリカに旅立って4年ほど経ったある夜だった。
     嫌に広く感じる静まり返ったハマーの中、真田徹郎の呟くような歌は取り残されたような響きで、他に聞く者もいない。
     感傷的なその歌詞に舌打ちを一つしてシートに深く沈みこむ。夜の小さな高速パーキングエリアは静まり返り、少し遠いところで白い蛍光灯がまたたきしていた。
     思い入れのある歌でもなかった。ドクターTETSUは運転中にラジオのひとつも流さないような男だったが、この歌はひと世代ほど昔にやたらと流行って当時まだ20代だった彼も立ち寄る先々で嫌というほど耳にした。流行りも変わり一時期は聞かなくなったものの、最近のシティポップブームに押されて再び脚光を浴びているというのだから世の中は分からない。ついでに、そのブームを作っているのが当時を知らない若者たちだというからもっと分らない。30年も前の、それも未練がましい曲がそんなに良く聞こえるのか。
     分からないものだ、と真田徹郎はため息をつく。
    (……分からねぇなぁ)
     心底分からなかった。
    (なァ、譲介)
     己自身が。
    (結局あのころお前は俺をどう思ってたんだ?)
     結局いま自分は譲介をどう思っているのか?
     白々しく明るいスマートフォンは通話履歴のページのままで、一番上には「神代一人」の名前とつい数分前の時刻が表示されている。通話の内容はごく最近の譲介の様子についてだった。
     かつてドクターTETSUと3年だけ一緒に住んでいたこどもは渡米したいま、もはや同期ともいうべき黒須一也や宮坂詩織はもちろん、師のひとりである神代一人にも定期的に連絡をしているようで、この神代が律儀にメールや電話でドクターTETSUにもそれを報告するのだ。あの子の前から黙って去っていったことの罪滅ぼしにはならないがそれくらいの責任は取れ、と言わんばかりの当代Kは実際こまめなもので、譲介のアメリカ行きが決定した時も妙な時間にメールをしてきた。返信を打つことはしなかったが。
     ただ、あのころの生活を過去にできると、妙な安心があった。
     そもそも自分が子供を拾って面倒を見るなど向いていなかった。その上、相性も良くなかった。
     寄る辺を持てなかったこどもに、寄る辺を手放したおとな。
     もたれかかりたくないこどもに、もたれかかることを忘れたおとな。
     途方もない渇きを持て余したこどもに、途方もない渇きを飲み干したおとな。
     救われない組み合わせだった。
    (今思えば、だが)
     主にこどもの方が。
     その上あのこどもは、和久井譲介は、TETSUに言いようもない感情を向けていた。彼は何も言いはしなかったし、点滴を打った時にほんの少しわずかに長く彼の腕に触れる程度だったが、時折黙って向けられる熱っぽいまなざしは言葉よりもっとずっと雄弁だった。
     あの聡いこどものこと、その狙い定めるような視線の意味を海千山千の闇医者相手に誤魔化せるとは思っていなかっただろう。隠しもしなかったのは若さゆえか。あの作り笑いの上手なこどもはそんなもので誤魔化すようなことすらしなかった。
    (……分からねぇ)
     結局、譲介は神代に預けた。
     見ていられない放っておけないと思って連れてきたのに結局こどもは救われないままで、そのことに対する焦燥をTETSU自身が持て余していた。あの3年間の生活が正しかったのか、今はそれすらもうよく分からなかった。
     それから離れて暮らすようになってほとぼりも冷めた頃、神代のもとに留まる譲介と何度か顔を合わせた。寄る辺を得てもたれかかることを己に許し渇きを癒さんとするいつかのこどもの最後の憂いを絶つためだった。結果として神代の言うようにしているのは多少不本意だったがTETSU自身が望んで行う彼なりの「責任」の取り方だった。
     そうやってふとした折に出会った譲介がドクターTETSUに向ける眼差しは、あの頃向けていた熱っぽく……あるいはいっそ恨みがましいようなそれとは違っていて、ホッとしたような、それでいて肩透かしを食らったような心地だった。
     その譲介に恋人ができたらしいと聞いたのは彼が渡米して2年ほどたった頃だった。あちらで友人ができて朝倉の助けもあってなんとか上手くやっていると小耳に挟んでいた、その延長線上の噂。参加している児童保護施設でのボランティア活動(これもアメリカで医師免許を取るために必須だと言うから大変だ)で一緒だった相手だとか、なんとか。まあ10年一緒だった想い人に何のアプローチもできていなかった一也からさらに神代を経由した話なので信憑性には疑問も残るが。
     少し前にその恋人と別れて初めて深酒をした譲介が退勤後の一也に電話をかけてきたが今はすっかりいつも通りでまあ別段問題なさそうで、真面目で優秀だと朝倉が褒めていたと。
     そんな話を。
     ついさっき、神代は電話で話したのだ。ほんの世間話のように。
    (恋人が作れるようになったか)
     真田徹朗は明滅する蛍光灯をぼんやりと眺める。
    (それで普通にきちんとフラれて、一也なんかに愚痴れるようになったのかよ)
     あの頃は先代Kのクローンを目の敵にしていたのに。
    (一也にまで電話をして、それで……)
     真田徹郎の電話は鳴らない。譲介が渡米したすぐ後に神代から彼の連絡先を渡された。その際、譲介にもまた元保護者の連絡先を渡したと、そんなことを聞かされた。勝手なことを、と苛立ちながらも真田徹郎は結局「お節介め」と忌々しげに言うに留まった。
     それから4年、真田徹郎のスマートフォンに譲介の名前が躍り出たことは1度もない。
     ため息をついてダッシュボードから茶封筒を取り出す。いまだにダッシュボードの中に置かれて、ふと思い出しては取り出して何度も読み返したそれ。読み飽きたはずのそれを視線で何度もなぞる。
     ただ1文の約束を。
     何度も、何度も。
    (……4年も前の約束なんて忘れてるだろうさ、アイツは)
     別に忘れていて良い。ドクターTETSUは元が騙し騙しで生きていたのだ。かつての養い子兼弟子が本当に自分の死に水を取ろうが取るまいが関係はない。ただドクターTETSUが彼自身の意思として、和久井譲介に恥じないようにできる限り生きると誓った、その誓いのよすがとしての約束だ。
     だがいま無性に、その約束が確かなことをほかならぬ和久井譲介自身に証明してほしかった。

