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    AmakAsuka

    @AmakAsuka

    安赤小説を書いています。この二人の立場、性格等の関係で、物語はシリアスに始まることが多いですが、必ずハッピーエンドになります。

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    AmakAsuka

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    エアブー230528の展示作品です。安赤ワンドロワンライのお題「最後の日」をお借りしました。
    バーボンが、スコッチの最期の言葉を聞くことができていたら、と想像してみました。映画の影響で、幹部を手伝ってくれる構成員も登場させています。その後、ライが組織を抜け、2年後に赤井秀一として日本に戻ってくるまでを書きました。
    これだけで読めますが、6/23からのエアブーで続きを展示します。ハッピーエンドです。

    ##バボライ
    ##安赤
    ##AMAK

    最後の日「おい。バーボンはどこにいる。誰か知ってるか」
    「今日は〇〇会の取引のために潜ってますぜ」
    「そうか……奴が戻ってきたら、気を付けろ。荒れるぞ」
    「兄貴、心配してやってるんですかい。そりゃあバーボンは、ライとデキてるとかデキてないとか言われてやしたが」
    「んなことはどうでもいい。ライのこととなると逆上するあいつが面倒なだけだ」
    「逆上ですかい?俺には、いつもより冷たく見えやすよ」
    「ウォッカ。赤い星と青い星、どっちが熱いか知ってるか」
    「え。あ、青い方……あー。そういうことですかい」
     真っ赤になって怒っている時よりも、静かに青い目を光らせている時の方が、恐ろしい。裏切者としてライに始末されたスコッチの死以来、バーボンのライを見る目は、氷のように冷たい。
    「にしても、FBIだったとはねえ。ジン、見たら殺していいんだろ?」
     キャンティは、新たな獲物を見つけたというのにどこか残念そうだ。
    「その割には、気が進まねえようだが……キャンティ、何を隠してる」
     ギラリ、と緑の目が凄みを増した。
    「ちょっとやめてよ。あんないい男を殺るのはちょっとばかり惜しいと思ってるだけさ。愛想はないけど腕は確かだったよ。ほんと、もったいないねえ……」
     言葉とは裏腹に、愛用の銃を整備し、舌なめずりをする。コルンは無言だが、この場を眺め、キャンティはいつも通りだがジンの様子は尋常ではないと思っていた。

     その日、組織随一のスナイパーと謳われた一人の男が、姿を消した。
         ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
    「幽霊を殺したようで気味が悪いぜ」
     そう言い捨てて、ライは屋上を立ち去った。バーボンとスコッチを残して。
     純粋な組織の幹部同士ならば、ライの行動は、『後はお前が始末しろ』という意味になる。しかしこの三人は、口には出さないが、三人とも潜入捜査官なのではと察しており、心の中で互いを頼みに思っていた。その想いは、彼らを確かに、温かいものでつないでいたのだ。
    (それなのに、まさかこんなっ……)
     バーボンは、立ち去るライの背を睨みつけた。カツン、カツン、と足音が遠のいていく。重い足音だった。
    「……ロ」
    (?……今!?)
    「スコッチ……おい、スコッチ!……ヒロ?」
    『心臓の鼓動を聞いても無駄だ。死んでるよ』
     ライはそう言ったが、まだかすかに息がある。
    (あいつ、何のためにあんなことを)
     二人に、話をさせるために?まだ息のあるうちにと?
    「ゼ、ロ……」
     今度ははっきりと、だが消え入りそうな、スコッチの声が耳に届いた。希望は持てないが、看取ることはできる。
    「ヒロ……」
     バーボンは親友の体をかき抱いた。血で汚れたって、構うものか。ヒロの血だ。どうせこのあと、『後始末をした』と報告しなければならない。 
     容姿のためにいじめられていた降谷零にとって、長野からやってきた景光は、正に『光』だった。その光が今、静かに消えようとしている。
    「ヒロ……」
     声を聞かせ、本名を聞かせ、お前は親友の腕の中で眠りにつくのだと教えてやる。誰もいない冷たいコンクリートの屋上ではなく、幼馴染の温もりの中で。今、バーボンがしてやれるのは、それだけだった。
     その声も、もう、聞こえているのかいないのか。それでもスコッチは、バーボンに最後の言葉を遺した。
    「ら、いは……なあ、ぜろ……あいつ、を……たの……」
    「……ヒロ」
     ついに息を引き取った諸伏景光を、降谷零はしばらくの間、その場で抱きしめていた。

