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    なさか

    たぶろいどぬまにずっぽり
    ☆正規ルート=ストーリーに準拠
    ★生存ルート=死なずに生き延びる話
    無印は正規ルート(死ぬまでの間)の話

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    なさか

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    トリガー×タブロイド
    ★生存ルート

    わかってくれとは言わないが★生存ルートです。












    「タブロイド、好きだ!」

    大きくよく通る声で言われた言葉はけれどももうんざりするくらい聞きなれたもので俺は何度目かのため息を吐いた。
    トリガーは何かあれば好きだの愛してるだの小っ恥ずかしいことばかり言う。こちらが返さないのに、だ。

    「わかった、もういい」
    「まだ足りない。タブロイド、好き」
    「良くもまぁそんな言葉が言えるな」
    「言いたくてたまらないから」

    言いたくてたまらない。それはどんな感じなのだろう。あれか、俺が石投げた時と同じ心理か?それなら何となく納得は行く。けれど俺は事象相手でトリガーは俺相手だ。勝手が違うと思う。それにそのようなことを平気で言いまくるのはなんかちょっと……はっきりいってしつこい。言われなくても信じているのだからそこまで言われる必要は無いはずなのだ。

    「タブロイド好き!愛してる!」
    「わかったわかった!だから叫ぶな」

    周りに聞こえでもしたらどうなるか。カウントなんかには特に見つかりたくない。話のネタにされるに違いない。……自分だってフーシェンと揉めている癖に。

    「だったらタブロイドも言ってよ!言ってくれればやめる」
    「嫌だ」
    「タブロイド、」
    「やめ!」

    言う前にとめられて良かった。横を知らない誰かが通り過ぎていった。その視線は不思議なものを見るような様子であったが。危ない危ない。

    「……なんでそんなに」
    「お前は言わないと分からないのか?」
    「……わかるとも言う?」
    「なんで疑問形なんだ。お前ならわかってくれると思ったのにな」
    「わかる!」

    少し残念そうな顔をして言えばトリガーは慌てたように肯定した。言えばわかるタイプなのにこれだけはどうにもならない。
    別に言われることが嫌なわけじゃない。だが返せと言われるとそれは困る。俺はそんなことをそう易々と言うタイプでは無いし、いや、タイプは関係ない。ただ単に言いたくないだけだ。恥ずかしさもあるし、そんなことにこだわる歳でもない。トリガーはまだ若くてそういったことに意味があると思ってるんだろうな。とにかくその場はトリガーを宥めすかして落ち着いた。



    「ねぇタブロイド!好きだって言って!」

    なんか前もこんなことがあったような……あったな。あれからまだそう日も経っていないのにまたか。肩を掴まれがくがくと揺さぶられる。おい、やめろ。お前の力でやられると脱臼する、と言えばそれは困るな、と素直にやめた。何故それを違う方向にも使わないんだ。

    「お前、この前わかったって言ったろ?」
    「わかったけど言って欲しい」
    「なんで?」

    わけを聞くとまぁ要するに嫉妬?したらしい。なんでもカウントがついにフーシェンに言わせた、と自慢されたらしい。それでお前は?とにやにやした顔で聞かれて今に至る、と。それに嫉妬し、羨ましいから自分も言って欲しい、と。単純明快なことではあったが今度はどう誤魔化すかと額に手をやる。トリガーはじっとこちらを見ている。期待に満ちてキラキラとした顔で待っている。そんな顔してもダメだぞ。嫌なものは嫌で、ダメなものはダメなのだ。いつだって。

    「Negative。前も言った通りだ」
    「なんで?ずるい!カウントだけずるい!」
    「……お前それカウントと張り合いたいだけじゃないか」
    「そんなことない!タブロイドもタブロイドだよ!なんで言ってくれないの?納得いかない!」

    お前はどこの駄々っ子だよとため息が漏れる。俺は成人男性とはまぁ、その、付き合ってはいるが駄々をこねるような子供と付き合っている覚えは無い。じゃあ目の前にいるのはトリガーじゃない、と言い切りたいが残念ながら何度見てもトリガーだった。お前いつからそんなふうになったんだ。最初の頃のあの鋭さがなくなって丸くなりすぎた気がする。口を開かず周りを睨めつけトゲトゲしかったトリガーが今やこれだ。あの頃の自分に教えてやりたい。何があってもトリガーに近づくな、後で頭を痛めるぞ、と。