    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖😭😭😭👏👏👏☕☕☕😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭💖💲🇪✝⛎📈🅰ℹ😭🙏❤😭🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    SakuraK_0414

    DOODLE365日いつでもバニーを書いてよろしい、と神は仰せになった。なってない。でも今年はウサギ年だし9月はお月見だしそうじゃなくてもバニーを書いて良い。ということで、以前書いたバニーの譲テツ也宮添えの続きです。バニー衣装着るのが恥ずかしくてへにゃへにゃになってる自分の魅力に無自覚な闇医者。
    ちなみにバニースーツ餅つき、というのも二次イラスト的には可愛らしさと色気とポップさがあって良いなと思う。
    You're Bunny.「いや……これは、キツいだろ」
     さすがに、とドクターTETSUこと真田徹郎は独り言ちてそこらへんに置いていたカーディガンを羽織った。誰も見てないとはいえ、さすがにいたたまれない。特注品のバカみたいに大きな衣装一式が自分の体にぴったり沿うように作られているのもいたたまれない。衣装一式の入っていた箱に同封されたパンフレットの中で凄艶に笑うバニースーツを纏った美青年の姿が目に入って、もっといたたまれなくなる。
    (今より30若ければ、とは思いはしねぇが……)
     海千山千、天下の闇医者ドクターテツは危ない橋を渡りもしたし、死にかけたこともある。人生における大概の苦難と規格外の苦難を大方乗り越え、もう並大抵のことでは動じることも無い。
    1659

    SakuraK_0414

    DOODLE譲→テツで、譲介くんがクエイドに行くぞ!となる話。細かいところはもう色々捏造してます。時間とか季節のこととかめちゃくちゃです。朝倉先生が診療所に来た頃のイメージで、遅れてきた七夕ネタでもあります。
    コンビニ店内でかかってる曲はモー娘。22の「Chu Chu Chu 僕らの未来」、譲介君がこの歌詞僕のことだ…ってなってるのはモー娘。19の「青春Night」です。参考しながら読むと楽しいかもしれない
    青春Nightに僕らの未来「……モー娘の新曲だな」
     コンビニの店内、隣に立つ譲介が、あの和久井譲介が呟いたので黒須一也はぎょっとして彼を見つめた。店内には確かに女子グループアイドルの楽曲が流れているが、こんな難しそうな曲、しかもワンフレーズを聞いただけでそれが分かったのか、と一也はますます目を見開く。
    「……なんだよ」
     じろりと譲介が睨んだ。あのハマー乗りの闇医者そっくりの長い前髪の合間から覗く左目の迫力に気圧されて一也は黙り込む。
    「お前だってモー娘。くらい知ってるだろ、僕らは世代だし、どこ行ったって流れてたし、ラブマシーンとか」
    「あ、いや、その、譲介はアイドルとか興味ない、というか好きじゃないと思ってたから」
    「別に興味はないし好きでもないぞ」
    3702

    SakuraK_0414

    DONE譲テツのなんかポエミーな話です。
    譲テツと芸術と27階時代からアメリカ寛解同居ラブラブ時空の話になりました。
    最初のジャズは You’d Be Nice to Come Home Toです。裸婦画はルネサンス期の任意の裸婦画、文学は遠藤周作「海と毒薬」のイメージです。引き取ったなりの責任として旅行とか連れて行ってたテツセンセの話です。
    ムーサ、あるいは裸のマハ。副題:神の不在と実在について。ムーサ:音楽、韻律の女神。ブルーノート東京にて。

     いつだったかの夏。
     学校から帰ってくるなり来週の診察は譲介、お前も付いて来い、と言われた。家を出るのは夕方からだと聞かされてちょっと安心したものの熱帯夜の続く8月の上旬のこと、内心うんざりしたが拒否権は無かった。この間の期末テストで学年1位だったご褒美だ、と言われたからだ。
     成績トップのご褒美が患者の診察についていく権利って何だよ、と思いはしたがこのドクターTETSUという様々な武勇伝を引っ提げた色々とんでもない身元引受人が医学を教えるという約束を反故にしないでいてくれたのが嬉しかったのもある。
     当日の夕方の移動中ドクターTETSUは僕に患者の状態などを説明してくれたが、内心落ち着かず、どこに連れていかれるのか気になって話はあまり聞けていなかった。これを着ていけ、と上から下まで真新しい服一式を渡されたからだ。サックスブルーと白のボーダーシャツにネイビーの麻のサマージャケットをメインに、靴は通学に使うのとは違うウィングチップの革靴まで差し出されたのだ。普段は政界・財界に影響力を持つ患者の対応をいつもの制服で対応させるこの人がこんな服を持ってくるなんてよっぽどの患者なのか、と身構えてしまった。多分それは横にいる大人にはバレていたのだけれど、彼は指摘して叱るようなことはしなかった。
    10948

    related works

    recommended works