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    舟橋ゆら

    @yura_pontoon

    Twitterに勢いで出したものをこそこそ修正したりしなかったりしてまとめる場所にするつもり。

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    舟橋ゆら

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    去年のワンドロ企画の際に書いたムコさん視点の短文、フェル視点になったらどうなるのって思ったまま1年半近く。やっと形になりました……おっそ……。

    ムコさん視点はこちら↓
    『見える物とはかぎらない』(https://poipiku.com/7978395/8958909.html

    夢は一夜とかぎらない 長い間焦がれ続けた者が我の腕の中で安らぐ。こうも気分のよい目覚めがあったとは。ようやく目を開けてくれた嬉しさでつい、朝の挨拶もなしに尋ねた。

    『我らは晴れて結ばれたが、人間どもに大々的に知らしめる儀式には何が必要なのだ?』
    「お前はアホか」
    『アホとはなんだ』

     思わず黒い頭を小突いてふと思う。一言目にアホとは、昨夜のことは夢ではあるまいな。

    「あのな、種族が違って、男同士だぞ。お前の言う儀式って結婚式とか披露宴のことだろう? でもその知らしめられた人たちが反応に困るのが目に浮かぶわ。俺らが互いに信じあって、納得できてたらそれでよくないか?」

     夢でないならよかっ……いやいや、まったくよくないぞ?

    『しかしそうでもせねば、いつなんどきお主に手を出す不埒な輩が現れるやも――』
    「俺が? そっちの意味で手ぇ出される? あると思うか?」

     此奴は警戒心が強いが、一度親しく思った者への優しさときたら。そのせいで「いい人だな」を踏み越え利用しようとするどころか、惚れる者まで現れる。
     此奴に下心を持つ人間を時に睨めつけ、時には爪をきらめかせ幾人退けたことか。とうに数えやめてしまった。

    『……お主ほど危うい奴ばかりではないと思うがな。まあよい、わかった。ただただ我が守り通せばよいだけだ。これまでとなんら変わらぬ。では儀式でなくとも、お主の世界ではこういう時のしきたりや証の品はないのか? 我にしてやれることはあるだろうか』

     なんでもいい。いつも我がそばにいると示し、此奴に近づこうとする者どもが諦めるきっかけの一つでもあれば。

    「うーん、証の品かぁ? 俺のとこでは指輪を交換するのが多かった。でも料理の度に外すのも手間だし、すぐ失くしそう」

     笑み混じりの軽い声で胸の中に落胆の波が広がる。目に映る証を示せぬのはまだいい。だが此奴は以前、人型の女を男の身勝手な夢を通して見ておった。それなのに。
     我にはなぜ手間だの失くすだの現実的なことばかり口に出す。我には甘やかな夢など見れぬか。我は所詮、従魔でしかないか?
     たかが人間一人にこうも情けない感情を向けるとは。……しかしもう、此奴を「たかが」などと思える昔の我には戻れなくなっていた。

    「俺の残り時間のすべてをお前にやるから、フェルは最期までしっかりそばにいてくれよ」

     ――参った。ただそばにいるだけ。それをこれほど夢見がちな言葉で表してくれるとは。水が肺を満たすような苦しさが瞬く間に消えていく。口の端が持ち上がるのを止められない。

    『我は出会った時からそのつもりでおるんだが。本当にこれまでとなんら変わらぬな』

     そうだ、状況は何も変わらん。だがこれでいい。
     ずっとそばにいるという夢を日ごと夜ごと見続けて、最期のひと時まで夢で終わらぬよう努めればいい。
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    recommended works

    和花🌼

    DONE夏祭りワードパレットを使用したリクエスト
    7 原作
    ・帰り道
    ・歩調を落として
    ・特別
    ・あっという間
    ・忘れられない

    暑苦しいほど仲良しな二人を楽しんでいただけたら嬉しいです。
    夏祭り 7(原作) 夏祭りといえば浴衣を着て、友人や家族、それに恋人なんかと団扇で顔を仰ぎつつ、露店を横目で見ながら、そぞろ歩きするのが醍醐味というものだ。それに花火も加われば、もう言うことはない。
     だが、それは祭りに客として参加している場合は、である。
     出店の営業を終え、銀時が借りてきたライトバンを運転して依頼主のところに売り上げ金や余った品を届け、やっと三人揃って万事屋の玄関先に辿り着いた時には、神楽はもう半分寝ていたし、新八も玄関の上がり框の段差分も足を上げたくないといった様子で神楽の隣に突っ伏した。そんな二人に「せめて部屋に入んな」と声をかけた銀時の声にも疲れが滲む。暑いなか、ずっと外にいたのだ。それだけでも疲れるというのに、出店していた位置が良かったのか、今日は客が絶え間なく訪れ、目がまわるような忙しさだった。実際のところ、目が回るような感覚になったのは、暑さと疲労のせいだったのだが、そんな事を冷静に考えている暇もなかった。
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