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    sekiner_xx

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    sekiner_xx

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    ロイティ文化祭書き下ろしの短いSSです。

    文化祭 ここ最近肌寒い日が続いていた。
     だからだろうか、どうにも風邪のひき始めのような症状を感じる。
    「大丈夫?」
     スザクに問われ大丈夫だと答えるものの、悪寒が止まらない。
    「ルルーシュ、震えてる?」
    「そんなことはない」
     強く言えばスザクはそれ以上何も言わず、だけど心配そうな顔でこちらを見ている。
     本当は大丈夫なんかじゃない。
     だけど無理をしているのには訳があった。
     今は文化祭当日の朝なのだ。
     クラスの出し物で、男女逆転執事&メイドカフェを行うことになっている。
     幸いメイドの格好をすることからは逃れられたが、裏方の厨房担当になった。料理は好きだからいいのだけれど、今の体調できちんと役割を果たすことができるだろうか。
     スザクはメインのメイドの係になっているので頼ることはできないし、他の厨房担当は主に女子がメインだ。格好悪いところは見せられない。
     思わず、はあ、とため息を漏らすとスザクの目が眇められる。
    「ねえ、やっぱり具合悪いんでしょ。休みなよ」
    「休んだりしない。それに今休んだら、みんなに迷惑をかけてしまう。そんなことは嫌だ」
     さらにスザクの目つきが悪くなったが、気にしている場合ではない。
     こんなに休むのを躊躇う理由をスザクは知らない。
     文化祭でスザクとの思い出を深めたいから、だなんて言えるわけがない。
     俺はスザクが思っている以上にスザクのことが好きだ。いつも俺に甘くて優しくて格好良い、そんな恋人のメイド姿をじっくり見る機会を逃すなんて嫌だった。
     スザクにそれを言えば、家でもどこでもメイドの格好をしてくれそうだが、そういうことではない。
     文化祭で楽しそうにしている姿を眺めたい、そういうことなのだ。
     だから自分の体調不良を感じさせることなく過ごしたかったのに、獣並みに勘がいいスザクにはすぐに見抜かれてしまった。
     また、はあ、とひとつため息を落とすと、今度は心底心配だと言うようにひそめた声で囁かれた。
    「ルルーシュ。きみがそんなに文化祭を楽しみにするタイプだとは思わなかったよ。でも、文化祭はまた来年もあるじゃないか。今きみの体調が悪いのに無理する理由はないだろう?」
     反論するのも疲れてしまう、そのくらい体調は思わしくない。でも今伝えなければ無理にでも休まされそうだ。なんと言えば伝わるのだろう。まさかメイド姿を見たいのだとは間違っても言えない。
     少々思案して、泣き落としを使うことにする。
     最後の手段だからなるべく使いたくはなかったけれど、スザクに最も有効な手段は論理的な話ではなく感情に訴えることなのだ。
    「俺が文化祭を楽しみにしていたらおかしいか? お前との大事な思い出作りに、どうしても出たかったんだが……。ダメか?」
     伺うように小首を傾げて見せれば、スザクはぐっと言葉に詰まった。
     もう一息。
     いい感じに伝えるには、潤んだ瞳で見つめるくらいできればいいのだろうが、こんな場所で涙が浮かべられるほど器用じゃない。
    「そうだよな、お前に迷惑かけてまで出ることはないよな……。せっかくの文化祭、とても楽しみにしていたんだが……」
     自嘲気味に、なるべく哀愁を漂わせるように言えば、スザクはため息をついた。
    「はあ、もう仕方ないなあ。ルルーシュがそこまで言うなら、僕は何も言わない。それでも今より体調が悪くなるようだったら、僕に言いなよ? 一緒に帰るから。あと裏方だから休めるときは休んでてよ?」
     内心ガッツポーズを取るが、表情には出さずしおらしく振る舞う。
    「わかってくれてありがとう、スザク。無理はしないと約束する」
     意識的に柔らかく微笑むと、スザクの頬が赤くなる。
     こういう素直な表情を見ると、ああ大事にされているなあ、好かれているなあと嬉しくなるのだ。
    「スザク」
     声をかければ、なあにと優しく返事がかえってくる。
    「スザク。好きだ」
     あまり言うことのない言葉に、スザクは一瞬ポカンと呆けた顔をして、その後苦虫を噛み潰したような顔になった。
     どうして、と思う間もなく、くちびるに柔らかな感触。
     キスされていると理解した頃にはもうくちびるは離れていて、ほんの一瞬の出来事だった。
    「な、な!」
     こんなところで、と思って抗議しようとしても声が出ない。
    「ルルーシュがあんまり可愛いからだよ」
     まるで俺が誘ったみたいな言い方に、ムッとする。勝手にキスしてきたのはスザクのほうなのに。
    「あんまり外で煽るようなこと言っちゃダメ。可愛くてどうにかなりそう」
    「ばっ、ばかか! 可愛いとか言うな!」
     恥ずかしくて顔も体も熱くなって、さっきまでの肌寒さなんかどこかにいってしまった。
     ぽかぽかと温かくなった顔を見て、スザクが笑いながら言う。
    「なんか顔色良くなったね?」
    「ばかばか!」
     誰のせいだと思っているのか。
     まったく恥ずかしいことをしてくれる。
     だけどそれが嫌じゃない、そんな自分も同罪だ。
    「はは、元気になったみたいだね。良かった」
    「お前はもう黙れ!」
     体調が良くなった気がしても、今日はスザクに勝てそうもない。
     でもたまにはそんな日もいいのかもしれない。
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