100日後にくっつくいちじろ66日目
昼に呼び出され、二郎は友人とサッカーをしてきた。
冬休み中に開催されるらしい大会の練習相手だとかで、友人も気合が入っており、思わず二郎も熱が入り夢中でボールを追いかけた。……のはいいが、ドリブル中にスライディングでボールを奪い取ろうとした友人Aの足で思い切り躓き、バランスを崩した。やばい、そう思うと同時に、このまま倒れると大会前の友人を下敷きにして怪我を負わせてしまう、咄嗟にそう判断した二郎は身を捻り、左膝から地面に倒れ込んだ。そして思い切り膝から脛にかけて擦りむいたのだった。
▼
「いててて……」
「ただいま……って、二郎なにしてんだ?」
その場でとりあえずの応急処置をして、練習を続けた後、帰宅した二郎はリビングで綺麗に絆創膏を貼り直していた。そこに帰宅した一郎。ソファーに座っている二郎を覗き込むと、怪我を見てぎょっと驚く。
「うわ、痛そうだな……サッカー?」
「うん、ちょっとミスった」
「貸してみ」
「え」
一郎は荷物を下すと二郎の前にしゃがみ込み、二郎から消毒液と絆創膏を取り上げた。どうやら、やってくれるらしい。膝上まで捲り上げているジャージを持ち上げると、一郎は自分の太腿の上に二郎の足を乗せて手当をはじめた。
「き、汚いから下していいよ」
「大丈夫だって。動くなよ」
「う……」
骨ばった二郎の足に消毒液をかけて、綺麗に絆創膏を貼っていく。真剣な表情でそれをしていた一郎はポツリと呟いた。
「お前、足、細いよな」
「え、筋肉ねえ?」
「いや、筋肉はあるんだけどな。スポーツマンの引き締まった筋肉って感じ」
「褒められてる……と思っておく」
「おう、褒めてる」
どこかくすぐったくて二郎は黙った。ものの数分で全てを終えた一郎は、すっくと立ち上がる。
「今日の風呂当番は代わるから」
「え、いいよ。できるって」
「じゃあお前は洗濯物やってくれるか」
「いや、いいけど……その、ありがと」
「おう、サッカー頑張れよ」
「……兄貴、ちょっと待って」
「ん?……って、うおっ!?」
立ち上がった兄を呼び止めて、二郎はその兄のふくらはぎをガシっと掴んだ。もにもに、と揉んでみる。
「……確かに、兄貴の足の方がガッシリしてる」
「急に掴むなよ……」
「ひょろいって言うから」
「ひょろいとは言ってねえ」
「……いいなあ、兄貴の筋肉。かっけえ」
素直な感想を言って、手を離す。一郎は困ったように「そうか?」と笑いながら、少し上機嫌でキッチンへ向かって行った。
2024.12.28