過ぎ去った霧の後、哲学の階にてアントン「……しっかし、あれが昔のゲブラー様なんだな…」
ブラウン「赤い霧…伝説の特色フィクサー。フィクサーに興味なくても知ってはいましたけど全盛期はあんなに強いんですね…」
アントン「流石、赤の特色だよ…ガブリエラが言ってた、赤は一番戦いで強いフィクサーがもらう色なんだって」
ブラウン「へえ…」
青い残響を誘き出すためにアンジェラによって呼び出された全盛の特色『赤い霧』カーリー。
彼女を迎えた哲学の階は、その完璧な太刀筋に経験の深さ、そしてEGO…あまりにも理不尽すぎるその存在に苦戦を強いられるも、指定司書ビナーの活躍もあり無事に死亡者なく勝利し、赤い霧の本を製本した。
アントン「そういやガブリエラはどこだ?」
ブラウン「ガブリエラ先輩でしたらすごく興奮した様子で下に降りて行きました。フィクサー大好きですし伝説の赤い霧に勝てて心底嬉しいんでしょうね」
アントン「ふうん…あいつは元気だなぁ。俺はもうへとへとで立つのもだるいのに…」
ブラウン「同感です…寝たい」
近くでカップを置く音がする。ビナーが1人、心なしか愉しそうに紅茶を嗜んでいる。
ブラウン「……あまりにも質の高すぎるプレゼントになりましたね」
アントン「プレゼント?赤い霧が!?」
ブラウン「だって今日は…」
ブラウンの言葉を遮るように、扉が強く開かれる音がした。
エベレット「アントン!!!赤い霧を迎撃したんだってな!!!!素晴らしい事ではないか!?」
アントン「……うるさいのが来た。ビナー様がお茶してるんだから静かにしろ」
アントンの同期、総記の階所属のエベレット。2人は性格は正反対だがなんだかんだ仲がいい。
ブラウン「…エベレット先輩、こっちとしても耳に響くから勘弁願えますかね」
エベレット「おっと、それはすまなかったな!しかしアントン、お前今日誕生日だってのに嬉しそうじゃないな?」
アントン「ん?」
そう、この日はアントンの誕生日だった。
図書館の中で歳をとるかはともかく、誕生日の日に赤い霧を迎えたのである。
アントン「俺の誕生日って…今日だっけ」
ブラウン「まあこの中では時間進んでるようには思えませんけど…今日らしいですね」
エベレット「だからお祝いしに来てやったのになんだその微妙な態度は!後で芸術の階に来るがいい、私がお前のためにパーティーを開いてやるからな!!」
アントン「な…ちょっと待てエベレット!」
エベレットは高笑いしながらその場を去ってしまった。再び静かになる哲学の階。
アントン「……プレゼントってそういうことか」
ブラウン「言おうとしてたんですけど…取られてしまいましたね…」
アントン「赤い霧がプレゼント、か…変な人生を辿るものだなぁ」
ブラウン「折角ですし、元使徒の皆からプレゼントを預かってるんで…パーティーで渡しますよ」
アントン「マジか…なんか嬉しいな」
ブラウン「お腹も空いてきたし…僕は先に行っときますんで」
アントン「ああ、了解した」
アントン「誕生日かぁ」
アントン「最近はめっきり祝ってもらうことも無くなったよな…なんか変な感覚」
アントン「俺も、行こうかな。折角の時間が勿体無いし…」