【フェルムコ140字ログ】2023年8月※一つずつ設定や関係性がバラバラです。付き合ってたりなかったり。
◆2023-08-01
『そう思っていた筈なのに』
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スイはとうに成体だというのに。
『あるじー、ギュッギュしてー』
「スイたーん、おいでー」
二人を微笑ましく見られなくなったのはいつからか。
彼奴を見つけたのは我だ。誰より守ってやれるのは我だ。そうやって触れてもいいのは、我だけだ。
醜いものだな。彼奴の嫉妬は可愛らしく思えたのだがな。
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◆2023-08-02
『それは反則』
ムコさんをからかってギャンギャン言わせたい。
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『主殿、朝も紅茶だけじゃったろ?』
『どっか悪いんなら言えよ』
『スイお薬作るよー?』
『たかが5kg10kg肥えたくらいで飯を抜くような無茶をするでない』
「10kgも増えてないし」
『ほう、5以上。8といったところか』
「あぁーっ、フェルお前嵌めやがったな」
『勝手に嵌まる奴までは面倒見きれん』
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◆2023-08-03
『不毛な争い』
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『ドラよ、彼奴の欲しい物を知らぬか』
『なんで俺に』
『……忘れてくれ』
「ドラちゃん。フェルと会った記念日が近いんだ、プレゼント何がいいかな」
『本人に聞けよ』
「どっちが喜ばせるか愛を見せる勝負なの」
『お前ら俺に見せつけに来てどうすんだ。胸焼けするから晩はさっぱりした飯がいい』
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◆2023-08-04
『そんなの愛じゃない』
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夕飯どうしよ。皆が「やっぱり主が作った物じゃなきゃ」って思ってくれる何か。
……今日の俺、押し付けがましいぞ?
『晩に菓子パン。出かけるのか』
「今日は閉店ガラガラー。明日皆のリクエスト聞いてフェルから順番に作るから考えといてよ」
『ガラガラ?』
無償の愛にだって休息が要るんだよな。
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◆2023-08-05
『たまには甘えたい』
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「ふぇーるさーんや!」
『どうした気色の悪い声で』
「肉球むにむにさせて」
『冗談は声だけにしろ』
「じゃあ睫毛ファサファサでいいや、早く」
『昼から酒か』
「シラフで甘えるなって法律でもあるのかよ。せっかく二人きりになったのに」
『なら我も甘えて舐めるとするか。顔を貸せ』
「え、やだ」
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◆2023-08-06
『浮気、ダメ、ゼッタイ。』
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「浮気って何かと思えば道端の猫に可愛いって言ったアレだけ!?」
『ちゅ〜るとやらで気を引いてもおったぞ』
「で、こんな秘境に攫ったんだ……嫉妬は緑眼の怪物とか言うしなぁ。俺の首は絞めるなよ?」
『何の話だ。寿命いっぱい愛を教えるから死なせはせん』
「猫と張り合って満足なら好きにしろ」
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うちのフェル、なんですぐムコさん閉じ込めてしまうんや。
◆2023-08-07
『俺だけしか見えないように』
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森を駆け久方ぶりの人の町だ。皆で屋台の肉をねだると主も一串、美味そうに齧った。
「他人の料理はいいな。自分じゃ味の想像がついちゃってさ」
『我はやはりお主の飯が一番だとわかってよかった』
「楽して褒められちゃったな……夜からまた俺のを出すけどな」
声の一瞬の真剣さがなぜか耳に残った。
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◆2023-08-08
『おねだりさせて』
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「フェルっ助けてやってくれ!」
「フェル、この依頼できそうか?」
「フェル。ランベルトさんが欲しがってた奴、見つけたら狩ってくれない?」
『また人の頼み事か。お主自身に頼られたいし、格好をつけたいのだぞ』
「いつでも真っ先にお前に頼って、叶えてくれると疑わない。喜んでくれていいよ」
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◆2023-08-09
『抱き締めたい』
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「心配性め。昔は俺をポンポン投げてたくせに」
此奴を知る程、大切に思う程。抱けば傷つけるのではと怯えるようになってもう永い。
人は紙でさえ怪我できるのだ。
「俺は丈夫だよ」
加護で傷一つない手で、主は初めて我の前脚を誘うように抱いて見上げた。
『どうなっても知らんぞ』
