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    Miruru_sweet

    @Miruru_sweet

    主に固定夢主ちゃんのお話載せます🧵
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    Miruru_sweet

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    Side Story 11
    しろちゃん宅夢主☄️お借りしてます!

    たいせつなこと『こら紫彗、働きすぎだよ』

    「そういう伊織は、独歩が居ないからってサボりすぎ」

    『失礼な。私は外回り担当だからね、仕事はしてるよ!』



    日差しが燦々と降り注ぐ初夏。例年にないほどの猛暑日が続く中、探偵社の騒がしさは鳴りを潜めていた。それもその筈、騒がしさの元凶である太宰治と国木田独歩が遠方の依頼で席を空けているのだ。私の目の前にいる青年は、治が溜め込みまくっていた書類をそっと自分の方に寄せて、一つずつ丁寧に仕上げていく。彼こそが私や治の昔馴染みである友人___柊紫彗だ。
    紫彗は私の言葉に、仕事の手を止めて此方に向き直った。……あ、隈。



    「書類提出、期限ギリギリなの知ってるよ」

    『ちゃんと終わらせるから平気。…ねぇ、今日は外回り行こうよ』



    紫彗は主に事務仕事。仕事量はポートマフィア時代に比べたら格段に減った。紫彗に押し付ける輩も居なくなったし、此処の人たちは皆仕事が早いからね。
    それとは別に、紫彗の隈は濃くなる一方。ただの寝不足、なんだろうけど…その寝不足も毎日続けば精神面にも影響が出る。治はいないし、私が紫彗を見ていてあげないと。



    「明日迄のものは終わったのかい?」

    『絶対に帰ったらやる!だから偶には一緒に仕事しようよ。ほら早く!』



    困ったように眉を下げる紫彗を、半ば無理やり社から引っ張り出す。皆咎めることなく送り出してくれた。賢治は「暑いので気をつけてくださいね!」と商店街で貰ってきたであろう団扇をくれた。助かる!
    とはいえ外は社内の倍は暑かった。日差しが強い。このまま街を巡回するのもありだけど、このままでは溶けてしまう。室内に入らねば。



    『図書館にでも行こうか!』

    「いいけど…それって仕事?」

    『仕事も大事だけど、落ち着いた時間取れないと疲れちゃうでしょ。紫彗は読書好きだし、息抜きに一寸付き合って!』



    紫彗は快く承諾してくれた。紫彗こういう処、私凄い好き。まぁそれを利用する輩がいるのは知っているし、そういう人たちは私や治が片っ端から圧力をかけていたんだけど…紫彗に変わって欲しいとは思わない。暗い世界に足を踏み入れてなお純粋さを持ち併せているのは、本当に優しい心を持っているからだ。



    「伊織はあまり本は読まないんじゃなかった?」

    『まぁ……あ、でもこの本は知ってる。面白いよね』

    「鳴呼、“星の王子さま”か」

    『紫彗が居なかったら一生読むことはなかっただろうなぁ』



    昔紫彗に勧められて読んだ、数少ないお気に入り本の一冊だ。
    それから数度言葉を交わしてから、紫彗が本を手に椅子に座ったのを見て、私も何冊か本を手に取って隣に腰掛ける。一冊は先刻の“星の王子さま”。あとの本は適当に手に取った。或る友人の人生を変えた本がどれなのか、探してみようと思い立ったのだ。答えは分からないし、もう確かめる術もないけど、この本のこの部分好きそうとか、彼だったらこんな小説書くのかなとか。色々考えながら読んでいたら、何時の間にかかなり時間が経っていた。

    しまった。頑張り屋な紫彗を先輩が労ってあげよう!大作戦!!の筈だったのに、私が満喫してしまった。当の本人はというと…読みたかった本がじっくり読めてご満悦そうだ。まぁ良しとしますか!



    『そろそろ出ようか。お昼時だし、何処かに寄ってご飯にしよう』

    「そうだね。伊織は食べたい物はあるかい?」

    『私は何でも。紫彗は何が食べたい?遠慮なく云って!』

    「ボク?うーん……」



    熟考の末、紫彗が前から気になっていたという店に入ることになった。この時間帯かなり混むと思っていたけれど、運のいいことに直ぐに席に通された。きっと紫彗の日頃の行いが良いからだね!
    紫彗がお勧めするだけあって、迚も美味しかったし量もあって大満足!紫彗の好きな紅茶を頼んだら、ぱぁっと花が咲いたような笑顔を見せてくれて暑いのなんて吹っ飛んでいった。



    『それでねぇ………あっ強盗』

    「え!?」

    『警察と社に連絡!一寸行ってくる!!』



    一番窓側の席に座っていたから直ぐに気づけた。向かい側の宝石店に覆面が数人入って行った。完全に強盗だ。さすがはヨコハマ、事件が多いね。困ったものだ。
    紫彗に連絡をお願いして店を飛び出し、一人ずつ気絶させていく。店員さんに怪我はないみたいだけど、硝子を割るための武器を全員が持ってるから、早いとこ何とかしないと。



    「どけ!!」

    『っ!不味い、外に…』



    強盗グループの一人が外に逃げ出した。店の外を通った子連れの女性にスパナを振り上げている。異能を使えば何とか…!!



