年末ドッキリンピック「俺、人、殺したかも……」
十二月某日、木曜日の二十三時三十六分。呼出音が途切れ、もしもし、どうしたの、なんてのんびりした調子で尋ねてくる男の声を遮って、燈矢は告白した。一瞬、電話口が静かになる。けれど、
「だっ……、て、お父さんが……っ」
燈矢がそう言って堰を切ったように泣き出せば、男は即座に、静かなまま問うた。
『おまえ、今どこ?』
「……っ、ど、どこ? わかんないよぉ」
『分かった、位置情報送って。大丈夫。すぐ行くから』
泣き声を上げながらたどたどしくも、言われた通りに位置情報を送信すると、彼は『十五分で着く』と言った。
「はやくきて……っ」
『すぐ行くから、電話はこのまま――』
繋いだまま、と言いたかったのだろうけれど、燈矢はそこでブチッと切った。スマートフォンの画面には、〝通話終了〟の文字とともに、迫圧紘の名前が表示されている。
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