     腕の中で、冷たくなっていく体。それよりももっと冷たかった、ライの声色。いつもは機嫌の良いライが、バーボンに対して初めて向けた冷たさだった。
     あれが、二人に最後の時間を与えるためだったとするならば、その理由は何だ。組織の構成員同士にしては仲が良かったからか、もしくは。
    (僕も公安だと気付かれたか。……馬鹿な。だったら、二人とも殺すはずだ)
     ライが、本当にライでしかないのなら。
    (ヒロは、何を言おうとしたんだろう)
     もう聞くことのできないそこに、答えがあるのだろうか。死者の言葉を探ることは、いかに『バーボン』であっても、無理なのではないか。
    (だけど、あいつは僕たちに時間をくれた)
     それだけは、確かだと思えた。今まで自分が見てきたライは、そういう人間だ。そのことと、ヒロに自殺を促した冷酷さとが、どうやって奴の仲で共存しているのか、そこがわからない。
     これ以上考えるのは、後だ。今は、『裏切者の始末』を装って、ヒロを埋葬してやらなくては。お兄さんに明確に知らせることはできないが、壊れたこの携帯を、せめて。班長へ送っておけば、長野へ送ってくれるだろう。
    (班長は、Hの文字を見てヒロの死を悟るだろう。ごめんな。こんな役をさせて……)
     大切に大切に抱え上げ、階段を降りる。ライから聞いたのだろう、階下には数人の構成員が控えていた。いずれもコードネームを持たず、幹部の手となり足となって動いてくれる者たちだ。
    「ご苦労様でした。後は我々が」
     スコッチを引き取ろうとするのを、昏い瞳で静止した。ゾクッとするような冷気を発することも、忘れない。
    「この死体は徹底的に調べる必要がある。君たちは、見ない方がいいでしょう。ジンには僕から報告します」
    「……わ、わかりました」
     何とか彼らの目をごまかして、車に乗せた。降谷零としては、当然のことだが『徹底的に調べる』つもりなどない。どう始末しようが自由なのだから、組織の奴らの目の届かない所まで運び、丁重に埋葬するつもりだ。これまでにも、数人の遺体を、そうやって埋葬したことがある。
     もちろん、一人でそんなことを繰り返していれば、すぐに嗅ぎつけられてしまう。少し前からサポート役となっている風見裕也に連絡を入れ、ある地点で公安に引き渡すという手筈だ。
     だが今回は、誰に任せるのも危険すぎる。見つかって殺されるなら、自分だけでいい。それは、自分を守って死んでいったスコッチの遺志にも、いつも優しかったライの配慮にも、反するとわかってはいるが。
     その場所へと車を走らせながら、次から次へと考える。
    『ら、いは……なあ、ぜろ……あいつ、を……たの……』
     ライは、何だっていうんだ?あいつを、どうしろって?
    (教えてくれ……ヒロ。あの言葉の続きを)
     事切れる前の言葉は、遺された者が、死者の意図とは別の意味にとる場合もある。断片しか、聞き取ることができないためだ。
     心を、憎しみというひとつの色で、塗りつぶすことができるのなら。バーボンはスコッチの言葉を補い、こう解釈しただろう。
    『あいつを殺してくれ。頼む』
    (そう思えたら、どんなに楽だったか)
     スコッチは、かつて自分の両親を殺害した犯人を、執念を持って探し続け、逮捕へと追い込んだ。だが、ライとスコッチ、それにバーボンとの関係は、それとは違う。スコッチなら、最後の瞬間に願ったことは、おそらく。
    (僕とライが、憎み合わないようにと……。あの言葉はそのまま、『あいつを頼む』なんだろう)
     わからない。自分が自殺するのを眺めていた男を、親友に託すなど。なぜそんなことができる?スコッチは聖人ではない。誰だってそうだ。こんなはずじゃなかった、しくじった、悔しい、こんなところで終わりたくない……そういう想いがあったはずだ。
    (それでも、ヒロなら。そういうのは全部後まわしで、僕とライのことで頭がいっぱいだった……?)
     頼む、と言われても、一体これからどうすれば良いのか。表向き、ライと仲良くしろとでもいうのか。いくら何でも、それは無理だ。
    (もしも、ライが僕に配慮したことが、組織の奴らに知られた場合は……?)
     構成員同士が仲良くなることは、あり得ないことではない。バーボンとスコッチはやけに仲がいいと、広く知られてもいた。必死の形相で駆けつけたバーボンのことも、ライは疑ってかかるべきだったのだ。少なくとも、組織に対してそう思わせなければ、次はライにNOC疑惑が降りかかる。スコッチはバーボンに、そうならないように気を付けてやってくれ、と言いたかったのだろうか。

