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    case669

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    本になったら良いなのレオジャミこれ間に合わなくない?

    ##レオジャミ

    普段ならば王宮での仕事を終えた後は共に連れだって王宮から自宅へと帰る事が多いが、今日は休日前に片付けておきたい相談があるからとレオナは兄王の部屋へと向かった。あえてこの時間を選んだということは王と臣下としてではなく、兄と弟としての立場を利用した相談があるのだろう。同席を求められることも無かったジャミルは一足先に広すぎる自宅へと帰り夕食の支度にとりかかる。とは言っても時間のある時に仕込んで保存していた食材を仕上げたり温めたりするだけでさほど時間はかからない。今日の夕食のメニューは野菜を刻んで挽肉とともに炒めるだけで出来上がるドライカレーと、昨日の残り物のローストビーフを使ったサラダ、それから食事前に冷凍しておいたピタパンを温めるだけで簡単に完成。レオナの帰りが遅いようならば来週の為の食材の仕込みを今してしまうのも良いかもしれない。側室が使っていた時代は使用人を含めた大人数の食事を用意していたのであろうキッチンは広々としていて作業がしやすく、一度料理を始めるとつい楽しくなってしまってあれやこれやと作りたい料理が思い浮かんでしまう。まずは冷蔵庫の中身を確認しながら来週の献立を考えていると、玄関の方で微かな人の気配。もしかしたら休日前の兄弟水入らずともなればそのまま引き留められて酒を飲まされ、遅い帰りになるかもしれないと心配したのは杞憂に終わったらしい。玄関が閉まる音を聞いてから十秒程数えた頃に振り返ればばちょうどレオナがキッチンへと入ってくる所だった。
    「おかえりなさい」
    「ただいま」
    まっすぐにジャミルに近付き抱き締められるままに背中へと腕を回す。慣れた手順でそのまま近づけられる頭、右頬同士を合わせ、その後顔の角度を変えて左頬を合わせてから最後に触れるだけの口付けを一度。ここで暮らし始めた頃にはあんなにも照れ臭かったのに、今では考えずとも勝手に身体が動く程に馴染んでしまったおかえりなさいの挨拶。そうして離れたレオナの顔を見て、ジャミルは片眉を上げた。それに気付かずするりとジャミルの頬を撫でたレオナはそのまま踵を返すがその背中にもやはり違和感。
    「レオナ」
    呼びかければ振り返る顔はどこか固い。それに思わず唇を緩ませながらも両手を広げて、ん、とねだる。
    足を止めたレオナは一度目を瞠り、じっと伺うようにジャミルを見つめてから深く、長い溜息を吐きだした。
    「………わかるか」
    「何年一緒にいると思ってるんですか」
    諦めて耳をへたらせたレオナが大人しくジャミルの元に戻り、まるでぬいぐるみでも抱くかのようにぎゅうと肩に顔を埋めるようにして抱き着く。その頭を優しく抱いてジャミルはゆるりと笑った。獣人にとってつがいの体臭は心を落ち着かせると最初聞いた時は、自分の体臭を恥じる文化で育ったジャミルにはとても耐えられないと思ったものだが慣れとは怖いものだ。レオナの心がささくれだっていると気付けば自ら率先して差し出すようになってしまうのだから。
    「……喧嘩でもしました?」
    真似をするようにレオナの柔らかな髪に顔を埋めてすんと匂いを嗅ぐ。一日働いた成人男性の頭皮の香り。良い匂いとは言えないはずなのになぜか離れがたく深く顔を埋めて堪能してしまうのは、レオナ曰く「つがい」だからだろうか。
    「喧嘩が出来りゃあ、アイツぶん殴ってスッキリするだけだ」
    政治には白黒はっきりとつけられないことも多い。今日もきっと、兄王との意見の違いを擦り合わせようと試みて叶わず、だがお互いが背負う事情も理解出来てしまうようになったが為にただ相手を非難することも出来ず、されど引くことも出来ず。お互い無駄な争いに時間を浪費する前に一度頭を冷やす時間をおこうと早めに解散したのかもしれない。
    深く、深呼吸したレオナが顔を上げ甘えるようにぴたりと額を重ねた。その首筋にすがりながら見上げるジャミルに見えるのは、未だに深く刻まれた眉間の深い谷。
    ……ヴィル先輩に見られたら皺になるって怒られそうな顔ですね」
    「此処で他の男の名前出すんじゃねぇよ」
    駄々を捏ねるような唸り声につい笑ってしまう。学生時代にはあんなにも頼りになる年上の男として振舞っていたレオナは、結婚してからずいぶんとジャミルに甘えるようになった。彼の兄や近しい家臣達はジャミルのお陰で性格が丸くなったのだと言うが、おそらくはレオナがジャミルを庇護すべき年下の後輩から対等な伴侶として認めてくれるようになったのだと思う。それが気恥ずかしくも、素直に嬉しい。
    「それなら、他の男を思い出す暇もないくらい夢中にさせてくださいよ」
    「は、言うじゃねえか」
    すり、ともう一度頬を懐かせてから離れたレオナはだいぶすっきりした顔で笑っていた。蟠りを全て追い出すように大きく息を吐きだしたレオナがちゅ、と音を立ててジャミルの唇を啄み離れる。
    「だがまあ、確かに俺のせいだな。……お前好みの良い男になって帰って来るから楽しみにしとけ」
    「ええ、楽しみにしてます」
    すっかり気分を持ち直したらしいレオナが尻尾を揺らしながらバスルームへと向かう背中を、ジャミルは笑いながら見送った。
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