    「トリガー、納得してくれ」
    「Negative!」
    「トリガー」
    「……俺もカウントみたいに言われてみたい」
    「お前とカウントじゃ違うだろ?」
    「……カウントのクソッt」
    「Language!」

    ただ単にカウントと張り合いたいだけじゃないかと思うのは明白でだったら尚更言う気はない。元々ないが。確かに自分も多少意地を張っている部分もあるがトリガーのそれとはちがう。何に納得できないのか、俺にはさっぱり分からない。もうむしろ1回だけでも言えばそれで気が済むのか?いや済まないだろう。きっと益々うるさくなる。そんな気がする。



    「タブロイド」
    「Negative」
    「……まだ何も言ってない」
    「どうせいつもと同じことだろ。聞くだけ無駄だ」
    「……どうしてそんなに嫌がるの?」
    「そういうお前こそどうして言って欲しいんだ?」
    「タブロイドだって俺のこと好きでしょ?だったら言ってくれても」
    「そう思うなら言わなくてもわかるだろ?」
    「……わかるけどわからない」
    「わからないんだ?」

    わからないのか。わかってると思ってたんだが。なら仕方ないと肩をすくめるとトリガーはムッとした顔をする。お、何か別に言いたいことが出来たか?できるなら似たようなことはやめてくれ。もう俺も拒否する言葉のレパートリーが尽きるところだ。

    「……タブロイドは俺の事、好きじゃないんだろ!だから言ってくれない」
    「ほう」

    そう来たか。まぁそういう考えもありだよな。そう思われても仕方ないところはある。でも結局のところ俺はそれを口にしたくはないのだ。言葉だけでどうこうしようという気は無い。それ以外はなんというか……それらしい事はしてる訳だしそれだけでいいじゃないか、とは俺の言い分だが。

    「タブロイドは俺の事なんかどうでもいいんだ」

    何もそこまで思い込むほどのことか。まぁ、多少なりと罪悪感はあるが、それだって俺の考えだ。トリガーにトリガーの考えがあるように俺だってある。それに則って付き合っているわけだ。価値観の違いと言えばそれまででそれならもうどうしようもない、と思った。俺にはどうしてもトリガーの欲しがるものをやることは出来ないようだ。

    「お前がそう思うならそれでいい。じゃあ、これで」

    それだけ告げてトリガーを置いていく。少し寂しい気がするが、これでいいんだと思う。トリガーも追ってこない。ま、人生なんてこんなものだろう。突然始まって突然終わることなど沢山ある。今までいくつもあった。いいことも悪いことも。今回がどちらなのかはまだ分からないが良しとして決めたことだから良い方なのだろう、多分。



    それから暫く俺の周りは静かだった。そりゃそうだ。トリガーに近づかないからだ。トリガーがどうしてるかも知らない。あいつはなんで俺が顔を合わせてるかを知らないんだろうな。それが返事をしない答えだということに気づくこともないだろうな。

    「おいタブロイド」
    「なんだい?」

    お、カウントだ。フーシェンと上手くいったようでよかったな。おめでとうと言おうとしたら黙れ、と言われた。なんだ恥ずかしいのか?と思ったが違うようだった。が、とりあえずおめでとうと言っておいた。そしたらありがとよ、とぞんざいな言葉が返ってきた。なんだ人がせっかく、

    「俺のことはどうでもいい。トリガーの事だ」
    「トリガーがどうした?」
    「お前が居ないと半泣きで探し回ってるぞ。ここ何日か」
    「俺ずっとここにいるけど?」
    「お前コソコソ逃げてたりしてないか?」

    コソコソとはなんだ。そして逃げてる訳では無い。ただ会いに行ったりしてないだけだ。だからトリガーの行動なんか知ったこっちゃない。会えないのならそういうことだ。あいつの事を気にかける必要なんてこれっぽっちもない。

    「何があったか知らんが回収してくれ。メソメソとしてて湿っぽくて気持ち悪い」
    「酷い言われようだなぁ」
    「お前のせいだろ?」
    「俺のせい?なんでだ?」
    「お前に嫌われた、って言い続けてやがるからな」
    「そんなこと言われても」