「かかってこい」
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◆2023-08-10
『「ひと口ちょうだい」』
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『いい匂いー。あるじ、パウンドケーキひと口でいいのー』
「今回余分が少ないから本当にひと口な。スイのはひと口って言うのか? 頭? ま、いっか。あーん」
『この間のあれをしろ』
「何?」
『スイにあーんとしておったろう』
「ああ……いいけどお前肘までひと口で食いそうだな」
『食わんわ』
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◆2023-08-11
『マゴコロとシタゴコロ』
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『強情な奴だな』
「剛志だからね。俺の名前はこう書いて、強い信念くらいの意味な」
『二字だけか』
「音も意味も表せるから少ないの」
『異世界の字をもっと教えろ』
「――だから愛は真心で恋は下心ってな洒落が生まれたりする」
『お主の志も下心だな』
「下心で近づいたのお前じゃん、料理目当て」
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◆2023-08-12
『君のいない世界などコワレテシマエ』
不穏なの多くないかね。
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軽い気持ちで人間に契約を迫った。時が経つほどに、もし主を失ったら世界ごと壊そうかと血迷うまで主に入れ込んだ。
それがどうだ。
『その討伐、我が受けよう』
主が人間どもの暮らしを大切に思っていたなら我が引き継いでやる。
魔獣らしい生き方は壊されてしまったが不思議と悪い気はせんもんだ。
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破壊願望強めなお題、滅亡を回避するこっちの身にもなってほしい。
◆2023-08-13
『甘い、けど、苦い。』
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『“泥水”の匂いか』
あ、フェルが起きてきた。
「俺用にコーヒーゼリーにしようと思って。ああフェル、パックのコーヒー牛乳で作ろうか?』
『それなら食いたい』
「固まるまで待ってな」
『うむ、仕方ない』
「明日皆が昼寝してる時、二人でこっそり食べよう」
秘密の味は蜜の味、ちょっぴり苦味も。
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◆2023-08-14
『それは反則』
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『敵の気道を石で塞ぐ? お主の思いつきは底意地悪いな』
「ダンジョンでも石は作れるし。でかいの一個なら思った所に作れるようになるかもだし」
しかし底意地悪いとは心外だよ。お前こそ強い者が強い、何が悪いくらい思ってるだろ。
互いに影響受けあってんのかなって最近は少し嬉しかったりする。
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◆2023-08-15
『不意に向けられた刃』
これはモブチャンスでは
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明け方の裏路地にカモが一人。ボロい服と不釣り合いに髪も肌も艷やかな、優男。金持ちのお忍びか。
「兄ちゃん、有り金恵んでくれや」
錆の浮いた切先を顎に滑らせると、黒い瞳が俺に微笑んだ――
「フェルっ! 囮捜査なのに死なすなってば!!」
『生きておろう、まだ。お主を最期に見せてたまるか』
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なんやの、モブチャンスって。
◆2023-08-16
『犯した罪は重すぎた』
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「……おお、これぞ罪の味だわ」
『罪?』
「昔このハニートーストにハマって体重増えたことあってさ。乗せてもらうから今は自重しなきゃね」
『お主の二人や三人変わらんし、もし肥えたら我らの稼ぎのおかげだと見せびらかしたいくらいだぞ』
「お前独占欲強いと思ってたけど顕示欲もか? 重いな」
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お題のどこを読んだらこれができるのか自分でもわからない。IQ2になる。
◆2023-08-17
『馬鹿だとは知っていたが』
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「俺はただ、皆が斬られたらヤバいって思っただけでね」
『相手の得物が魔剣かどうかもわからんと立ち向かうとはな』
「また馬鹿にして」
『ありがとうって言えないねー、フェルおじちゃん』
『肝が冷えたとか、庇ってくれて嬉しかったとかも言えんしのう』
『まともに褒めるのもできねぇんだもんな』
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さっきのやつ、フェルムコがいつくっつくかドラゴン組が賭けて『来世』『来々々世』とか言ってそうなくらいフェルムコ展開が遅そう。
◆2023-08-19
『ジャッジメント』
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ダンジョンボスが文字でした。
