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    ふなはしゆら

    @yura_pontoon

    Twitterに勢いで出したものをこそこそ修正したりしなかったりしてまとめる場所にするつもり。

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    ふなはしゆら

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    Twitterでakitano様が主催されたフェルムコ突発ワンドロ企画に参加した際の文章です。
    もう片方の『夏の贈り物』(https://poipiku.com/7978395/8958894.html)とは繋がっておらず単体で読めます。

    見える物とはかぎらない 俺と、フェル。俺たちが初めて気持ちを確かめあったその翌朝。
     目を開けると独占欲フルスロットルになったフェルがそこにいた。

    『我らは晴れて結ばれたが、人間どもに大々的に知らしめる儀式には何が必要なのだ?』
    「お前はアホか」
    『アホとはなんだ』

     フェルの大きな手が俺の髪を乱す。
     事実を言って何が悪い。キリッとした耳。輝く銀の身体に、まっすぐ見つめてくる瞳。顔のつくりは相変わらずいいが、話す内容が、お前いったいどうしたよ?

    「あのな、種族が違って、男同士だぞ。お前の言う儀式って結婚式とか披露宴のことだろう? でもその知らしめられた人たちが反応に困るのが目に浮かぶわ。俺らが互いに信じあって、納得できてたらそれでよくないか?」
    『しかしそうでもせねば、いつなんどきお主に手を出す不埒な輩が現れるやも――』
    「俺が? そっちの意味で手ぇ出される? あると思うか?」
    『……お主ほど危うい奴ばかりではないと思うがな。まあよい、わかった。ただただ我が守り通せばよいだけだ。これまでとなんら変わらぬ』

     起きたばかりだというのにすでに疲れたように遠い目を向けてくるフェル。
     惚れた欲目だかなんだか知らないけどさ。デミウルゴス様が太鼓判を押すレベルで恋愛運が壊滅的らしい俺に向かってはするだけ無駄な心配だぞ、本当に。

    『では儀式でなくとも、お主の世界ではこういう時のしきたりや証の品はないのか? 我にしてやれることはあるだろうか』

     フェルなりに俺のことを考えてくれているんだ。少しすがるような声と下がった耳が可愛く見えて、ちょっと笑ってしまう。
     しきたりなぁ。俺の家族親族との顔合わせについては考えても仕方ない。フェルだって血縁にすぐ会えるって風でもないし。そうなると……。

    「うーん、証の品かぁ? 俺のとこでは指輪を交換するのが多かった。でも料理の度に外すのも手間だし、すぐ失くしそう」

     しかしこれはなかなか難題だな。どんな品でもフェルにとっては役立つどころか邪魔じゃないか? ずっとアイテムボックスにしまっておくようじゃ寂しいし意味がない。
     こうなったら役立つかは諦めて、これから先の永すぎる時間に劣化せずついてこられそうな物質としてだけ考えると……あるにはある。デミウルゴス様が下さった賢者の石を使えば作れる、オリハルコンだのヒヒイロカネだのが。
     ダメだダメだ、伝説の金属も賢者の石も、迂闊に人目に触れたらそのへんの国の二つ三つ、滅びかねん。

    「俺の残り時間のすべてをお前にやるから、フェルは最期までしっかりそばにいてくれよ」
    『我は出会った時からそのつもりでおるんだが。本当にこれまでとなんら変わらぬな』

     いいじゃないか、俺たちの関係ははじめから完成してたのかもしれないぜ。
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