     ライは、危なっかしい。今回のように、人の気持ちを大事にする行為を、無意識のうちにとってしまう男だ。
    『ライは、お兄ちゃんぽいよなあ』
     スコッチがそう言って笑った数日後に、駅でライの妹に会った。中学生ぐらいの妹が、出先で兄を見つけたからといって、わざわざ追ってくるだろうか。組織に入ってからあまり顔を見せていないのか、そもそも、ほとんど一緒にいたことがないのか。バーボンは、後者だと睨んでいた。
     スコッチを悪の組織の一員として認識していたのなら、妹をそばに残していくような真似はしない。
    (つまり奴は、スコッチが妹に危害を加えないことを、確信していた)
     それをああやって行動で示すのが、どんなに危険なことか、わからないはずがないのに。そういうところが危なっかしくて、かわいいとさえ思い、バーボンはライを心の奥に住まわせるようになっていた。心の奥の、一番深く、温かいところに。
         ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
    (だけど今は、僕の方が危なっかしいよな……)
     ここを通るに違いない。バーボンが待ち伏せをしていた、正にそこへ、今、ライがやってきた。その顔には、いくつもの言葉を読み取ることができる。
    『追手は君か。だが、つかまるわけにはいかん』
    『君を手にかけたくはない』
    『これでお別れか。最後に顔を見られて良かったよ』 
    (ふざけるなっ……)
     どの言葉も、受け入れることはできない。バーボンは、ライをつかまえたいと思っているし、そこまで自分を執着させる存在に侮られている気がして腹が立った。
    (それに、これが最後だなんて、僕は認めない……)
     対峙し、拳銃を突き付けてから、一分が経過した。この男を前にして一分は、長すぎる。向こうがその気なら、五秒もかからずにバーボンは死んでいる。
     ライは銃を抜くこともせず、佇んでいる。今にも、マッチを取り出して煙草に火をつけそうで……そんな仕草も、もう見ることはできない。引き金に触れていた指が、離れていく。
    「……撃たないのか」
     バーボンは、銃を懐に収めながら苦笑した。
    「ここであなたに死なれては困るんです。いろいろとね。いずれ、また」
    「そうか……ありがとう。君も、死ぬなよ」
    「……お前」
     目を見開いた時、車のエンジン音が近付いてきた。
    「お迎えのようですね」
    「行ってくれ。君の姿を見られてはまずい」
    「次に会う時は、覚悟していてください」
    「望むところだ」
    「では」
     想いを断ち切るように、バーボンは踵を返した。断ち切れないことは、わかっていた。