“言葉を使わず愛を示せ”
『ふむ。服を脱げ』
「は、出られない部屋な話になってる?」
『脱がんと爪で裂くが、よいか』
「マジで疲れただけだし扉も開かないし……ポーション飲も。フェルは飯にする?」
『開いたぞ』
「なんでだよ食いもんだけが俺の愛判定なの!?」
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※空白行ひとつ抜けてました。足して140字判定。
◆2023-08-20
『謝りたくない』
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台所で主とフェルがイチャついていた。今さら驚きゃしないがよ。
俺に気づいたフェルは凍る視線で戻れと指図した。キスしたまんま。
「フェル、よそ見すんなよ」
『気のせいだ』
眼力で俺を固まらせるって新手の氷魔法か? 人目につくアイツらが悪いぜ。覗いちまった事は絶対に謝ってやんねぇから。
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◆2023-08-22
『「Bye-bye.」』
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『まーた喧嘩? 今度は何だ』
『ドラか、喧嘩ではない。方針の違いだ』
「バンドの解散発表かよ……俺が死んだらアイテムボックスの中身が勿体ないだろ。だから」
『死なせんし備えもいらん!』
『だから普段は主をマジックバッグに入れてフェルの首にでも大事に提げとくって話か』
「んな訳あるか」
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なんでこれがバイバイかと言うと、この間遊んだ親戚の子にとって座布団カバーにバイバイ言いながら潜るのがブームだったからです。(わかるか)
◆2023-08-25
『これでおあいこ』
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「ギャーッ!」
俺の手を滑り落ちて真横に転げたケーキの箱。
「苺ショートか……フェルごめん、すぐ買いなおす」
『おぉっと』
演技がかった声を出し、フェルは得意の風魔法で箱をくるくる回す。そして三回跳ねさせて定位置に戻した。
『手元が狂った。これは崩れただろうな。責任もって我が食おう』
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◆2023-08-26
『真夜中の秘密』
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夜の森で近付いてくる人間にろくな奴はいない。
我やドラを仕留めて名を上げたがる身の程知らず。
人の良い主を侮る不届き者に、主の一風変わった見た目に惹かれた明き盲。
どれでも排除するのに変わりはない。
一仕事終えて眺める主の寝顔には憂いがない。この時が我は好きだ。飯時には勝てんがな。
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※途中の不適切な表現はフェルが配慮するのも妙だと考えそのまま残します。
◆2023-08-27
『あのね、うん、何でもない』
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彼奴の肩で羽を休めるドラが、小さな手で髪や耳を弄ぶ。
それを見たスイも負けじと彼奴の腕に飛び込み、触手で頬をなでる。
「二人とも、くすぐったいよ」
『おい』
我の口から出た声は思いのほか低く不機嫌で。我ながら驚いた。
『……なんでもない』
フェルは夜な、と呆れ笑いまじりの念話が届いた。
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◆2023-08-28
『好きな癖に』
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『その肉はオーク、いやレッドボアだな。今夜はトンカツか』
「フェルさんや。今日はなんの日でしょうか?」
『勿体ぶるな』
「中々にやるなとお前が言ったから何回目かの生姜焼き記念日」
『トンカツの気分だったがアレも悪くないな』
はぁ、なーにが悪くないな、だよ。尻尾めっちゃ揺らしといてさ。
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◆2023-08-29
『そう思っていた筈なのに』
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「狩りに行ったし今日はフェルも洗おうな」
『ああ、そうだな』
「嫌がらない。え、助かるけどどうしたよ?」
『我ははじめから物分りがよかろう』
「うそだぁ」
はじめも今も、わざわざ濡れたくなどない。
ただ此奴が小さな身体でせっせと毛繕いしてくれる時間は失いたくないと思うようになったのだ。
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◆2023-08-30
『考えもしなかった』
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「部屋は沢山あるのになんで皆俺の所に集まって寝るの。フェルなんかずっと一人だったろ、ゆっくり寝れてる?」
なぜ、だと。寒いからか。主の異変に気付けるからか。
だが理由を探してそれを改めて、離れて眠るのは惜しく思える。
『早く寝ろ。明日はダンジョンだぞ』
「へいへい。あーあ、やだやだ」
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