風邪を引いてしまった。
それも、かなりタチが悪いタイプの風邪だ。
原因はおそらく、薄着のまま朝方まで作曲作業に熱中してしまっていたからだろう。夜中から朝方にかけては冷える季節だということがすっかり頭から抜け落ちてしまっていた。夏準にも口を酸っぱくして言われていたのに。今更反省したところで、いつもよりも高い数字を叩き出した体温計は表情を変えてはくれなかった。
はあ、と吐き出す息が熱い。ぞくぞくと震えるような寒気がするのに、身体には熱がこもっているのが分かる。高熱を伴う風邪を引くのはひさしぶりのことで、こんなにも辛かったっけ、と毛布に包まりながら何度も後悔した。
コンコン、と控えめにドアをノックする音が聞こえて、ゆっくりとドアが開く音を耳が拾う。身体を起こす元気はどうしても出せなかった。視線だけを来訪者へと向けると、ばちり、と視線が交わった。
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