フルーツを食べる三リョ(三本)〈半分より、上等な〉
【苺・大人、同棲】
最上の愛とは例えるならば、てっぺんに輝く赤いそれ、なのではなかろうか。
「あげる」
とくべつだかんね、と、行儀悪くフォークに突き刺したままのそれをスンとした顔で差し出してくるのは、こいつの照れ隠しの一種。傍から見たら、不機嫌なのかな、とか、いやいや寄越されても、とか思われるだろうその顔を、オレが愛おしく思うようになって何年経っただろう。この顔が照れている顔だと気付いた日から数えたら、もう両手でも足りない年月だ。
それだけの日々を宮城と過ごし、今年もまた一つ歳をとった。宮城の隣で。
「三井サン、今年のケーキは何にしますか」
日頃、オレのことを名前で呼ぶことを覚えたこいつが、誕生日のときだけは「三井サン」と呼ぶ。あの頃と同じだけの質量でもってしてオレを呼び敬語を使う。
3935