    どうでもいいと思ってるだろ、と疑ってかかってそう決めつけたのはあいつだ。そして俺はそう思うならそうなんだろう、と返しただけで嫌いとまでは言ってない。むしろあいつの方が俺を嫌ったと思っていたんだが。

    「いいから一度話をしてみろ」
    「トリガーが俺を見つけられたらね」
    「逃げんじゃねーぞ」
    「だから別に逃げてないって」

    次逃げたらただじゃ置かねぇぞ、と何か悪役が退散する時のようなセリフを吐いてカウントは行ってしまった。逃げる、ねぇ。でもやはり俺から出向く気は無い。せいぜいみつけてみろよ、と思うしか。まぁ、多少は見つかりやすいところにいてやるか、と思う俺は少し偉いと思うね。自画自賛。

    一日目、来なかった。
    二日目、来なかった。
    三日目、また来そうにない。
    今日来なかったらもうやめよう。時間を無駄にしたな。カウントめ余計なことしやがって。そろそろ昼だ。飯でも食いに行くか、とのんびり立ち上がって伸びをする。途端背中に走る衝撃。やばい、腰に来たかもしれない。腰を痛めたら辛いんだぞ。何があったと振り返ると誰かがしがみついている。俺の腰を殺りそうになったやつはどこのどいつだとさらに覗き込むとキャラメルみたいな色の髪が見えた。あぁこんな髪色をしているのは俺の知る限り

    「……トリガー」

    三日目にして見つかったか。ここまで来たら記録を伸ばしてやろうかと思ってたところだったのに。それで?俺の腰を殺ろうとするほどの何かがあったのか?しがみついたままで何も言わないし何もしない。それで何を悟れと?本格的に腰に来そうだったのでしがみつく腕から無理矢理抜け出そうとして……出来なかった。俺はそこまで非力だったのかと愕然とするがこいつが脅威的な怪力なだけだと気づいた。

    「トリガーどうした」
    「……タブロイドごめん」

    あんなにイラついていたのに謝るとは何事か。俺には何かされた覚えは無い。ただ単に距離を置いただけだ。まぁ長く続くようだったら自然消滅を狙っていたが。

    「なにがだ?」
    「タブロイドがいつもそばにいてくれたから俺はタブロイドと一緒にいられたんだね。それなのに酷いこと言った」
    「別に俺は気にしてないけど?」
    「……ほんとに?」
    「……まぁ、半々かな」
    「ダメじゃん!」

    腰の恨みに、からかってやる。俺は最初からなんとも思っちゃいなかった。トリガーが勝手にあれやこれやしていなくなっただけだ。でも、確かに少しは口にするべきかな、とは思った。俺も少しは成長したということか。今更ながら。それより早くトリガーをひっぺがさないと俺の腰が本当に死ぬ。

    「トリガー、わかったから離してくれ。俺の腰が死にそうだ」
    「わ、わかった!……死なない?」
    「何とか生きてる」

    離されて前屈をする。うん。痛みは無い。俺の腰生きてた。良かった。トリガーを見遣れば半泣きだった。どこのどれで半泣き?よく分からないがとにかく情緒不安定なことはわかった。

    「タブロイド、ほんとにごめん」
    「別にいいさ。ま、俺も悪かったしな」
    「……やっぱり俺の事要らない?」
    「そんなことないさ」

    ほんとにほんと?とトリガーは何度も尋ねる。その度肯定してやる。……いつまで聞く気だ。そんなに俺のことが信じられないのだろうか。そいつは心外だね。

    「ほんとに……」
    「ほんとにその通りだ」
    「わかった」

    今日のトリガーは物分りのいいトリガーだ。今なら何を言っても聞いてくれるだろう。だから、俺の本心も込めて聞いてみたいことがある。どの返事がきても答えは結局ひとつしかないんだが。

    「……お前はまだ俺から言葉が欲しいか?」
    「できるなら。でももういい。そばにいてくれれば、いい」
    「そうか。……俺は何があってもお前のそばにいてやる。だから言葉を欲しがるのは勘弁してくれ」
    「……うん」

    やはり今日のトリガーは物分りがいい。……物分りが悪いのは俺の方なんだろうな。欲しいものを強請るのは当たり前のことであるのにそれをやめろとどの口が言えたもんだか。その言葉を言う気がない訳では無い。ただそれが今では無いだけだ。そう、お前が欲しい言葉は、そうだな、

    「今際の際に言ってやる」


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