     ライがNOCであることも、FBIの人間であることも、現場に出張ってきたラムが気付くよりも早く探り当てていた。もともと、あの取引は罠だったのだ。ライは以前から怪しまれていて、疑惑を確信に変えるために、ジンとの任務が計画された。取引が架空だったわけではないが、流してしまっても構わない程度のものだった。
     誰かを嵌めようとするとき、決して気取られない者もいれば、気配がにじみ出てしまう者もいる。バーボンは、ライが赤井秀一であることを突き止めた直後、たまたま、構成員の話を小耳に挟んだ。空取引、という単語に、いやな予感がした。ラムが動くとすれば、倉庫に自ら現れるだろう。尻尾をつかんで、すぐにつかまえるような単純なことはしない。徹底的に追い込むのが、ラムの戦法だ。
     ライは、ジンから連絡がないのに勝手に動くわけにもいかないから、しばらくは待つだろう。互いに息を潜め、組織が飛び掛かるのが先か、ライが逃げおおせるのが先か。
     ライが逃げるとすれば、何時にどのルートをとるだろうか。掩護に現れるだろうFBIの動きも予想する。ライは先を読むのに長けている男だ。この取引が罠だという可能性も、頭の中にあっただろう。どちらが先に罠にかかるか、という話だったのだ。
     待ち合わせの時刻は、深夜。事態が動くのは、夜明けか。天候と交通事情を計算に入れ、三つのルートから最終候補を絞り込む。読み違えたら、あの男は他の誰かの手によって殺される。それだけは避けたい。
    (あなたを殺すのは、僕だ。他の誰にも譲らない。だけどあなたには、もう二度と会えないとしても、世界のどこかで生きていてほしい)
     二度と会えないなら、憎んでいても許される気がした。二度と会えないなら、愛することを自分に許そうと思った。
     バーボンの瞳が、キラリと光る。それは夜明けの光か、それとも涙か。自らの青い炎に焼き尽くされそうだと、いっそそれでもいいと、この朝バーボンは思った。
    (なあ、ヒロ。これでいいんだろう……?)
         ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
     それから二年後。諸伏景光の携帯は、いまだ、警視庁にある伊達航のロッカーで眠っている。彼は諸伏の死に気付いただろうか。心の整理に時間がかかり、長野へ送らずにいたのだろうか。彼が何を思っていたのか、今は知る由もない。

     赤井秀一は、ベルモットの情報を得て日本に舞い戻っていた。この国に足を踏み入れるのは二年ぶりだ。湿度が高く、四季が美しい、あの男が夢中になっていた国。国籍も年齢も不明の男だったが、日本びいきなのは言葉の端々に表れていた。
     バーボンが死んだという噂は、聞かない。かつてライとして関わりを持ったことのある裏社会を探ると、あれから着々と『仕事』をこなし、最近はベルモットと共に姿を現すことが多いらしい。
    (単独行動の多いあの女が、君をそばに置くとはな。何か弱みでも握ったか?)
     久方ぶりの日本での一服を味わい、このあとのスケジュールを頭の中で確認する。しばらくは、ベルモットを追うことに集中する。あの女は幹部の中でもボスに近い。組織を倒す手がかりをつかめるはずだ。
    (それに、君のこともな。『次に会う時』は、もうそこまで来ているよ。そうしたら、君はどうする?)
     思い浮かぶのは、かわいい笑顔。すねた時の顔。かと思えば、自分の方が年上であるかのように、仕方ないなあ、という目で見てくる。そんなバーボンの目にあやされるのは、嫌いではなかった。その顔を絶望で染め上げたのは、他でもない自分だ。
         ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
    (家族や仲間のデータが入っていたであろう、この携帯を……)
     自殺の意図を悟ったその時、屋上の入り口に、バーボンが現れた。ライは携帯をスコッチのポケットに戻すと、今言うべき言葉を瞬時に選択した。それが正しかったのかどうかは、わからない。だが、一刻も早くここを立ち去り、二人だけにしてやりたい。彼らに残された時間は、もうわずかしかないのだから。
     拳銃を手にし、辛辣な、何度も心臓をえぐるような言葉を投げた。バーボンのことは心の奥にいつもそっと、日だまりを眺めるような気持ちで抱いているというのに。君は金輪際、俺をあのまっすぐな瞳で、その奥にやわらかく浮かべた笑いを込めて、見つめてくれることはないだろう。
    (最後の日、だな……)
     俺たち三人の最後の日は、最悪な形になった。スコッチは、ひと言でもバーボンに、何かを遺すことができただろうか。
     組織に身を置く限り、この先もバーボンと顔を合わせることは避けられない。彼はライを激しく憎むだろう。FBI捜査官だと知れば、あるいは、その憎しみはやわらぐだろうか。
    (……いや。ますます激しく、俺を憎むだろうな)
     なぜ助けてやれなかった、と。貴様ほどの男が、と。
    (それでいい。生き延びろ、バーボン。俺を憎み、そのあげくに殺意を抱いても構わない。この先もしも俺が組織から追われる身となった時は、君が俺を殺しに来い)
     そこまでして、バーボンを生かしたいという願い。ライは、その奥底にあるものに気付くことなく、組織を去った。
         ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
     あれから、明美が死に、近頃は母の行方もわからない。真純は一緒だろうか。弟は、将棋の世界で名を揚げてきているから、無事だとわかるが……。
     ふーっと最後のひと息を吐き出し、煙草を揉み消す。
    (バーボン、俺を見つけてくれよ)
     願いを込めて、第一歩を踏み出す。最初の来日は、十五歳の時、母親に連れられるままに。次は、組織の一員として。そして今、FBI捜査官赤井秀一として。 運命の出会いは、まだ終わってはいない。バーボンとライの物語は、まだ続いているのだ。

