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    ya_so_yan

    @ya_so_yan

    9割文章のみです。勢いで書いたものを置いておきたい。後でピクシブに移すことが多いです。

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    ya_so_yan

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    また性格悪バドスさん。直接の絡みはないけど🔔🍎。そんなにCPじゃないけどコルキャンとかジウォとか。

    ※倫理に反する会話があります。

    捧げもの 今日は奢ろう、とカルバドス自ら言い出して、二人のスナイパー仲間を行きつけの店に誘った。
    「ほんと、ばかに機嫌がいいじゃないか。いいことでもあったのかい?」
     500mlの瓶ビールを半ば飲み干したキャンティが、テーブルの向かい側に尋ねると、答えが返ってきたのは彼女の隣からだった。
    「カルバドス……この前、仕事したばかり」
     同じ銘柄の瓶を前に訥々とコルンが呟くのを聞いて、キャンティは、ああ!と納得するような声を上げる。
    「そうだったねぇ、どっかのお偉いさんのドタマぶち抜いたやつ」
     揃えた人差し指と中指の先で、相棒の米神を断りなくトントンと叩く。キャンティのそんな仕草に、カルバドスは愉快そうに笑って頷いた。
    「嗚呼、今日はその仕事が上手くいった、お祝いさ」
    「お祝い……なら、カルバドスが奢ってもらうのが、普通……」
    「余計なこと言うんじゃないよ! せっかくタダ酒飲めるんだから!」
     肘で小突かれるまま、コルンは無抵抗だ。
     二人の様子に、カルバドスはますます愉快になって、瓶に口をつけて煽った。
    「いいんだよコルン。すごく気分がいいんだ、お裾分けさせてくれ」
     カルバドスも愉快で、酒を奢られたキャンティも上機嫌。コルンはいつもと同じ無表情だが、彼もまた少なからず楽しんでいることを、後の二人は知っていた。
     気の置けない仲間たちと共に、なんて愉快な祝宴。
    「だけどさぁ、あのヤマ、関係ない奴もヤッちまったから、てっきり失敗したかと思ってたよ」
     新しい瓶の王冠をテーブルの角で開けながら、キャンティが思い出したように言うので、カルバドスは素直に頷いた。
    「そうなんだ。一発目を外してしまって、それがうっかり他に当たってね。なんとか二発目で仕留められたからよかったけど……」
    「ま、よかったじゃないか、お咎め無しで。アタシだって、撃っていいならカカシのひとりふたり、いくらでもぶち抜くし」
    「でも……カルバドス、らしくない」
    「だよねぇ? いつも準備しすぎなくらい準備して、狙いもきっちり正確で、面白みのないくらい“真面目”な仕事っぷりなのに」
     二人のやり取りを聞きながら、カルバドスはサングラスの奥で目を細める。
    「俺も、いつも通りやったつもりだったんだけどね……“彼女”には悪いことをしたよ」
    「そうそう、どっかの女優だっけ? キレイな顔が悲惨なことになったって聞いたよ、キャハハッ!」
     不謹慎な甲高い笑い声を、咎める者はこの場にいない。
    「そんじゃ、その気の毒な女に乾杯しようじゃないか」
    「ああ、いいね! それはいい!」
     キャンティの提案に、カルバドスはこの上なく明るい笑顔で声を弾ませる。
     3本のビール瓶が、かちかちとぶつかった。



