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    MonoCloTone

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    MonoCloTone

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    昔書いてたけどもう続き書けないだろうなと思ったので供養
    巽とHiMERUがオフの日を過ごすだけの話

    #あんスタ
    ansta
    #巽ひめ
    smallDriedSatsumi

    オフの日【巽ひめ】金曜の夜、巽宅にて。
    巽はキッチンに立ち、いい香りのする鍋をかき混ぜていた。
    心なしか、嬉しそうに鼻歌を交ぜながら、彩りの良い野菜を放り込んでいく。
    鍋に蓋をし、火を少し小さくしたところで、家のインターホンが鳴った。
    巽はすぐに顔を上げ、いそいそと玄関へ向かう。
    セキュリティ完備のドアを外も確認せずに開けたそこには、綺麗にセットされた水色の髪を揺らす彼の姿があった。
    「お待ちしておりましたよ、HiMERUさん」
    「……お久しぶりです、巽」
    ドアを開いた途端満面の笑みで出迎えられ、神父のように神々しいその微笑みにHiMERUはたじろぐ。
    彼は勝手知ったるという風に中へ入り、ダイニングのソファ脇に荷物を置いた。
    ジャケットを脱ぎ、膝掛けにかけると同時に、鼻腔をくすぐる良い香りに気づく。
    「シチューですか?」
    「ええ、他にも色々と」
    短文の会話を繰り返しながら、HiMERUはソファで待っているのもどうかと思い、キッチンを覗きに行く。
    見ると、皿がいくつも並べられていて、相当の品数を作っていることが窺える。
    巽は元々料理が得意だとは聞いていたが、流石に多すぎではないのか。
    「HiMERU以外に誰か誘ったのですか?」
    「? いえ、今日誘ったのは貴方だけですよ」
    折角明日は休日なのですから────と巽は笑いながら答える。
    お互い多忙を極めつつあるアイドルになり、なかなか2人で顔を合わせる機会が減ってきた。
    もちろん現場では会うこともあるが、ユニットとしての活動が多い今、昔より個人で喋るということも少なくなった。
    そんな2人だが、明日はようやく合わせることができたオフの日なのだ。
    世間には言えずとも、『恋人』という関係になった2人は、こうしてたまの休みを一緒に過ごせるのを楽しみにしていた。
    「2人で食べるにしては、量が多すぎるのではないですか」
    「おや、そうですかな。HiMERUさんに会えるのが楽しみで、つい」
    興が乗りました、と恥ずかしそうに言う畳に、HiMERUはため息をつきながらも満更ではなさそうだ。
    その様子を見てまた笑う巽に、HiMERUは照れ隠しのように近くにあった皿から唐揚げを一つつまむ。
    それなりに良い店で食事をすることも多くなってきたHiMERUだが、それでも美味いと思える出来だ。
    「如何ですかな」
    「美味しいですよ。本当に、料理だけは得意ですね」
    「おや、HiMERUさんに褒められるとは思っていませんでした」
    「そこまで褒めてないのですが」
    巽が盛り付けを終えた皿をHiMERUに渡すと、何も言わずにHiMERUはそれを受け取りダイニングテーブルに並べていく。
    瞬く間にテーブルの上が色とりどりに飾られていき、運び終えた2人は並んで椅子に座る。
    いただきます、とHiMERUが手を合わせ、料理に手を伸ばそうとしたその時。
    「あ、HiMERUさん」
    呼び止められ、倒しかけていた体を起こし巽の方を振り返る。
    次の瞬間、顔に影がかかった。
    「 」
    ちゅ、と小さく音を立てると同時に、唇が重なり合う。
    柔らかい感触はすぐに離れていき、こちらを覗く本紫の瞳がかち合った。
    「お帰りなさい、のキスがまだでしたな」
    「っ……先に言いなさい」
    目を細め満足そうに笑う巽に、HiMERUはそんな悪態をつくので精一杯だった。
    気を取り直して、と今度は巽から料理に手を伸ばす。
    HiMERUもそれに続こうと思ったが、何せ料理の数が多いため、暫し逡巡する。
    すると、横から一つの皿を差し出された。
    「俺はこれが一番上手く出来たと思うのですが。食べて頂けますか?」
    「……では、頂きます」
    素直にそれを受け取り、手をつける。
    口に入れると、確かに美味い。店で出されるものと言っても、騙されそうだ。
    「美味いですね」
    「それは良かった」
    瞬く間に皿を平らげると、今度は迷わず次の皿に手を伸ばした。これもまた美味しい。
    「……本当に、料理は得意ですね」
    「HiMERUさんのことを考えながら作りましたからな」
    もう一度HiMERUが称賛の言葉を呟くと、巽は当然の如く答える。
    よくそんな恥ずかしいセリフが出てくるものだ。いや、職業柄か、それとも彼自身の性格か。恐らく後者だろう。
    「ご馳走様でした。美味かったですよ」
    「それは良かったです。しかし……やはり少し作りすぎましたな」
    全ての皿が真っ白になる頃には、2人とも満腹になっていた。
    普段は食事などにも気を使っているHiMERUだが、今ばかりは遠慮なく食べてしまった。
    「……貴方の料理は、つい食べ過ぎてしまいますね」
    小さくHiMERUが呟く。返事はなく独り言のように消えていったそれに違和感を感じ、HiMERUが振り返ると、そこには。
    「……HiMERUさんに、そう言ってもらえると、嬉しい、ですな」
    平常心を装った声音で返事をするも、その顔色は騙せていない。頬まで顔を赤くし俯いている巽の姿が。物珍しいその表情に暫しの間視線が吸い寄せられていると、視界が黒く塗りつぶされる。
    「そんなに、見られると、照れます」
    そう言われても仕方ないのだ。そんな顔、恋人になるまでは見たことがなかった。いつも同じような微笑みをたたえ、誰でも平等に愛すると嘯きながら"特別"を作らなかった彼が。
    今、自分のたった一つの発言に乱されている。
    ──そう思うと、もう止まらなかった。
    「HiMERUさ、んっ」
    顔を寄せ唇を重ねる。手入れされた唇はお互いに溶け合っていき、どちらがどちらのそれか分からないくらいに馴染んだ頃舌が割り入った。HiMERUから差し出された舌を甘受するように口を開き、巽はHiMERUを迎え入れる。
    2人とも慣れたように唇を重ね、慣れたように舌を絡め合う。永遠にこの時が続けばいいのに、と思うがしかし、それでも終わりは来てしまう。HiMERUから寄せた唇はHiMERUからゆっくりと離された。
    「今日はやけに、積極的ですな」
    「貴方こそ」
    そう言ってまだ熱の残る巽の頬をそっと撫でた。それだけで嬉しそうに微笑むこの顔が、好きになってしまったのだから仕方がない。HiMERUが自分の衝動に任せた行動に暫く自責の念に駆られていると、横から髪を掬い上げられた。
    「俺にも見せて下さい」
    蜂蜜色の瞳が紫苑のそれとかち合った。巽の頬を撫でていた手は優しく包まれ、顔が近づいていく。
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