「貴方はきっと世間一般から見れば優しい人という部類なのでしょう」
「……どうだろうな、考えたことも無い」
ネロは差し出された珈琲をローテーブルの上に置き、窓際に座り込むと遠くに見える人々の雑踏を眺めながら一方的に話し出す。
「一か月前の既読スルーから連絡を寄越さなかった、友人でもない男からの突然の呼び出しにも関わらず家にあげ、何も聞かず珈琲を差し出すのはお人好しの域かと。そのうちホームレスが玄関先に住み着きますよ」
「ふ……お人好しだとはよく言われる」
なにか深刻そうな顔をしていると思い家にあげたが、口を開けば普段と変わらない皮肉混じりの言葉に思わず含み笑いが漏れた。
「しかし、そのなにも聞かない姿勢は話を聞いて欲しい人間からしてみたら欠点になるかと」
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