習作短文 エマがふと動作をとめる。
唐突なタイミングで言葉少なになった相手の様子を訝り、イライはかのじょの目線の先をたどった。
さきほどまでひどく熱心に庭へ向けられていた瞳が、いまは隣り合うイライの手元をとらえている。麦わら帽子の影に隠れていたグリーンがちらりと上目に動く。互いの視線が合ったかとおもえば、エマの表情がぱっと明るくなった。
「素敵な指輪なの!」
陽光を反射した指輪の存在に気づいたらしい。雀斑のちる頬を興奮でほてらせ、キラキラと輝くまなざしは憧れに対する純粋な熱を透かしていた。
「イライくんは指輪をしていたのね。いつもはグローブをしているから、知らなかったの」
イライは日頃、手にはめたゆがけを積極的にはずさない。ゲーム外でもつねに行動を共にする友であり王であるミミズクの趾が汚れた血肉に触れぬよう、心がけているからだ。
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