UFOの日「零くん、今日は何の日か知っているか」
「ん〜?」
数秒間、考えた。わからない。組織壊滅記念日? 赤井の誕生日? 同居記念日? 犯罪史上忘れてはならない大事件が起こった日? どれも違う。窓の外をワクワクして眺めていた赤井は、笑って僕に向き直った。
「そう難しく考えないでくれないか」
「……もしかして初めて、」
抱いた日。それに違いない! こいつ何てかわいいんだっと抱きしめようとしたら、おとなしく腕に収まりながら「違う」と言った。
「あれは日付が変わっていたから、記念日としては明日なんだよ」
「……じゃあ、何だよ」
鼻がくっつくくらいの距離で、幸せそうに笑ってる。赤井、こんな顔できるようになったんだ。
「UFOの日だ」
「へっ」
「1947年のこの日、ステイツで空飛ぶ円盤が目撃された」
「それで外を?」
「ああ」
時差もあるし、まだ昼間なのに。
「ひょっとして、部屋を選ぶ時ここにしたのは……」
「空が一番近いと思ったからだ。……零くん?」
僕は赤井の肩に頭を埋めて笑った。
「ハハッ……あー、もう。かわいいなあ」
UFOを見たいから、見られるかもしれないから。それで部屋を決める赤井秀一なんて、かわいいと言うしかないだろう。ぐしゃぐしゃと髪をかき回すと、僕のも同じようにしてきた。平日の昼間から、何やってるんだろう。でもいいよな、こういう時間があったって。平和を手に入れたんだから。
「君が賛成した理由もなかなかだったぞ」
「何だっけ?」
次に来る言葉を予想して、かぷっと首筋にかみついた。
「『防音がしっかりしている』」
「誰のためだと?」
「……このまま、日付をまたいで祝杯をあげるか?」
「どうしようかなあ。UFO見逃したらかわいそうだし……」
口だけだ。途中でやめるつもりはない。行為を続け、レースのカーテンの隙間から外を覗かせた。
二人とも時を忘れた頃、それは起こった。
「「あ」」
一番星の近くを、スーッと何かが通った。見えなくなるかと思ったら、宙返りなんかして、ジグザグ運転もしてから……パッと消えた。
「あかい、今のって……」
「ああ……紛れもなく」
「「UFOだ」」
「あ、写真っ」
消えてしまったけど、残像くらいは……怪光線か何かが、写るかもしれない!
「いいさ。君と見られた、それで俺は満足しているよ」
「でも」
「大丈夫だよ、ありがとう。まるで俺たちを祝福してくれているようだったな」
「うん……」
僕たちに見てほしくて、ダンスをしているようでもあった。
「あ……まさか、見られた!?」
普段はそんな心配いらないのに、宇宙から来た生命体に覗かれるなんてっ!
「落ち着くんだ。奴が消えているうちに、二人の時間を満喫しようじゃないか」
「お前がそんなに落ち着いていられるわけがわからない……」
僕はぼやきながら行為を再開した。
大好きな人といると、不思議なことが起きるものなのかもしれない。