    「よっ、と…!」

    『紫彗!!』



    紫彗は近接戦もいけるんだったね。銃の扱いが苦手だから前線にはあまり出なかったと云っていたけど、森医師が面倒を見ていたんだし、基礎は叩き込まれてるか。
    一先ず全員を気絶させて、異能で創ったワイヤーで縛っておく。紫彗の元へ向かうと、巻き込まれた親子に声をかけているところだった。



    「君、痛い処はない?」

    『もう大丈夫だよ~』

    「うん…お姉ちゃんたち、有難う……!」

    「お、お姉ちゃん……」



    この子は紫彗のことを女の人だと認識したらしい。まぁ遠目で見れば女の子に見えなくもないけど、よく見たら喉仏もあるし手も骨ばってる。男の人らしい要素はあるんだけど…純粋な子供の言葉はよく刺さる。紫彗は気にしているそれを指摘されたこともあり、一寸ショックを受けてた。



    「有難うございました…!感謝してもしきれません!」

    『いえいえ!彼のお陰なので、お礼はこのお兄さんに仰ってください!』

    「否、ボクは…」

    「本当に有難うございます…!!」



    紫彗が男の人であると伝わるようにして話を通すと、ママさんは子供に「お兄さんかっこよかったね」と云っていた。紫彗は困ったように照れている。確かに可愛らしいかも…なんて、本人には云わないけど。
    警察に身柄を引き渡して、その場を引き継ぐ。店に戻ると、紫彗の功績を称えてバニラアイスを注文する。



    「アイスまで…本当にいいのかい?今日は甘えてばかりな気がするし…」

    『いいのいいの。真面目で頼れる友人を甘やかそう!大作戦!!が実行中だからね』

    「そうなんだ…??」



    作戦名さっきと違う気がするけど、まぁいいか。やりたいことは変わらないし。美味しそうに味わいながらアイスを食べる紫彗を見て、ふと昔を思い出した。
    何時だったか……皆で紫彗の仕事を手伝おうって話になって、休憩の時にアイスを買ってきたんだ。「色んな味を皆でシェアしながら食べよう」って云いだしたのは治のくせに、紫彗が他の人に自分のアイスを食べさせようとするのが気に入らなくて、すっごく不機嫌になったんだっけ。最終的に紫彗のアイスを一口貰って機嫌直してたなぁ。懐かしい。



    「疲れた…」

    『お疲れ様~!今夜はぐっすり眠れるんじゃない?』



    その後、暫く街を巡回して社に戻った。今日は大きな依頼もなかったみたいで、社員はあまり残っていない。ソファに腰掛けた紫彗が眠そうに目を擦る。けれどその表情は穏やかなものではなくて、何かを怖がるように引き攣っていた。



    『眠れない時は誰かに手を握ってもらうといいって、昔何処かの柊くんが云ってたなぁ』

    「……何処の柊くんだろうね」

    『まだこんなに小さかった柊くんだね』

    「そんなに小さくはなかっただろう?」

    『いーや、私からすれば小さいよ』

    「歳もそう変わらないじゃないか」

    『たった二歳だろうと、君のが年下なのは変わらない』



    ぽすんと隣に座って、薄いブランケットを膝にかける。冷房で身体が冷えては大変だからね。紫彗の手は大きいけれどやっぱり華奢で、何処と無く不安げな感じがした。



    『実際紫彗の方がしっかりしてるけどさ、私のが年上だし先輩だし身長高いし。もっと頼ってくれてもいいんだよ。紫彗は一人で抱え込みがちだから』

    「身長関係ある?…けど、そうだね。伊織の明るさに助けられてるのは事実だ」



    紫彗は目を閉じる。私の肩に頭を寄せて、有難うと小さく呟く。人肌って安心するよねぇ。独りじゃないって、幸せだ。



    『もう置いていったりしないよ。私も、治も、皆も。だから安心して寝な?』



    返事は無かったけれど、暫くすると小さく寝息が聞こえてきて一安心だ。横を通りかかった敦に泊まる旨を伝えて、治にも連絡を取っておくよう頼んだ。
    私も少し寝ようと目を閉じてから早数時間。もう夜が更けていた。紫彗は、私が寝る前よりもずっと此方に体重をかけていたようで、腕が少し痺れてる。起こすのも忍びないし…と思っていたら、何となく人の気配を察知。



    『入っていいよ~』

    「ちぇっ、バレたか」

    『ふふん、何年一緒に居ると思ってるの』



    治だ。敦からの伝言で早く帰れそうだと聞いていたけど、真逆今日中に帰ってこられるとはね。起きたら紫彗も喜ぶだろうなぁ。



    『場所変わろう。そろそろ書類仕事始めないと、紫彗が手伝うって云い出しかねない』

    「それは困るね。紫彗は人の為なら何でもするから…また寝不足になってしまう」



    起こさないようにして治と場所を代わる。治は「全く…また隈を作って…」と頬をつつき乍ら文句を云っている。けどそれ全部、紫彗のためを思って云ってるの、知ってるからね。愛情を言葉の裏に潜ませている本人たちが、それに気づけていないだけ。と云うより、確かめるのを恐れてるって感じかな。関係性が崩れるのが怖いから。鳴呼、安吾さん…織田作……この二人は如何にかならないかな。見てる此方がもどかしいよ。



    『治も寝たら?私は書類終わるまでやるから泊まってくし、紫彗もぐっすりみたいだから』

    「そうさせてもらうよ。いやぁ、遠方の任務は疲れる…」



    紫彗の髪をくるくると指先で弄ったり、手を握ったり、隈のある辺りを優しく撫でたりと、疲れたと云いつつも中々眠らない治だったけど、書類仕事に没頭していたら、何時の間にか寝ていたみたいだ。落ちかけているブランケットをかけ直してあげる。まるで子供みたいなあどけない寝顔だ。



    『二人共、こうしてくっついてないと熟睡しないんだよなぁ…』



    外を見ると、青色の光を帯びた星が寄り添うように二つ並んでいる。私はそれに、ソファに並ぶ二つのループタイを重ねた。
    今は亡き友人に写真を添付して送る。君も見てるかなって、在りし日を思いながら。
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