     あ、とウォッカが声をもらしたので、ジンは氷と琥珀色が揺れるグラスをカウンターに置き、ほとんど反射的に何だ、と問う。
    「このニュース。こないだの、カルバドスの仕事ですよ」
     カウンターで隣に腰掛けたウォッカは、兄貴分の方へ肩を寄せ、スマートフォンの画面を見せた。ジンは横目を遣るだけで、映っているネットニュースの見出しを読むことができる。
     映画の制作発表パーティーで、スポンサーだった大企業の重役と、若手の女優が狙撃されたという事件。
    「世間じゃ、この重役と女優がイイ仲だったとか、重役の奥方が恨んで殺し屋雇ったとか、好き勝手盛り上がってるみたいですぜ」
     ウォッカが面白そうにニヤついている。
     対して、ジンはさして興味なさそうに鼻を鳴らした。
    「くだらねぇゴシップだが、ちょうどいい隠れ蓑にはなる。本来なら無関係の羊を殺したのは失態だが、今回は問題ねぇだろうよ」
     なるほどなぁ、と大袈裟に感心しながら身を引くウォッカを尻目に、ジンは再びグラスを傾ける。
    「しかし、残念ですねぇ」
    「何がだ」
     仕事の合間の休息、お喋りな弟分を適当に相手してやるのは、ジンにとっても悪くない暇つぶしである。
    「巻き添えになった、この女優ですよ。映画の主演もやれることになって、これからって時に」
    「知ってたのか」
    「端役でドラマに出てるのを見たことがありやしてね。演技も上手かったんですよ」
     件の女優について検索しているのだろう、ウォッカはスマートフォンに太い指を器用に滑らせている。
     ジンは、先程の記事でちらと見た女優の顔写真に、ふと引っ掛かりを覚えた。
    「おい、何て女優だ?」
    「興味ありますか? このですよ」
     再びウォッカが体ごと寄せてきた画面を覗き込む。
     華のある、美しい笑顔。
    「この女……」
    「兄貴もご存知でしたか?」
    「ベルモットが役を取られたらしい」
    「えっ、姐さんが!?」
     大女優の裏の名前が出て、ウォッカはぎょっとする。
    「そ……そんなこと、あるんですかい?」
    「才能のある女優が、あの女だけってわけでもねぇだろうよ」
    「ってことは、カルバドスがうっかりしたおかげで、姐さんはせいせいしてる頃でしょうねぇ」
     呑気に呟く弟分の背後に迫る人影に、ジンは気づいていたが特に指摘しなかった。
    「ふうん……私をよっぽどの性悪だと思ってるみたいね、ウォッカ?」
     低められた女の声に、ウォッカがみるみる顔を青くしていく。身動きの取れない哀れな弟分に代わり、ジンがその女を振り返る。
    「てめぇが性悪なのは今に始まったことじゃねぇだろ」
     その言い草に、いつのまにか店に入ってきていたベルモットは、気の利いた皮肉も返さずに唇を引き結んでいる。
    「……」
    「どうした、ベルモット。随分とご機嫌斜めだな」
     そう尋ねるジンは、対照的に愉しげな笑みに口元を歪めている。
     こうもあからさまに不機嫌な“魔女”は、珍しい。
    「当たり前じゃない。期待してた後輩が亡くなったうえに、その訃報で盛り上がってるところに出くわしたんだから」
    「い、いや、その、盛り上がってたわけじゃ……」
     ベルモットに睨まれて、ウォッカは肩を縮ませてモゴモゴ言っている。
    「と、いうか……期待してたって、商売敵だったんじゃあ……?」
    「ハァ……男ってどうして、物事を勝ち負けでしか考えられないのかしら」
     弟分は火に油を注いだらしい。ベルモットはいっそう苛立った様子で溜め息を吐き、豊かなブロンドヘアをかきあげる。
    「新しい才能が伸びて嬉しくない女優なんて、二流もいいところよ。こっちだって良い演技のできる子が一緒の方が、気持ちよく演じられるんだから。彼女は特に可愛がってたのよ」
    「ハッ、まるで真っ当な女優のようなこと言いやがる」
     茶化す兄貴分に向けられる鋭い眼差しに、ウォッカは二人をオロオロと見比べるばかり。
     対して、ジンはひどく愉快になって肩を揺らした。
    「ククク……俺たちに八つ当たりするんじゃねぇよ。飼い犬をきちんと躾けねぇからこうなるんだ」
     意味深に聞こえる呟きに、ウォッカはサングラスの奥で目を丸くする。
    「飼い犬、ですかい?」
     察しの悪い弟分に、ジンはどこか悪戯っぽく首を傾げてみせる。
     さらり、と銀髪が流れた。

    「お前、カルバドスが本当にドジを踏んだと思ってんのか?」

    「えっ――」
     ウォッカはその言葉の意味を飲み込むより先に、確かな殺意を感じて震え上がる。
     恐る恐る振り返ると、ベルモットの相貌は氷のように冷ややかだった。

    「……カルバドスはどこ?」
     有無を言わさぬ詰問。その声はどことなく、気が立っている時の兄貴分と似た気迫があって。
     ウォッカはつい、三人の狙撃手が今日飲んでいる店を答えてしまった。

     魔女と弟分のやり取りを肴に、ジンは愉快で愉快で仕方がないまま、酒を煽った。
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