100日後にくっつくいちじろ82日目
「なあ、この前さ二郎の兄ちゃんのと付き合ってるって言ってた子と会ったんだけどマジ?」
イケブクロのファストフード店でのんべんだらりとくっちゃべっていた二郎と愉快な仲間達。
しかし不意に友人が発したその発言に二郎はジュースをぶっと吹き出した。きたねえ!と友人達が避ける。
「誰がそんなことを…?」
「いや、なんかバイト先のお客さん。ギャルっぽい大学生でB.Bと付き合ってるってデカい声で喋ってて」
「ギャ、ギャル…?女子大生…?」
寝耳に水とはこのこと。二郎はフリーズした。しかし他の友人達は呆れたように言う。
「いや普通に嘘なんじゃね?」
「確かに、一郎さんってそんなベラベラ周りに言いふらす奴、タイプじゃなさそうだし」
「実際どうなん?じろちゃん」
「いや…俺もそんな話聞いたことねえ」
「ほらみろー」
前に連絡を取っていた女の人はギャルではなかったし。そして何より一郎は俺のことが好きなはずだ。二郎は混乱しつつもそう自分に言い聞かせた。
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「ねえ、ギャル女子大生と付き合ってるってホント?」
ぶっと一郎は味噌汁を吹き出した。ウワッと驚きつつティッシュを手渡す三郎。口元を拭くと一郎は顔を上げた。
「ど、どこの誰がそんなことを…?」
「ダチがバイト先で、そう言ってる女の人がいたって言ってた」
「どんな嘘ついてんだ…付き合ってねえよ」
やはり嘘らしい。二郎はホッと胸を撫で下ろす。
そして同時に、こうして本人に確認するまで、ずっとモヤモヤとしていた自分に気づいた。俺のことが好きなんじゃないのかよ、と苛つく気持ちもどこかにあった。
こんな根も葉もない話に翻弄されるなんて。二郎は自身の気持ちとそろそろきちんと向き合うときなのだ。そう感じていた。
2025.1.12