CRYONICS この世界における聖人に因んだ日らしく、世間はお祭り騒ぎだった。光の装飾に巨大な木の飾り、赤い衣装にプレゼント、特別なディナーに甘いケーキ。ボクも兄さんもこうした催しを無邪気に喜ぶ性格ではない。けれど、恋人然としたイベントを逃すのも惜しく思えた。
結局祭りに便乗することを決めて、チキンを詰めた箱を抱えて愛しいひとのもとに向かう。丁寧なラッピングが施されたプレゼントは大きな紙袋の中だ。
大寒波が襲来中らしく、雪が舞っていた。翌朝には積もっているだろうか。雪だるまを並べるなんていうのも懐かしくて少し面白いかもしれない。
施錠された扉を断りなしに開けて、中へ入る。暖房はついておらず、ひんやりとした空気が満ちていた。
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