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    なさか

    たぶろいどぬまにずっぽり
    ☆正規ルート=ストーリーに準拠
    ★生存ルート=死なずに生き延びる話
    無印は正規ルート(死ぬまでの間)の話

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    なさか

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    ☆サイファー×PJ
    ☆正規ルート

    それはまるで雪のようにヴァレーは標高が高い。故に気温は冬になると常に氷点下、慣れている者などそうそういない。

    「寒いですね」

    冷えきった手を擦り合わせながらPJは言った。返事は返ってこないかもしれない。それは話しかけた相手が、サイファーと言う男だからだ。彼はそういう男だった。PJも慣れたもので最初こそは機嫌を損ねたか、とやきもきしたものだが、付き合う内にそういう性格なのだと理解した。
    手はいくら擦り合わせても温まらない。明日になれば、全てが終わるかもしれない。そうしたら。……そうしたら?

    「……お前、これが終わったらどうするんだ」
    「え?」

    思わぬ返事、思わぬ言葉。PJの時は一瞬止まった。言葉は理解出来た、でも返事はすぐに出はしない。

    「えぇと」
    「郷里に帰るのか」
    「……そこまで考えたことは無かったですね」

    正直な答えにサイファーが少し微笑む。サイファーはほぼ笑ったりしない。その笑みに見惚れてしまったのは想い人であるからだろうか。

    「サイファーは?」
    「さぁ。行くあては無いな」
    「じゃあ」

    一緒にうちに帰りませんか

    PJが思わず口にしたそれはまるで告白のようで。互いに想い合う身、おかしいことではなかったが、とても気恥しいセリフだとPJは慌てた。

    「いや、あの」
    「それもいいな。楽しそうだ」
    「……ですかねぇ」

    サイファーはまた、笑った。PJはそれを苦笑しながら見つめた。でも、サイファーがいいなら、それでいい。今まで氷のように生きてきたこの男を、少しづつでも溶かせるのであれば、PJには自分のことはどうだって良かった。

    「明日、しくじるなよ」
    「解ってますよ、任せてください」

    明日を乗り切ればきっと全てが終わる。そんな予兆はサイファーにもPJにもあった。だから意気込んで決戦に望んだ。ただし。



    「……しくじるなと言っただろう」

    二機編隊の小隊、滑走路に降り立ったのは一機のみだった。サイファーの声が虚しく響く。PJは全てを置いて、あるいは捨てて、そしてサイファーを残して、どこでもない所へ飛び立って行ったのだった。
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