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    とがせ

    ヴァイネロのオタク

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    ヴァイネロ生存ifの途中まで꜀(.௰. ꜆)꜄꜀(.௰. ꜆)꜄

    #ヴァイネロ
    vignello



    辛うじて互いの存在が認知できるほどの仄暗い廊下の向こうに、密会の相手が待っていた。
    久し振りに逢えた喜びに胸が浮き足立つ。逢いたくて、逢いたくて仕方がなかった。しかし近寄ったことにより視界に捉えた兄の神妙な表情を、無視することはできなかった。
    「兄さん……」
    「……久しぶりだな、ネロ」
    互いに軽く言葉を交わし、ネロはこの場に呼び出したヴァイスの言葉を待つ。今はもう使われていない通路に人が通ることも監視されることもない。それほど重要な話なのだから私情を優先する事は自分自身が許さなかった。
    「お前には伝えるべきだと思った」
    僅かな逢瀬を楽しみたい想いはヴァイスとて同じだったが、許される時間など二人には存在しない。
    「それほど重要な話しなんて……まさか、レストリクター殺害の企てでも?」
    それは半ば冗談であった。いや、冗談になってほしいと願った。しかしヴァイスの口から否定の言葉は出ず、ただ沈黙が流れた。
    「……嘘ですよね?」
    肯定と捉えたネロの胸中は冷えていき、僅かな沈黙にも耐えきれず問い掛ける。縋るような目をヴァイスに向けながら。
    レストリクターはこのディープグラウンドの支配権を握る人物であり、全てのソルジャーの命は彼の手に委ねられている。
    実力ではヴァイスの方がレストリクターを上回っているだろう。しかし、脳に移植されているチップは金縛りのように体を硬直させ動きを制限される。硬直の間に負傷しないとは限らないのだ。
    そして、ネロがなによりも懸念しているものが存在した。反逆を抑止するためにヴァイスのみに植え付けられた致死性ウイルスは、レストリクターからの信号が途絶えれば全身に蔓延し命を奪う。レストリクターの死とは、ヴァイスの死でもあるのだ。
    「ダメです……ダメだよ兄さん……そんなことをしたら兄さんが……!」
    「無策というわけではない。俺も毛頭死ぬつもりなどないのだからな」
    混乱と焦りに支配されつつあるネロの心情を察したヴァイスは、彼の肩に手を起き宥めるような声音で簡潔に説明した。
    「ウイルスを除去する算段がついた」
    協力者はディープグラウンドに配属されて間もない研究員。ここでの経験こそ浅くはあるが実力と頭脳は群を抜いており、賢いが故に自身の立場を弁えていた。ツヴィエートの力は年々強度を増し、そう遠くない未来純白の帝王が反旗を翻すと。レストリクターの統治が崩れれば兵士間の混乱を招くだろう。それだけではない。混乱による殺し合い、限度を超えた実験を強制した研究者達への報復、ディープグラウンドの存在を知っている身として神羅からどのような処遇を受けるのかも目に見える。ならば僅かでも命の保証を求め彼はヴァイスに着いたのだった。
    「他人を信じろと……?兄さんの命を、よく知りもしない研究員なんかに握らせるというんですか?」
    「その日課せられる実験、投薬、改造、戦闘。明日生きている確証などどこにもない今と何が違う?」
    ヴァイスの目を見て、ネロの心臓は激しく波打つ。
    「同じだ。同じなんだネロ。ここに居る限り自由を得ることなどできない」
    その碧眼に一切の曇がなかったのだ。あるのはただ決意と信念。
    誰にも変えさせない確固たる意思を昔から尊敬した。兄の意見を尊重するべきだろう。だが、自分にも譲れない信念というものは存在する。
    「ボクは……兄さんがいれば、それでいいんです」
    どんな悪辣な環境でも、どんな過酷な日々でも、たとえ離れていても、兄が生きているだけで心の支えだった。生きていけた。何かの因果で明日逢えるかもしれない希望を抱いて眠れた。
    「……失う可能性が僅かでもあるのなら自由なんていらない」
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    「……嘘ですよね?」
    肯定と捉えたネロの胸中は冷えていき、僅かな沈黙にも耐えきれず問い掛ける。縋るような目をヴァイスに向けながら。
    レストリクターはこのディープグラウンドの 1525

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    「お前には伝えるべきだと思った」
    僅かな逢瀬を楽しみたい想いはヴァイスとて同じだったが、許される時間など二人には存在しない。
    「それほど重要な話しなんて……まさか、レストリクター殺害の企てでも?」
    それは半ば冗談であった。いや、冗談になってほしいと願った。しかしヴァイスの口から否定の言葉は出ず、ただ沈黙が流れた。
    「……嘘ですよね?」
    肯定と捉えたネロの胸中は冷えていき、僅かな沈黙にも耐えきれず問い掛ける。縋るような目をヴァイスに向けながら。
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