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    FGO二次(マリーとエリセ中心/基本CPなし/書きたいものによって少し恋愛寄りの味つけあるかもですが個人的には基本CPにならないものとして書いてます)/自分の見返し用

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    エリセ→ぐだ片想い悲恋のSS(2022/3/21)
    全部終わった後退却するエリセがほんのりとぐだに”何か”を残す、苦くて綺麗な初恋という感じ

    (何も、言うな)
     たった一つ、吐き出してしまいたい言葉を飲み込んで、エリセはにかっと口角を上げる。頬は微かな赤みを帯びて、笑みに可愛げを足している。そして真っ直ぐで透明な視線が立香を貫いて、話す隙すら与えないほど捉えて離さない。
     その瞳は瞬く星のごとく眩く輝いて、立香の脳裏に鮮烈な印象を焼き付けた。合わせてぎゅっと強く両手を握られて、堰を切ったようにエリセは感謝を述べる。
    「有難うっ、私のマスター! さよなら!」
     知らず一筋、彼女の頬を伝った涙がマスターの手首をぱたりと濡らした。終わらせることに対しては慣れているはずなのに、対象が変わるとこんなにも難しいことなのか、とエリセは心の中で苦笑する。
     サーヴァントを殺し続けた経験があるからこそ、エリセは胸に秘めた想いの行く先を失くしていた。碌でもないその感情を、生身の人間に渡すべきではないことを知っている。好きだからこそ、愛しいと思ってしまうからこそ、目の前の相手にそれを告げることは許されない。
    (初めてちゃんと好きになるのが、キミで良かった)
     きちんと口にすれば考えて応えてくれるだろう優しい人に、重荷を背負わせるのはエリセの意思にそぐわなかった。ただそれだけの、身勝手な話である自覚も彼女にはあった。
     全部終わってようやく”これから”が待つ者に、”この先”がないサーヴァントは必要がない。
    (だから、できれば、もう呼ばないで)
     ――この未練は、昏い冥土の底へ持っていくものだから。
     そんな淡く穏やかな恋の痛みを抱えて、彼女は救われた世界から静かに消え去った。

     驚いてエリセ、とすぐさま声をかけても返事は返ってこなかった。
    「……綺麗、だったな」
     自分よりも年下の、マスター経験のある女の子。数秒前までそこにいたはずの人物は、空気に溶けてもう姿形もない。別れを名残惜しみ、噛み締めるように立香は瞼をゆっくりと閉じた。
     未だに鮮やかに映る少女に思い馳せれば、不思議とじんわり胸が苦しさを覚える。彗星のように消えていった彼女は、立香の心にその煌めきの残滓を残していくのだった。


    (イメージソング:抜錨/ナナホシ管弦楽団)
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