【まんまる月夜】※白狼宿儺×白狼虎杖 その日は、綺麗な綺麗な満月の夜だった。
群れを離れ、一匹で生きる白狼の悠仁は傷が浮かぶ顔を上げて日が暮れ始めたことで見えた空に浮かぶ満月を見ていた。
「――まんまる月夜だ」
悠仁は思い出したようにそういうと、巣穴にしている洞穴から抜け出して狩りに出掛けた。
猪、鹿、鳥、兎。獲物となる動物はあちこちにいるが、そのどれもが悠仁に気付くと慌てて逃げ出してしまう。
所詮自然界の掟に縛られて生きる者同士。狩る者と狩られる者、どちらも命懸けなのだから逃げられるのも仕方ないのだが。
「うーん……兎、かな」
耳を澄ませて近くにいる兎の足音を聞き、限界まで距離を詰める。
兎もこちらに気が付いたのか、途中で足音が止まって注意深く周囲の様子を窺っている様だった。
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