月光と針正直言って、初めて会った時はなんて夢見がちな世間知らずだろう、と思った。
カチコチ、と時計の針の音が聞こえる。
今時こんなアナログな時計を設置しているあたり、ここが魔法学校たるゆえんだろうか。
太陽がとうに沈んだというのに、窓からの月の光で室内は異様なほど明るかった。
グレートの耳は先ほどから、その秒針がせわしなく動く音と、同室の少年のか細い息遣いばかりをひろっている。
「・・・・・・ッ・・・ぅ、・・・・・・ぐ・・・」
スフォルツェンド魔法学校は、特殊な土地の上に建設されている。
最寄駅から視界に入る全ての土地が、この学校の所有地なのだという。
その見た目から監獄のようだと例えられるように、入学したら卒業までの数年を、生徒達はその敷地内で過ごすことになっていた。まるでひとつの町のように。生活するに足りる様々な施設がそこには整っていた。
3822