     まずは、君の名前を探しに行こうか。


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    AmakAsuka

    DONEエアブー230528の展示作品です。安赤ワンドロワンライのお題「最後の日」をお借りしました。
    バーボンが、スコッチの最期の言葉を聞くことができていたら、と想像してみました。映画の影響で、幹部を手伝ってくれる構成員も登場させています。その後、ライが組織を抜け、2年後に赤井秀一として日本に戻ってくるまでを書きました。
    これだけで読めますが、6/23からのエアブーで続きを展示します。ハッピーエンドです。
    最後の日「おい。バーボンはどこにいる。誰か知ってるか」
    「今日は〇〇会の取引のために潜ってますぜ」
    「そうか……奴が戻ってきたら、気を付けろ。荒れるぞ」
    「兄貴、心配してやってるんですかい。そりゃあバーボンは、ライとデキてるとかデキてないとか言われてやしたが」
    「んなことはどうでもいい。ライのこととなると逆上するあいつが面倒なだけだ」
    「逆上ですかい?俺には、いつもより冷たく見えやすよ」
    「ウォッカ。赤い星と青い星、どっちが熱いか知ってるか」
    「え。あ、青い方……あー。そういうことですかい」
     真っ赤になって怒っている時よりも、静かに青い目を光らせている時の方が、恐ろしい。裏切者としてライに始末されたスコッチの死以来、バーボンのライを見る目は、氷のように冷たい。
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    AmakAsuka

    DONEPixivの1000字コンテストに応募した、「ボトルメール」をテーマにした小説です。ハッピーエンド。pixivの方は、コンテスト用に少し縮めてあります。こちらが完全版となります。零くんがこんな危ないことをするか?とも思いますが、パッと浮かんできた光景を書いておきたかった。赤井さん相手なので突飛なことをしてしまう上に今よりももっと若かった零くん、ということで、広い心でお読みいただければ幸いです。
    ボトルメール一、あなたは海の彼方

     僕の中に残っていた、温かいもの。それが粉々に砕かれた瞬間。破片をかき集めて、ボトルに入れ、蓋をした。優しい笑顔、気遣ってくれる声、交わしたいくつもの言葉。かけがえのない親友を失ってからも、なおも心の中から消すことができなかった日々。
    「さよなら、ライ」
     海に流して、すべて忘れよう。それでもこんな風にボトルメールにして、ぷかぷか浮かぶのを眺めているのは、未練にほかならないけれど。
         ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
    「よぉ、シュウ!」
    「トム。しばらくだな。あの件は片付いたのか」
    「ああ、手こずったがな。この前アドバイスもらって助かったよ。さすがは『ライ』だな」
    「それは禁句だ」
    「ハハッ。悪い悪い」
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