弾き語りある日突然紹介された少女は女性的な色香よりも幼さによる庇護欲を呼び覚ませる方がずっと強かった。
彼女の名前をよく覚えていないというよりは、三つの文字の並びがいずれ自分を崩壊させていくのだろうということが感じられて、排除するようにしていた。だが、突然戦場に立っている時に脳をひやりとした感触に撫でられる時があった。一瞬訳が分からなくなって自分がどうすべきだったのか、それを手放してしまったことを後悔しながら空中に上がる華やかな赤が舞った。
戦の場にあって完全に目の前のことよりも遠く存在する一人の女性に脳幹を支配されている。
勢いよく頭の上を槍が貫こうとした。咄嗟に避けたが、返す返す獲物を横に払う力強い音。転がる様にして砂の上を動いた。天へと視界を向けると共に食いしばった歯をぎちぎちと鳴らさんばかりの男の顔。魔導書を手に少し言葉を発するだけで、獣の革を纏っていた男はよく燃えた。それはもう、尊い家柄で使用されるどの薪よりも脂肪を含んで綺麗に燃えた。
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