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    旧端谷

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    旧端谷

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    ヨザ→ユ /2014.10.21/

    走り書きメモ 眞魔国の王座に就く少年はなんぴとも抗しがたい魔性じみた魅力を周囲へ振るう。
     一目その姿を目にすれば、魔族もヒトも隔たる集団の壁は無に等しく、命知らずな無法者であろうと王たる有利の前に跪くだろう。闇夜よりも深く、絶望の澱みよりも透った双眼に見下ろされる一瞬に、理性のない獣さえ無上の喜びを感じずにいられないはずだ。
     気高き眞魔国の君主、ヨザックの従える若き主人。けっして小さくない国を統べる少年は王に盲信する周囲の言にいつも慌てて首を振る。
    「夢を持ちすぎだよ」
     苦笑し、逆接の言葉を付け加え礼と共にはにかみながら「そうならなきゃ駄目ってことだな」己を戒めた。
     有利は己に降り注ぐ賛辞の全てを目指すべき支持として受け取る。己が国や集団を治める王として未熟な体であることを理解し、その重みに対しての慎重さを自身に対して義務付けているようヨザックには思えた。それは信奉者の贔屓目だろうか。ヨザックは根無し草だと自分を称していたが眞魔国に情を傾けている自覚はあるので、民衆の信じる王の姿に共感し勝手な像を有利に押し付けている惧れが無いとは言い切れなかった。
     ヨザックは有利にむかって周囲が口にする数々の言葉をかけない。そのかわりに、有利があとあとになってハッと気付く程度の助力で、厚いとは言えないその背を時折り軽く支える。
     妄信で仕える狂信性をヨザックは少年に対し持ち得ていないが、君主として少年の足掻きを認めていないわけでもなかったのだ。
     政を放り出すつもりも、重荷に潰れる予測も、頭からつけていない有利の傍にただ立ち寄るのだって、そんなヨザックを不思議そうに見上げる少年の眼睛が好ましかったから、ついらしくもなく傍へと居続けてしまう自覚はある。蠱惑の色彩がキラキラと輝く有利の両眼。どんな言語でもってして、どんな贅沢な言葉を尽してみても、少年の瞳が持つ景色を表すには到底事足りないに違いなかった。
     振り返れば、魔族でもヒトでもなく無法者であったはずのヨザックは魅入られたのだろうと思う。
     ――成程、知らないうちに頭を垂れてたか
     春の嵐が吹き荒れる森の騒ぎを憂慮の眼差しで見詰める少年の傍らで、我関せずと有利の表情だけ盗み見ていたヨザックはわきあがる衝動のうちに欲を飲み込んだ。
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